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東方桃幻郷 ~ Utopia of Sweetness.  作者: トロ
前章 花は盛りに、月は隈なき
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第12話 鬼が出るか、猿が出るか

 「ああああああっ! 暑いっ!!!

  もう我慢できないッ!!!」


 「まぁまぁ、せっかく来たんだし...。

  ちょっとくらい落ち着きなよ」


 「無理よ! もうこんなところ居られないっ!

  さっさと帰るわよ萃香!」


 そう言って、霊夢は萃香の手を引きながら、元来た山道を辿って戻ろうとしていた。


 「ちょっ、異変解決はどうすんのさ!」


 「そんなの後でいいでしょ!

  はいはい撤収撤収!!!」


 そうして、霊夢がきびすを返そうとしていたその時――――。




 ヒュゥゥゥゥンッ!


 ッドォォォォォォン...


「!? あぶなっ!

  ...今のは何?」


 「弾幕...」


 「何ですって!? 誰かそこにいるの?

  大人しく出てきなさい!」


 霊夢が見知らぬ敵に声をかけると、その弾幕の主が岩陰から姿を現した。


 「...あんたは、妖怪?」


 それもそのはず、その敵の少女は猿の尻尾のようなものを生やしており、少なくとも人間には見えぬ容姿であった。


 現実世界で言うところの、平安時代か鎌倉時代辺りにありそうな、陰陽師じみた服装を身にまとっていた。


 しかし、よく見ると、彼女が召している水干には細かいフリルや、各種キラキラした装飾が施されており、全体的に丈が短く、肌の露出が多かった。


 髪型は、顔の両脇に細く長い髪を垂らして、後の髪は後ろで束ねて折り返し、さらに編み込む、というなかなか芸の細かいことをしている。


 「...っ、あんたは誰?」


 霊夢がそう言うと、その妖怪は地面にそっと下り立ち、不敵な笑みを浮かべたまま、影を晴らすようにして顔を上げた。


 どこか、憂いや神妙さをたたえた表情であった。


 辺りが緊張に包まれ、霊夢も萃香も、戦闘に巻き込まれることを覚悟しつつ身構えた。


 その刹那...。




 「はぁーいっ!

  幻想郷のアイドル、紋義ちゃんだよー☆ きゃはっ♪」




 「はぁ?」


 「はぁ?」


 二人の息がぴったりと揃ったのは、これが最初で最後かもしれない。


 「もうっ!

  あたしのファンだからって執拗に追いかけてきちゃダメなんだからねっ!」


 「いや、尾行してきたのはアンタだろう」


 「そもそもファンじゃないし」


 「...サインはお断りだよー☆

  握手は時間と場所をわきまえてねー! きゃはっ♪」


 「サイン? 何それおいしいのー?(棒)」


 「せっかくファンだったのになー、やめちゃおっかなー(棒)」


 「......っ。 ぐすんっ」


 「ちょっと、その、泣かないで...」


 「悪かったよ...」




 霊夢と萃香は、早速彼女から話を聞き出すことにした。


 「...で、あなたは?」


 「あたしは狒楽(ひらく)紋義(もんぎ)

  ...あなたの言う通り、私は妖怪よ。

  『猿神』っていうんだけどね。 まあ、幻想郷にはあんまりいないらしいけど」


 「ふぅん、犬神みたいなもの?」


 萃香が横槍を入れた途端、紋義が逆上した。


 「違うっ!!! あたしらはそんな下賤な妖怪じゃないっ!!!

  ...あたしは妖怪だけれど、厳密には神格化しているわ。

  だから、そんな下っ端なんかと比べないで。

  あたしは神様よ? この世界のアイドルよ? 分かってる???」


 「あっ、はい...」


 霊夢も萃香も、紋義の難儀な対応に半ば驚き、半ば呆れつつも、質問を続けた。


 「...その、で。

  あなたはなぜ私たちを追いかけてきたの?」


 「あなたたち、鬼ヶ岳に入ろうとしてたでしょ?」


 「ええ。 ...それが何か?」


 霊夢も萃香も、彼女の言葉にきょとんとしていた。


 「あそこには...。

  ...誰も立ち入ってはいけない、神聖な空間があるの」


 「神聖な空間...?」


 「そうよ。

  ...まぁ、あなたたちみたいな幸せ者には関係のない話よ」


 二人とも、紋義の話していることの真意は掴めずにいたが、それでも、ある一つの確信を得ることができたのだった。


 鬼ヶ岳の頂上には、この異変に関わる"何か"がある、と。




 少し間をおいてから、霊夢が口を開いた。


 「...まぁ、あんた達が何を企んでいるのかは知らないけれど、とにかくこの暑さで私たちは死ぬほど迷惑してるの。

  その先に何かあるのなら、あんたを倒してまででも先へ進むわ」


 「...えっ? 今『暑さ』って言った?」


 「そうよ。 ...それがどうかしたの?」


 すると、先ほどまで沈んでいた紋義の顔がさっと明るくなった。


 「あぁーっ! ごめーんっ!!!

  それ、あたしのせいなんだっ☆」


 「...はぁ?」


 「...はぁ?」


 紋儀の突然の告白に、二人とも呆れるしかなかった。


 「鬼ヶ岳に侵入者を近づかせないために、あたしの能力でこの辺りをうんと猛暑にしておいてたんだった!

  あっ、もしかして...。

  ...この辺りだけじゃなくて、幻想郷全体が暑くなってる感じ???

  うそーん! やだぁミスちゃった~...」


 「 「 お 前 の し わ ざ か 」 」


 霊夢も萃香も、一刻も早くこの暑さから逃れるために、鬼の如く形相で彼女を睨みつけながら、襲いかからんばかりに構えていた。




 「えっ、まさか弾幕ごっこするの?

  よしっ、久しぶりに本気出そっかな♪

  あたしの太陽を操る程度の能力、あなっどっちゃダメなんだからねっ!」

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