4月18日(木):選抜試験四回目⑤/ダイスケside
四回目試験の話はこれで終了ですが、あともう一話オマケ的な話を次回アップ予定です。
友達になったとはいえ、特に何か変わる事はないけど、それでも心持ちに少し変化があった。
ユリ君の距離感の近さが、さほど気にならなくなっていたんだ。
友達がいない人生だったからよく分からないけど、あれが『友達と一緒にいる』って感覚なのかもしれない。
ある程度充電が進んだところで電源を入れてみる。
聞きなれた起動音と共に画面が光った時は、ほんの少し涙が出た。
スマホが起動できただけで泣く日が来ようとは思わなかったな。
ユリ君に色々な機能を見せてあげようと思ったのに、ネット環境に繋がっていないと使えないものばかりで参った。
写真を見せようにもSNSに写真をあげるなんて事はしていなかったので、写真フォルダーにはほとんど何も入っていない。
それでもユリ君はカメラ機能自体がめずらしいようで、部屋の色々な場所を撮影していた。
きっとこれからあのスマホの写真フォルダーはユリ君が撮った写真で埋め尽くされるんだろうな。
前に聞かせた音楽がもう一度聞きたいというので音楽プレイヤーを起動してやる。
あまり若者向きとはいえないラインナップだったけど、こちらの世界の人にとってはどれも新鮮らしく、次々と曲を変えては「これはどんな歌詞?」と聞いてきた。
失恋や人生を悲観したような歌詞の曲が多くて申し訳ないなと思ってたけど、「まぁ、それもダイちゃんらしいけどさ」と笑い飛ばしてくれて助かった。
あれこれと二人でスマホをいじっていると、誰かがドアをノックしてきた。
ノックの主は何故か不機嫌そうなカイル様だった。
「貴様ら、今が何時か分かるか?」
「夜の十時でしょ?
まだ日付変わるまで時間はあるしさぁ……」
「馬鹿者! 朝の五時だ!」
確かにスマホの時計は二十二時となっているけど、それはおそらく日本時間の表示だ。
どうやら僕らは夜通し遊び続けていたらしい。
何の連絡もしていないのでアニー様は絶対心配しているだろう。
慌てて帰ろうとしたけどカイル様は「アニー嬢には私から手紙を出しておくから、お前は客間で寝ていけ」というし、ユリ君は「僕も一緒に謝りに行くから、とりあえず仮眠しよう」というのでお言葉に甘えることにした。
というわけで第四回目の聖女選抜試験は『人生初の友達と人生初オール』という貴重な体験で幕を閉じた。
*****
「客間まで案内するよ」
「うーん……」
「どうしたの?」
「ここのソファで寝ちゃ駄目かな」
「別にいいけど……どうして?」
「この部屋、すごく落ち着くんだよ」
「わかる! 実は僕、あの広いベッドで寝たのって数回だけなんだよね。
もっぱらここで寝てる」
「じゃあ、やっぱり僕は客間に移動したほうがいいかな」
「荷物置きにしてるほうのソファの上を整理するよ。
そしたらここで二人寝られる」
「手間取らせて悪いね」
「いいよ。だって友達だろ!」
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