4月8日(月):選抜試験三回目④
何を考えたのか、アライザスは「池の水の浄化までが試験であり、聖水化させるのは規則違反だ」と言い出したのだ。
ダイスケの偉業に呆気にとられていたベルリーナ派の神官達も、その言葉を聞いて「そうだそうだ」と騒ぎだしてしまった。
「求められていない能力をひけらかすなど、聖女にふさわしい行為とは言えませんな。
まぁ……もともと聖『女』ではないですが」
そう蔑み笑うアライザス。
あの場に私しかいなかったら確実にアライザスの脛を蹴り飛ばしていたわ。
アライザスと同じくクスクスと下品に笑う神官達を制したのはカイル様だった。
「聖女とは時に奇跡を起こすもの。
それを『ひけらかし』と称するなど言語道断。
聖女に対する冒涜である!」
あぁ……あの時のカイル様ったら本当に素敵だったわ!
思わず歓声をあげそうになってしまった。いけないいけない。
続けてカイル様は一つの提案を持ちかけた。
「とはいえ試験は公正であるべきだと考える。
ベルリーナ嬢にも池の水の聖水化をしてもらおう。
魔法石精製の制限時間はダイスケと同じく二十分とする」
つまりベルリーナが作らなかった風と土の魔法石をた二十分で作れという事だ。
大きな魔法石を一時間で精製したベルリーナなら不可能な事ではないのかもしれない。
魔法石を精製するため、森に再び入っていくベルリーナとアライザスとカイル様。
待っている間「僕が余計なことなんかしなければ」と情けない声をあげ続けるダイスケを適当に励ましていると、アライザスの部下の一人が私達に話しかけてきた。
なんでも、隣国に留学している彼の弟が魔獣に襲われ、毒を浴びて意識不明の重体だという。
解毒には高価な聖水が必要なので途方にくれていたらしい。
要するに、ダイスケが作った聖水を使わせてもらえないかという訳だ。
聖水は王室の管轄になるだろうが、カイル様であれば断わらないと思うと答えると、彼はダイスケの手を握り感謝の言葉を何度も言いながら涙を流した。
その彼は私達の元から離れる時、小さな声で言った。
「アライザス様はああ言っておりますが、私はダイスケ様こそ聖女に相応しいと思っています。
ベルリーナ嬢が水の聖水化などできるはずもない」
*****
「あの人の最後の一言、どういう意味だと思う?」
「……普通に考えると、短時間で魔法石を二つ作れないって事ですかね」
「普通に考えないと?」
「アニー様。僕はそういう下種の勘繰り、良くないと思うなぁ……」
「ダイスケの考えたこと、当ててあげるわ。
『ベルリーナはそもそもあの大きい魔法石を作ってない』
……でしょ?」
「……ノーコメント」
次回で三回目選抜試験は終了です。
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