4月27日(土):魂送り①
今日はいよいよ魂送り当日。
ドレスに着替えて控え室から出ると、そこにはマリアンヌ様がいらっしやった。
「カイルから渡して欲しいと言われたの」と、マリアンヌ様から小さな小箱を受け取った。
男性からなにかを頂くことなんて初めてだったので緊張で手が震えたけれど、箱を取り落とさないようにそっと開ける。
中身はカイル様の目の色と同じダークブルーの宝石とパールが連なった大振りのイヤリングだった。
「アクセサリーも私からプレゼントしようとしていたんだけど、カイルが自分が贈るからと反対されてしまっていたのよ」と、マリアンヌ様は少し頬を膨らませて言った。
箱を開けるだけでも手が震えていたので、マリアンヌ様にお願いして耳に着けてもらい、胸の高鳴りが収まらないまま鏡の前に立つ。
私の肩越しに鏡を覗き込んで「とっても似合うわよ!」とマリアンヌ様は仰った。
カイル様の私に対する優しさがこもっているからそう見えるのかもしれない。
支度が済んだので控え室にいるカイルと合流した。
私の姿を見るなりカイル様は顔を真っ赤にして椅子から立ち上がり、あんぐり開けた口を抑えた。
カイル様は慌ててドア口まで私を迎えに来てくださったけれど、なぜか少し怒ったように「だから事前にドレスを見せてほしいと言ったんだ」と眉間に皺を寄せる。
「この可憐な姿を事前に知っていたら、あんな間抜けな出迎えはしなかった」
確かにあんなに慌てるカイル様は初めてみたかもしれない。
私としてはカイル様の意外な一面がみられてラッキーだったけれどね。
カイル様が少し落ち着いてから、イヤリングのお礼をお伝えした。
「君を想って選んだが、果たして気に入って貰えたんだろうか」とカイル様は不安そうに頭を掻く。
「こんなに笑顔になってますのに、それでも気に入っていないとお思いですの?」とおどけて言うと、カイル様は声をあげて笑う。
王家の方にエスコートして頂く緊張で張り詰めていた精神が一気に緩んだ気がした。
開始時間が迫ってきたのでゲートに移動する。
国王陛下とマリアンヌ様、カイル様と私、ユーリス様とベルリーナの順で入場することになっているためか、ユーリス様達の姿はまだなかった。
ゲートに入った私達をマリアンヌ様と国王陛下はにこやかに迎えてくださる。
あまりお話したことがない陛下がドレスやイヤリングを大変誉めてくださるので、入場間近だというのに顔が赤くなったのが自分でもわかった。
両陛下と談笑していた時、お二人の顔が一瞬にして凍りついた。
背後から「お待たせしましたぁ」という甘ったるい声が聞こえてくる。
声の方に振り返ると、そこには真っ白のドレスに身を包んだベルリーナがいた。
ドレスには無数のガラスビーズで刺繍が施されており、全身がキラキラと輝いてみえる。
素敵なドレスではあるが、魂送りで着るには向いていないのは誰が見ても明白だ。
彼女をエスコートしてきたユーリス様は他の王族の方々と同じくダークカラーのお召し物を着ているため、ベルリーナとのギャップが激しい。
後ろにいるアライザスが苦々しい顔をしているのを見る限り、どうやら彼はこのドレスの事は快く思ってしていないようだ。
カイル様がユーリス様だけを呼び寄せ、「あのドレスはお前の指示か?」と聞くと、ユーリス様はすました顔で「僕は、君の好きなものを着たらいいって言っただけ」と答えた。
自らあんなドレスを選ぶだなんて!
全身で「自分は常識がありません」とアピールしているようなものだ。
とはいえ彼女が望んで着ている以上、私達は何も言えない。
爆弾のような不安要素を抱えたまま、魂送りは始まってしまった。
*****
「カイル様……ベルリーナのドレス、本当によろしいんですの……?」
「はは! 着るものに規則はない以上、仕方ないだろ」
「? カイル様、どうしてそんなに嬉しそうなんです?」
「色々あってな」
「……色々?」
「私がエスコートする淑女は常識ある女性で良かったなぁ、とか…… あれだけ着飾っていても私にはアニー嬢の方が輝いてみえるなぁ、とか」
「まぁっ」
「あと、これから君と踊れる喜びも大きい」
「それはわたくしもですわ!
今はわたくし達が楽しむことが優先ですわね!」
「それが死者のためでもあるからな。
さぁ、会場へ行こうじゃないか」
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