表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/71

4月8日(月):選抜試験三回目②

ダイスケがジャケットのポケットから取り出したのは、ベルリーナのものの半分ほどの大きさの魔法石だ。

 ベルリーナの石より小さいとは言え、一時間で作れるサイズとしては平均的だし、透明度は高く精製が十分に出来ていることは見ただけでも分かる。

 ダイスケの魔法石を見たアライザスは「可愛らしい魔法石ですね」と鼻で笑った。

 魔法石の大きさだけで優劣をつけるだなんて浅はかな男!

 ベルリーナは「そういう言い方はいけませんわ」と可愛らしく頬を脹らましてアライザスを窘めたが、私から見るとアライザスと一緒になってダイスケを馬鹿にしているようにしか見えない。


 そんな中、今度はお父様が自分のローブの両ポケットに手をいれて何かを取り出した。


 魔法石が二つ!?

 ということは、ダイスケはたった一時間で合計三つの魔法石を作り出したということ!?


 アライザスは「そんな筈はない」「不正だ」「試験内容を事前に知り、予め用意していたに違いない」と猛烈に抗議の声を張り上げたが、試験官としてダイスケの精製を見ていたカイル様がそれを制した。


 カイル様は最初にベルリーナの様子を見に行き、後半三十分はダイスケの元にいたらしい。

 カイル様がダイスケの様子を見に行った丁度そのタイミングで一つ目の魔法石が仕上っただけでも精製の速さに驚いたのに、ダイスケはその遥か斜め上を行く発言をしだしたという。


「池の浄化だから水の魔法石だけ作ればいいと思ってたけど、これじゃあまりに簡単すぎる……。

 『魔法石を一つ作れ』って、浄化に必要そうな他の属性の石も一つずつ作らなきゃいけないって事だったのか!

 まずいぞ……時間が足りない」


 いやいやいや! 水の魔法石だけでいいから!

 と、お父様もカイル様も脳内では突っ込みを入れていれたが、残り三十分もない時間でいくつ魔法石を作るつもりなのかが気になって、あえて何も言わず見守ることにしたらしい。


 ダイスケの考えでは『空気中の瘴気を浄化する風の魔法石』、『池の水が染み込んだ土地を浄化する土の魔法石』、『水の浄化が持続するような水中植物の育成を促す木の魔法石』の三つを追加で作る予定だったらしいのだが、時間が足りず、追加で作れたのは風と土の魔法石の二つになってしまったとの事だった。

 戻ってきたダイスケが生きる屍のように落ち込んでいたのはこのせいだったのか。


 カイル様曰く、手で包み込める分の二個の石を同時に握って祈りを捧げ、二十分ほどで二つの魔法石が仕上がるのを見たという事で、「万が一、最初に精製していた水の魔法石に何らかの不正があったとしても、他の二つの魔法石に不正は全くない」と宣言して下さった。

 二つ同時に精製したというカイル様の言葉に、その場にいる神官達がどよめいた。

 当たり前だ。

 一つの精製だけでも困難な魔法石を二つ同時にだなんて!


 そしてカイル様は私の方を向き、「君が信頼するダイスケは立派に魔法石を精製していたよ。誇りに思っていい」と柔らかな顔で笑いかけて下さった。

 先程まで身体中に広がっていた不安感が一気に足元から流れ出るようだった。


 王族にはっきりと不正はないと言われて反論するほどアライザスは馬鹿ではなかったようだけど、近くにいる私にだけ聞こえるように「数より質だ」と呟いたのは聞き逃さなかった。


*****

「おやおや、可愛らしい魔法石ですね」

「そういう言い方はいけませんわ、アライザス様っ」

「褒めたつもりでしたがね」

「あの大きさを作る事だって大変なんですよ?」

「ベルリーナ嬢はお優しくいらっしゃる。そして優秀だ。

 貴女の魔法石はこんなにも大きいのだから」

「いやですわ。たまたま見つけた石が私に『立派な魔法石になりますから僕を使ってください』って語りかけてくれたように感じて作っただけなんですもの!」

「きっと石の精霊がベルリーナ様を慕って自ら立候補してきたのでしょうなぁ」

「……チッ(この二人の茶番劇、早く終わらないかしら!)」

下にある評価・いいねボタンを押していただけると今後の更新の励みになります。よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ