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4月4日(木):カイルside

 アライザスとベルリーナ嬢が面会を求めてきた。

 昨日の試験の後屋敷に戻ると、ベルリーナ嬢が大切に管理していた花壇が何者かに踏み荒らされていたらしい。

 聖女候補を降りず試験に参加した事に犯人は腹を立てているのかもしれない、とベルリーナ嬢は涙ながらに訴えてきた。

 アライザスは「試験でベルリーナ嬢が屋敷にいないことを知っている人間の犯行だと思う」と言ったが、暗にそれはアニー嬢が犯人だと言っているのだろう。


 少し前ならば私もその意見に同調していたかもしれないが、アニー嬢から『わたくしならもっと上手く嫌がらせをする』と聞かされているだけに思わず笑ってしまった。

 おかげでアライザスに訝しく思われただろう。


 二回目の試験の際、特例でベルリーナ嬢にアライザスが付き添っていたのも妙にタイミングがいい。

 花壇を踏み荒らす事件について自作自演を疑われないために付き添ってきたのかもしれない。

 アニー嬢なら「昼間に堂々と花壇を踏み荒らすなんでバカな事、わたくしならしませんわ。どうせスプリングス家一同がグルで、使用人あたりに踏ませたのかもしれませんわ」などと言い出しそうだ。

 いかん。アニー嬢が自作自演かもしれないと言っていたのが頭から離れないせいで、どうしても彼らを悪い目で見てしまいそうになる。


 公平な目で事件を見なくては……と思っていた矢先、ベルリーナ嬢が「三回目の試験ではアニーさんとお会いしなきゃいけないのでしょうか。とても怖くて、私…」と声をあげて泣きだしたのを見た瞬間、背筋に何かがぞわりと這うような感覚に襲われた。

 前もそうだった。

 「二回目の試験はアライザス様が一緒じゃないと怖くて受けられない」と泣かれた。


 自分が泣けば、私が願いを叶えると思っているのだ。


 三回目の試験は関係者全員参加可能なのでアニー嬢に来るなという事はできないと答えた。少し粘られたがその答えは曲げなかった。

 深く傷ついたといわんばかりの泣き顔のベルリーナ嬢に付き添って、アライザスは私を睨みつけて帰っていった。


 二人を見送った後、どっと疲れが襲ってきた。

 それと同時にアニー嬢にこの件を報告すべきだな、とも思った。


 いや、「報告すべき」じゃなく「報告したい」なのかもしれない。

 今回のこの話を彼女と共有しておきたい。

 明日にでもアニー嬢に手紙を出さなくては。


*****

「兄上、昨日の試験のレポートの複製をもらってもいいかい?」

「構わない。……ダイスケの方のレポートか?」

「ご名答~!」

「お前が好きそうなテーマがあったからな」

「ベルリーナ嬢のレポートは素晴らしかったけど、いい子ちゃんの回答って感じで僕には面白くなかったなぁ」

「いい子ちゃん、か……」

「あれ、ベルリーナ嬢の件でまた何かあった?」

「昨日、試験から帰ったら花壇が踏み荒らされていたらしい」

「ふーん」

「お前にとっても重要な試験で起こった事件なんだぞ。少しは興味を持つ素振りを見せろ」

「あはは。興味ないのバレたか」

「罰としてお前も今度のお茶会に参加しろ」

「お茶会ぃぃ? 誰が来るのさ」

「神官長とアニー嬢を呼ぶ」

「えっ! ほんとに!? それならそれならそれならそれなら!!」

「な、なんだ! 近い近い! 顔が近い!」

「ダイスケも呼んで! それなら僕、そのお茶会参加するよ」

「どうしてダイスケを…」

「彼の国の魔道具の事を聞きたいんだよ~!

 ベルリーナ嬢の事件の事もちゃんと考えるから~! ね?」

「わかったわかった! ダイスケも呼ぶ!」

「やったぁ」

「あともう一つ命令だ」

「え~…… なに?」

「……若い令嬢が喜ぶスイーツの店を教えろ……」

「へっ!?」

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