4月16日(火):ユーリスside②
アライザスの選考でベルリーナ嬢が選ばれた時は「あ、こんなに可愛い子が奥さんになるかもしれないなんてラッキー!」って思ったし、神官長の召還でダイスケが選ばれた時は「こんなおじさんが聖女のわけないし、婚約魔法で結ばれるなんてマジで無理!」って思った。
兄上の聖力検査でダイスケの力がうんともすんとも出なかった時は、そのまま元の世界に帰っちゃえって思ったけど……なんか、無理だったんだよね。
なんかもう、首とかガクーー!って垂れ下がってて、放っておいたら死んじゃう捨て犬みたいで。
仕方なく僕が聖力検査をしたらとんでもない聖力がでてきちゃって、一気にしょぼくれおじさんに興味が湧いちゃった。
それと同時期にベルリーナ嬢の嫌な所が見えまくってうんざりしたまま今に至る訳だけど。
そんなことも知らない国民は心からベルリーナ嬢を聖女に、と応援している。
そして、そんな国民達に対してベルリーナ嬢は、既に聖女になったかのような笑顔で手を振っている。
気分は最悪だ。
ランチの後は最近流行っている聖女試験をモチーフにしたオペラをご所望だった。
本音は帰りたかったけど仕事だから仕方がない。
異世界からの聖女候補がとんでもない悪女で、主人公である我が国の聖女候補が苛められる。
自国の聖女候補の清らかな心に感動した国民達は彼女を応援し、彼女は確かな聖力で試験をクリアしていく。
最後は密かに恋心を抱いていた王子と結ばれる……そんな内容らしい。
『らしい』というのは、後から護衛から聞いた話だからだ。
もし、今の試験の『異世界からの聖女候補』が年配の男性だと国民達が知ったらどう思うんだろう。
そしてもしダイスケが聖女になっても、国民はそれを認めず、ベルリーナ嬢を推す人々が暴動を起こしたりなんかしたら……。
そもそも、ベルリーナ嬢が聖女になったら確実に僕を婚姻魔法の相手に選ぶ訳で……。
そんなことを考えていたらいつの間にか泣いていた。
僕が泣いていたのでベルリーナ嬢はオペラで泣いたのだと思ったらしいけど、オペラの内容なんてほとんど覚えちゃいない。
これは、『浅はかな聖女と結ばれなきゃいけないかもしれない未来があること』への絶望の涙なんだ。
帰ろうとロビーに向かうと、僕らを見た観客達がオペラの内容と混同して「お似合いの二人ね」なんて小さな声で言い合ってるのが聞こえてくる。
ベルリーナ嬢は「恥ずかしいです」と困り顔だったけど、その目は悦びのあまりにギラついて見えた。
城に戻って兄上と魔道具の数値を確認する。
僕の思いも空しく、聖力波動計測魔道具は『ベルリーナ嬢との聖力波長は極めて良好』と数値を叩き出した。
僕自身はこんなにも落ち込んでるっていうのにさ。
明日はダイスケとの波長相性診断試験だ。
彼が提案してきたデートプランは『王城の図書館』だけなのに、今日と違ってめちゃくちゃワクワクしてる。
どんな本を紹介しよう。
最近仕入れた魔道具の本? それとも小さい頃に読んでた絵本?
おじいさまが隠したエッチな本なんて見せたらダイスケはどう反応するだろう。
プランは図書館だけだけど、図書館内であればダイスケの『スマホ』の事を聞くのもOKだよね?
ああ、明日が待ち遠しいよ。
*****
「さて、これで今日のプランは全て終了だね」
「もう終わりなんですね……寂しいです」
「今日は楽しかった?」
「はい! 最後のオペラは本当に感動して、最後はずっと泣いていました。
あら、ユーリス様も少し目元が赤くなってらっしゃいますよ」
「僕も泣いてたからね」
「わたしと一緒ですね。
感動を分かち合えて嬉しいです!」
「『感動』ねぇ……」
「?」
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