4月18日(木):選抜試験四回目③/ダイスケside
想像と違って王家の食卓というのは意外と『普通』だった。ジュリティア一家が特別なのかもしれないけど。
離婚してしまえばいいのにと幼い頃から思い続ける程に不仲な両親のもとで育った僕には、家族揃って食事をした記憶が一切ない。
王族相手とはいえ家庭的すぎる環境に、緊張どころか妙に癒されちゃったのを覚えてる。
今回の試験で計測すべき数値がまだ取れていないとユリ君が言うので、そのまま試験が続行されることになった。
夕食後に案内されたのはユリ君の部屋だった。
さすが王子の部屋って感じのキラキラまみれの豪華絢爛なインテリア。
天井にはシャンデリアが煌めいて眩しいし、何人も寝られそうなくらいの大きなベッドの存在感がすごい。
でも、この部屋は殆ど使ってないという。
「ほんとの部屋はこっち」と連れていかれたのは、クローゼットの中のさらに奥。
そこにあった小さな扉を開けたところがユリ君の『ほんとの部屋』だった。
六畳ほどの広さの部屋にはところ狭しと色々な実験器具や魔法石が散乱し、片側一面の棚には魔道具に使うパーツが収まっている。
そこはまるで下町の工房のようで、男心をくすぐるもので溢れかえっていた。
「ここには兄上か執事が時々来るくらいで、他には誰も入れたことがないから、めちゃくちゃ散らかっててごめんね」と苦笑しながらユリ君はソファに積まれた荷物をどけて、僕が座るスペースを確保してくれる。
テーブルの上に積まれた本を乱雑に床に落とすと、そこに例の『ワイヤレス充電機』についてのメモを広げた。
「じゃ、覚悟はいい?」とユリ君は不敵な笑みを浮かべる。
嫌な予感は的中して、そこからは怒涛の質問責めタイムが始まった。
「そもそもワイヤレスってなに」から始まって「コイルって? 電気を流すってどいう原理?」と、文学部人文学科卒にとっては難しい質問ばかりで、こちらの世界の技術で補える範囲の言葉を選んで答えていく。
かなり的はずれな回答もあったと思うけどユリ君は持ち前の柔軟さで解釈してくれたみたいだった。
「疲れたでしょ?」といってユリ君は棚から酒を出してきた。
正直、脳ミソが疲れすぎていたので酒が飲めるのは有り難かった。
作業をしたいから好きにしてていいと言われたので、散らかしてあった本の中からユリ君の魔道具研究ノートを見つけ出し、酒を片手に読み進める。
こちらの世界ではまだ出来ていないけれど、僕のいた世界には当たり前にある機械がいろいろあった。
ユリ君は本当に素晴らしいアイディアマンだ。
僕なら彼のアイディアの実現に役立てるんじゃないかと思ったけど、根っからの文系人間の自分じゃ無理かと肩を落とした。
*****
「工房に酒ならあるけど紅茶の方がよければ用意させるよ。どっちがいい?」
「お酒がいいなぁ。今は飲みたい気分だ」
「あ、酒好きなんだね。なんか意外」
「こう見えて結構酒には強いんだよ」
「見た目下戸っぽいしねー」
「そうだろ?
だから飲み会なんて、職場で事務的に誘われるくらいしか行かなかったな。
プライベートじゃ誘ってくれる友達も誘いたい人も居なかったし」
「じゃあ、今度からは一人で飲まなくてもよくなるね」
「なんで? ユリ君を誘えってこと?」
「当たり前でしょ。
誘ってくれないと処刑しちゃうんだから」
「ちょっとー……そういう王子ハラスメント、やめてよぉ」
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