4月26日(金)
ドレスが仕上がったので試着をした。
元々のドレスの良さはそのままに、艶やかな黒のサテン生地と黒のレースがアクセントになった素晴らしい仕上がりだった。
先日、ドレスが仕上がったら見せてほしいとカイル様に言われていたけど、マリアンヌ様が「明日の本番まで秘密にしておきましょう」といたずらっ子のように言うのでそれに従う事にした。
ドレスはマリアンヌ様からの贈り物でもあるわけだしね。
試着が終わって客間に戻ろうとしたとき、運悪くベルリーナと遭遇してしまった。
そのまま通りすぎようとしたのに、何を考えているのか「少しお時間いいかしら」と呼び止められた。
明日の魂送りの件かもしれないので、一応話を聞いてやろうかと立ち止まったが、これが間違いだった。
あの女はいきなり「昨日のストラリズの件、本当にごめんなさいね?」と言ったのだ。
ストラリズは読んでいないので何がなんだかさっぱり分からないと答えると、ベルリーナはわざとらしいほどの申し訳なさそうな表情で「そうだったの? 聖女は私でほぼ私で決まりとか、異世界召喚者より私の方がユーリス様の寵愛を受けているとか……そんな記事が載ってしまったから、怒ってないかなって思ったの」と言った。
怒るどころか呆れて開いた口が塞がらない。
ストラリズはよっぽどベルリーナがお気に入りのようだ。
それだけじゃない。
どうやら今回は私の事も記事になっているらしい。
「傷付くと思うから読まない方がいいと思うの」と言われたので「ストラリズなんて読むだけ時間の無駄だから気にしないわ」と答えてその場から去ってきたけれど、悪評だと思われる記事がやはり気になってしまう。
どうしたものかと考えていたところ、明日の打ち合わせがしたいとカイル様が客間まで来てくださったので、何かご存知ないか聞いてみることにした。
案の定カイル様は記事の内容を把握していたようで、「君は何も心配することはないよ」と笑いながら答えてくれた。
「ユーリス王子にエスコートを断られたアニー嬢を不憫に思ったカイル王子が渋々エスコートを買って出た、という内容だ」
なんて酷い嘘なんだ! ……と憤慨しかけたが、すぐにカイル様が私の頭をポンポンと優しく叩いてきた。
「明日の魂送りが終われば、きっと皆が真実を知るさ。少なくとも私は『渋々エスコートしている』なんて表情はできそうにないからな」
そう言われて一体どういう意味かと困惑していたら「楽しみなんだ、明日の魂送りが」とはにかんだ笑顔を浮かべるカイル様。
私も楽しみだった。
マリアンヌ様にいただいたドレスをお見せするのも、カイル様にエスコートしていただいてダンスを踊るのも、何もかも。
明日の魂送りに出席する私達を見たストラリズの記者が何を書くか分からないけど、もう何も気にしない。
真実は自分達が一番よく分かっているものね。
*****
「明日の魂送りでユーリス様とファーストダンスを踊るのはわたしだけど、あの方ってお優しいから、きっと一度くらいはアニーとも踊ってくれるとおもうの。だから元気出して?」
「え……もしかして何も知らないの……?」
「ん? 何の事?」
「い、いえ。なんでもないわ」
「あ、でもわたし、ユーリス様と踊りたい曲が何曲もあるの。
もしかしたらユーリス様を一人占めしちゃうことになったらごめんなさいね」
「一人占め! ふふふ、そうなったら本当に素敵なのにねぇ」
「……どういう意味かしら」
「いえ、わたくしの事は気にしないでユーリス様との魂送りを存分に楽しんでちょうだい」
「うふふ、そうさせてもらうわね」
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