4月5日(金):ユーリスside
男性にユニコーンがなついた事例を調べるために、変装をして城下町にある図書館へ。
めぼしい本を抱えて読書スペースに行くと、見慣れた猫背がそこにあった。
僕の気になる人ランキング、現在ぶっちぎりナンバーワンのダイスケだ。
感激のあまり声をあげたくなるのを堪えてそっと彼に近寄る。
耳元で「なぁに読んでんのぉ?」と囁くと、ダイスケは耳を押さえたまま潰されたカエルのように小さく叫んで、椅子から転げ落ちてしまった。
予想以上の反応に嬉しくなってしまう。
正体に気付いたのか僕の名前を呼びそうになったので、慌てて彼の口を手で塞ぐ。
王子だとバレるとまずいから名前はユリと呼ぶこと、敬語も禁止、と耳元で前置きをして手を口元から外し、床に転がったままの彼を引き上げる。
騒がしい僕らの事に腹を立てた司書のお姉さんと目があったので、飛びきりの笑顔で謝ると、照れて顔を伏せてしまった。
ちょろいもんだ。
「ユリ君はこんなところに何をしに来たんだい」と聞かれたので、男性とユニコーンについての調べものをと答えると、ダイスケは僕が本棚から持ってきた本を見るなり「そこにあるのは全部僕も調べたけど、何の成果もなかったよ」と言った。
変装までして城下町にきたのに、ひとつも意味がなかっただなんて……
でも、そこでへこたれる僕ではないのだ。
ユニコーンについての成果はなかったけど、ダイスケに会えたって成果があるんだから、これを活かさないわけにいかない!
屋敷に帰るというダイスケを無理矢理引き留めてカフェに誘う。
周りには他の客もいるのであまり大きな声では話せない。
僕の正体を知られるのもまずいけど、ダイスケが異世界からの召喚者……つまり聖女候補だとバレるのはもっとまずい。
聖女選抜試験が行われているのは国民全員が知っている事だけど、異世界からの聖女候補が男性という事は伏せられているから。
ってことで、彼のレポートで読んで一番気になった事だけ聞くことにした。
この世界に唯一持ってきた『スマートフォン』という魔道具のことを。
『スマートフォン』、略して『スマホ』は彼の世界の人間の大多数が持ち歩いている魔道具で、スマホを通じての会話、手紙のやりとり、図書館機能からゲーム機能まで、色々な事ができる小さな箱らしい。
しかしスマホを動かす『電気』という力は何もしていなくても放出され、補充されないと動かなくなってしまうという。
こちらの世界に来て力の放出を抑えるよう機能を停止させたけど、もしかしたらもう動かない状態かもしれないとダイスケは言った。
とはいえ、ダメ元で明日のお茶会に持ってきてもらうことにした。
動かなくても魔道具のフォルムだけでも見てみたい。
今日は周りが気になって話せなかった事もお茶会でなら正々堂々と聞ける。
明日のお茶会、楽しみだなぁ!
*****
「あ、今日僕らが会ったことは絶対誰にも言わないでね。
明日も、今日会った事は口にしちゃダメだからね」
「ん? どうして?」
「実は候補者と僕や兄上が二人きりで会う事は禁じられてるんだよねー」
「は!? じゃあなんで図書館で僕に話しかけたんだい!?」
「だってダイちゃんとお話したかったんだもん♪」
「ユリ君……。君、もしかして僕を落選させたいのかい……?」
「え。まさか!」
「そうだよね……。女性が選ばれるべきものに僕みたいなおじさんが選ばれちゃったんだもの……そりゃ迷惑だよね……」
「あ、あわわわ……」
「今すぐ辞退のお願いを……」
「や、やめて! まじでやめて!
軽率に話しかけちゃってごめん!」
「……本当に辞めなくていいのかい」
「辞めないでよー!
それに今日の事がバレたとしても僕がダイちゃんのこと、ちゃんと守るからねっ!」
「……本当かなぁ……」
「(ボソッ)め、めんどくさい奴……」
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