4月25日(木):ダイスケside②
キリアンさん、実は根っからの酒好きで、僕が提案した料理にかなり興味深々になってしまったらしい。
自身もお酒に合わせて料理を作るのが好きというから、僕と趣味が一緒ということになる。
生まれた世界では一人も気の合う人なんていなかったのに、この世界に来てどうしてこんなに良い人との巡り会いがあるんだろう。
まぁ、僕が周りに興味がなさすぎた、ということもあるんだろうけど。
キリアンさんの提案で、すぐに我々の料理担当者と打ち合わせをすることになった。
料理担当は確かな腕を見込まれて着実に昇進を重ねているジョンという若者だ。
こちらに来てから台所に立つことはなかったので、どんな調理器具があってどんな食材があるか分からなかったけど、ジョン君とキリアンさんが一から説明してくれた。
驚いたのは醤油や味噌的な調味料があったことだ。
厳密にはちょっと違うけど自分が知っているものと大分近い。
王族に出す料理には使わないけど、コンソメの素やだしの素的なものがあったのも助かった。
いくら料理好きとはいえコンソメやだしを一から取るほどの腕はない。
なんとなく作りたいものが思い付いたので何個か提案をしてみた。
ジョン君も当日手伝ってくれるらしいので、提案したほとんどを作ることになった。
キノコのアヒージョは是非入れてくれとキリアンさんからのオーダーもあった。
こりゃ朝から登城しないと間に合わないかもしれない。
料理の打ち合わせをする流れで、ジョン君が興味を示した簡単なつまみがをその場で作ることになった。
バゲット(少し柔らかめのもの)にサワークリームを塗って、コンソメの粉と胡椒を少し振ってハムを乗せただけの簡単なもの。
このコンソメの粉が決め手。
粉の少しシャリっとした食感がアクセントになっていい。
キリアンさんはそれをひとくち食べると無言になってしまった。
口に合わなかったかなと思っていたら、急に立ち上がって「こんなうまいものをワインを飲まずに食うだなんて犯罪だ!」と叫んだ。
犯罪は言いすぎだけど、確かに酒が欲しくなる味だよなぁ。
とはいえまだ昼間だ。
今夜にでも改めて自分で作ってくれと頼んで打ち合わせは終了した。
最初はスカした感じの人だなと思ってたけど、変人ユリ君に長年仕えられてるだけあって、キリアンさんも充分変人だったな。
それでも気が合いそうな人で良かったし、魂送りの日は楽しく過ごせそうだ。
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「魂送りの日って僕らはどこで夕飯食べるの?」
「まだ決まっていないが、おそらく普段王族の方々が食事をお召し上がりになっている部屋だろう。なぜそんなことを聞く?」
「いやぁ大きい広間とかで食べるより、キッチンが側にあるようなとこで食べたいなーって思って」
「……それは何か意味があるのか」
「考えてみなよ。普段、飲んだことないビンテージのワインを開けて試飲してみて、用意してた食事と合わなかったらどうする?」
「それにあった……料理を作る」
「ジョン君はどう思う?」
「僕もお酒が好きですから……できるならお酒に料理を合わせたくなりますね」
「ここにお酒好きで料理もできる三人が揃ってるんだよ? そりゃもう前聖女様を大満足させられるくらいの愉快な魂送りが開けると思うんだけど……」
「僕、何でも即興的で何でも作りますよ!」
「ジョン、よくいった!
私もワインセラーを空にしてもいいぞ!!
…………(間)………いいんだぞ……?」
「キリアンさん」
「……なんだ」
「訂正するなら今のうちですよ」
「…空にする勢いで五本くらいは開けていい……」
「それでいいです」
今回のバゲットのおつまみですが、実際に作るならコンソメの粉より、オニオンスープの粉が一番いいです。
クルトンがアクセントになって美味しいですよ。
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