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4月3日(水):選抜試験二回目

 今日は二回目の選抜試験だ。

 朝食直後に城から迎えの馬車がやってきてダイスケを連れていった。


 私とお父様の同行は許されていないので屋敷でダイスケの帰りをひたすら待つ。

 不安のあまり昼食は全く喉を通らず、やることといえば部屋をウロウロするだけ。

 生きた心地がしないというのはこういうことなんだろう。


 夕飯前にダイスケは帰ってきた。

 ダイスケの猫背はいつもの50倍は丸まっていて、私とお父様の顔を見るなり大きなため息をついた。


 「申し訳ないですが、率直に言いますとかなり駄目な結果だったと思います……」


 ダイスケの様子から結果が丸わかりだったのでお父様と「でしょうね」と声を揃えて言ってしまった。


 試験内容は筆記試験だったようだ。

 自分の生い立ちや人となり、聖女になった場合の心構え等をまとめて規定枚数書くというもの。

 原本は王城に保管されているが、複写魔法で生成されたものを持ち帰ってきたので見せてもらう。


 まずはベルリーナのもの。

 文章から慈愛が滲み出ているとでもいうか、聖女とはこういう人がなるべきだと思わせるような自己紹介。

 時折ユーモラスなエピソードも挟んであり、思わずクスリと笑ってしまう。

 自分で育てている花を紹介するコーナーでは、普段からよく観察していることが分かる精密画も描かれていた。

 聖女となってからの未来予想図も完璧で、このレポートを読むだけで審査官全員がベルリーナを聖女に推すだろう。そうに決まってる。

 だって私もベルリーナを推したくなるほどの内容だったんだもの。

 

 対してダイスケのレポートは……。

 なんというか……。

 盛り上がる箇所がない難解な歴史書を読んでいるというか……。

 一応最後まで読んだけれど、猛烈な眠気に襲われて時々意識が飛んでしまった。


 「就活も自己PRが大の苦手だったんです……」


 両親は不仲で家にいても居場所はなく、幼い頃から友達を作るのが苦手で一人で勉強するだけの学生生活。

 会社に入っても良いことは何もなく、朝から深夜まで働くだけの毎日。

 両親が立て続けに他界、同時期に会社は倒産、再就職活動も上手くいかず、こちらの世界に召喚される直前は自死さえ考える状態だった……。

 たしかに、こんな人生を送っていたら負のオーラをまとうレポートが仕上がるのも頷ける。


 ただ、同情心を煽る内容ではある。

 「可哀想な人生を送ってきたダイスケは聖女になって幸せになるべきだ!」……と思ってくれる人が一人はいるかもしれない。


 かなり無理があるけれど、そう願うくらいしか今回の試験結果には希望がない。

 第三回目試験の前にダイスケが落選されないことを祈るばかりだ。


*****

「確かにベルリーナ嬢のレポートの方が素晴らしいけれど、ダイスケのレポートも興味をひく所はあるよ」

「え~? どこですの?」

「特にこの、元の世界を紹介する箇所が面白かった」

「わたくしにはちっとも面白さは感じませんでしたけれど」

「アニーは魔道具に興味がないから面白くなかったんだろう。

 彼の住んでいた世界の機械は魔道具に通じるものがあって読んでいてわくわくしたよ」

「そんなものかしら……」

「それに、ユーリス様は趣味で魔道具の研究をされているから興味を持ってくださる可能性はある」

「えっ!? お待ちになって!

 ユーリス様って魔道具の研究をされいるんですの!?」

「あまり表立って言ってはいないけどね」

「大変! わたくし、明日から魔道具について勉強しなくてはなりませんわっ!」

「……普段の勉強もそれだけ熱心だといいんだけどなぁ……」

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