第14話 せめて、妖怪らしく <前編>
さて、みなさんには憑歌のスペカの元ネタがわかるでしょうか?
憑歌が高らかに宣言したあと、砂埃の舞う岩石の地面の上で、両者が二手に分かれた。
魔理沙と勇儀は、不意打ちな戦闘じかけに少し慌てつつも、落ち着いて相手側の動向を読み取ろうとしていた。
と、その瞬間。
『 呪符「インガメの束縛」 』
憑歌が天を仰ぎながら、スペルを詠唱した。
それと同時に、彼女の周りに黒紫色の弾幕が出現し、群をなした。
そして、弾幕の外縁を囲うようにして、青黒く発光する魔法陣が現れた。
「なあ、勇儀...」
「...ん? なんだい魔理沙?」
「これって、リアルなほうで弾幕ごっこの雰囲気か!?」
「あー...。 そうっぽいねぇ...」
不意の攻撃宣言に焦りを隠せなかった魔理沙だが、勇儀のほうはいくらか落ち着いており、余裕さえ垣間見えた。
「いや、何の前振りもなしに攻撃するのは卑怯だろ!
もうちょっt」
ヒュウウウウウウウウウンッ!
ドオオオオオオオン...
魔理沙が抗議する間もなく、二人の間へと無慈悲に弾幕が降り注いでくる。
「うわっ!? あぶなっ!」
「どうした? もう降参してもボクは別にいいけどね。
まだ他に仕事が残ってるし、さっさと終わらせてくれないかなぁ?」
「...ふぅん」
憑歌のからかいを受けて、さっきまで驚きを隠せずにいた魔理沙がようやく本気を出すようだ。
「いい度胸だな。
...勇儀、もしものときのために、後衛頼むぜ」
「まさか、一人で行くつもりかい?」
「ああ、これくらいのちょろい妖怪なら、私一人で十分だぜ」
そう言って、魔理沙は一人、憑歌の目の前へと身を乗り出していった。
「ふぅん、まあ、そうこなくっちゃ」
憑歌のさばさばした対応に半ば苛立ちつつも、魔理沙は戦意に満ちて彼女と面向かい合った。
すると、魔理沙の反撃を見据えた憑歌は、自らの周囲に張り巡らせていた弾幕を展開し、魔理沙に向かって撃ち放った。
その瞬間、放たれた弾幕がまるで生きているかの如く飛び跳ねはじめ、目を吊り上げた魔物のような犬の形となって魔理沙に襲い掛かった。
「くそっ、なんだこれ!」
青黒い犬は互いに群れをなし、まるで魔理沙に憑依しているかのように執拗に付きまとう。
魔理沙は手にしている箒で必死に追い払おうとするも、憑歌によって意志を与えられた弾幕に憑依されたせいで、みるみるうちに動きが鈍くなってくる。
「くそっ、動けない...」
「はぁっ!」
勇儀がすかさず青黒い犬を追い払おうとするも、憑歌はすでに次のスペルを展開しようとしていた。
「なっ、この状態で次の攻撃だと!」
『 散霊「源頼政の鵺討」 』
憑歌がスペルを詠唱すると、数えきれないほどの青い矢弾と共に、4つの大きな弾幕が出現した。
すかさず彼女は目の前で人差し指をピンと立て、魔理沙のほうへと向けた。
すると、矢弾は黒味を帯びて高速で四散し、大きな弾幕が魔理沙のほうに向かって飛び交う。
「くっ...!」
「危ないっ!」
勇儀が真理沙の目の前で弾幕を蹴り倒し、間一髪間に合った。
「ふぅっ、はぁ...。
すまないな...」
「いいってことよ」
「...くそっ、こいつら、今までの異変とは力が段違いだぜ...。
油断しないように行かないと...」
魔理沙も、ようやく事の重大さに気づきはじめたようである。
「あいつは他人に憑依する能力を持っている...。
憑かれて自律を失えばそこで、一貫の終わりだぜ」
(あの妖怪の盲点は、恐らく他人に憑いているとき。
しかし、魔理沙を犠牲にするわけにはいかない...)
逃げ惑う人間を高見しながら、憑歌は早くも次のスペルを用意しようとしていた。
そして、勇儀にはあるひとつの考えが浮かんでいた。
(仕方ない、あれを決行するしか...!)
オリキャラ解説 No.1
憑歌 <その1>
呪わないポゼッサー
犬飼 憑歌
Inukai Hyoka
種族:犬神
能力:他人に憑依する程度の能力
「犬神」と呼ばれる妖怪の一人。
「神」とは名ばかりに、実際は下っ端の妖怪であり、主に人間の里の特定の家に憑依して、こそこそと居候をして暮らしている。
憑依の能力のおかげで、並の妖怪ほどの実力を持つことができているものの、その能力がなければ至ってまるで強くない妖怪である。
性格は非常にドライでさばさばしており、あまり他人に興味が無いそぶりさえ見せる。
常に飄々としている放蕩娘で、その真意をつかむのは至難の業である。
どうやらあまり好戦的ではないようで、今回のように命令でもされない限りは、まず自分から戦闘をしかけることはないという。
今回の異変の実行犯の一人で、実態不明の『ある人間』に使えているという。
まず他人には従わず、あまつさえ服従するなどありえなかった彼女が『ある人間』に忠誠を誓った背景には、彼女の生き方についてのある検討があった。
<その2>に続く...




