4月18日(木):選抜試験四回目④/ダイスケside
ユリ君はそのまま作業に熱中していた。
その間、僕も読書に没頭していたので、部屋のBGMはユリ君が魔道具を作る金属音と紙が擦れる読書音だけ。
それが妙に心地よくて、この世界に来てから初めて『くつろぐ』って感覚を味わえていた。
突如ユリ君が「できた……と思う」と声をあげた。
二時間程でワイヤレス充電魔道具を作ってしまったらしい。
パッと見はホールケーキが入る程の大きさのただの四角い木箱だったけど、ユリ君が考えた設計が正しいなら、箱の上にスマホを置けば充電が始まるらしい。
お互いドキドキしながら、ユリ君がスマホを箱の上に置く。
その瞬間、赤いランプがポッと点灯した。
「この赤い光、どういう意味?」
「じゅ、充電中ってこと……だね」
その瞬間、ユリ君は奇声をあげて僕に抱きついてきた。
僕も喜びのあまり、ユリ君の背中をバシバシと叩く。
天才だ! 天才すぎる!
まさか本当にワイヤレス充電機を自作しちゃうだなんて!
すぐにスマホを起動しようとするので、しばらくは充電はしておいた方がいいと伝える。
無事に完成したことで気が抜けたのか、ユリ君はヘロヘロになりながら僕の隣に腰を下ろした。
「乾杯しようよ」と言って、ユリ君はカップを僕に持たせると、そこになみなみと酒を注いだ。
ユリ君は瓶から直接酒を煽る気らしく、瓶を僕の目の前に掲げてきた。
二人同時に「乾杯!」と言うと、カップと瓶をコツンと当てる。
今まで何度か職場の飲み会で乾杯はしたけれど、こんなにも心の底から楽しい乾杯は生まれて初めてだった。
充電を待っている間、ユリ君が突然「ダイちゃんはよく『僕には友達がいない』って言うけどさ」と話しかけてきた。
「僕も同じなんだよ。友達なんていない。
家の関係で関わる人は多いけど、趣味の事を話せたり遊んだりする人は一人もいないんだよ」
意外だった。
明るくて社交性もあるのに、根っこの方は僕と同じ『陰キャ』だなんて。
そういえば、部屋に案内された時に「ここに来るのは兄上か執事だけ」と言っていたっけ。
「だから、ここにウチの人以外が入ったのはダイちゃんが初めてなんだよね」と言われて、くすぐったくなるのと同時になんだか申し訳なくなった。
けれどすぐに「『僕みたいなおじさんが最初の訪問者だなんてごめん』とか思ってるんだろうけど、連れてきたくて部屋に呼んだ僕に対しての不敬罪だから、そんなこと言っちゃダメだからね」と先手を打たれてしまった。
まったく、ユリ君には敵わない。
いつもの王子ハラスメントをかましてくる彼だったけど、急にモジモジしながらこう言ってきた。
「っていうか、今さらヤボなんだけどさぁ……。
僕らってお互い人生初の『友達』ってことで、いいよね?」
いいよね? ……と、いわれましても!
コミュ障を拗らせすぎてる僕は目を反らしたまま「それでいいんじゃないかなぁ」としか答える事が出来なかった。
*****
「なに、その言い方。嫌なの?」
「嫌なわけないよ。……ただ……」
「どうせまた『ぼくみたいな根暗おじさんが王子様の友達なんて恐れ多いよぉ~』とか思ってるんでしょ」
「うぐ」
「嫌なら嫌っていってよ」
「嫌じゃないっていってるだろ……」
「そんじゃ、今日から僕らは友達ってことで!」
「はぁ……わかったよ。
でもいいのかなぁ……。
一応今は選抜試験中だろ」
「聖女候補と恋仲になるのは禁止らしいけど、友達になるなって規則はないし、いいんじゃない?」
「まぁ、恋仲は……ないな」
「でしょ」
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