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東方桃幻郷 ~ Utopia of Sweetness.  作者: トロ
前章 花は盛りに、月は隈なき
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第11話 針小棒大なる歴史

 「少し長くなるんだけれど、聞いてくれるかしら?

  ...昔、鬼ヶ岳であったことの真実を」




 私たち小人族の祖先のことは、もうご存知だとは思うけれど。


 私たちの祖先は、はじめは一人の小人だったの。...そう、かの有名なおとぎ話に登場する小人ね。


 言い伝えによると、彼は木椀と針を使って果敢に鬼達と戦い、そして見事勝利したそうよ。


 ...まあ、私もこの話が本当かどうかなんて、全く知らないわ。


 でもね、私がこの『打ち出の小槌』を所有している限り、否定はできないんだけどね。


 そして、祖先の小人は大きな体と姫を得て、幸せに暮らしましたとさ。


 めでたしめでたし。




 一般に知られている話は、ここまで。


 ここからは、小人族の者しか知らないことなのだけれど、貴方たちは特別よ?




 小人族の二代目は、一代目とその姫との間に生まれた小人だったの。


 二代目は、小さい頃から父親の武勇伝を聞かされていたせいか、次第にそれに感化されるようになって、あられもない野心を抱くようになるの。


 きっと、考えの浅い性質だったんでしょう。不幸にも。


 それは、「幻想郷を小人の天下にする」こと。


 確かに、当時は小人の立場が弱かったし、そのような考えが出てきてもおかしくは無かったの。


 しかし、二代目は後先のことも考えず、父親から譲り受けた小槌の力を乱用してしまうの。




 二代目の計画は、確かにうまくいったわ。...途中まではね。


 彼は地方の妖怪たちを支配し、重い年貢や労役を課すことで巨万の富を得たの。


 もちろん、汚い金も含まれていたでしょうよ。...私は、私は知らないわよ。


 そして、自らの富の象徴として、幻想郷の上空に輝針城を築いたの。




 ...でも、二代目のその乱用ぶりは、もはや小槌の魔力では賄えないまでに進展したわ。


 結局、小槌はその能力を凌ぐ乱用に耐えきれず、魔力を尽きさせてしまったの。


 そうすると、どうなると思う?




 彼が小槌の魔力で築いた富は、すべて跡形もなく崩れ去ってしまったわ。


 まあ、そうでしょう。もともと、小槌の魔力によって成り立っていたものだしね。


 結果、彼は小槌の代償を背負った罪人として、輝針城と共に鬼ヶ岳に堕ち、何代にも渡って幽閉されることになるの。


 ...そう、私は鬼ではないけれど、鬼ヶ岳で生まれた者よ。


 まあ、その時は、小槌の代償など知る由もなかったけれどね。


 もちろん、鬼からは良い扱いはされなかったわ。


 穢れた一族の血を引く、愚かな姫...。『魔が差した子』なんて言われたこともあったわね。


 ...まあ、昔の話よ。




 ...そこに、正邪が私の元へやって来たのよ。


 「外の世界は素晴らしい、さあ、いっしょに弱者が苦しまない楽園を作ろう」ってね。


 あいつが行ってることは、当然嘘っぱちよ。


 小人族が過去に虐げられていただなんて、ありえないんだもの。...まあ、鬼ヶ岳にいた頃は別としてね。


 でも、あいつは私に外の世界を教えてくれた。


 私がまだ見ぬ新世界を。


 だから、正邪がどんなに馬鹿で天邪鬼で愚かで、そして卑怯で許せない存在であっても、私はあいつを恨み切ることはできない。




 そう、私にとって鬼ヶ岳は...黒歴史として葬り去った忌むべき場所なの。


 だから、私にはあそこへ立ち入る勇気は、もう、ないわ。...あまつさえ、そこで禁忌の小槌の魔力を使うなどとはね。




 だから、貴方たちだけで行って頂戴。


 そもそも、異変解決なら、貴方たちの方が上手でしょう?


 だから、分かったらさっさと...行って頂戴。




 「...そういうことよ。 ご理解いただけたかしら?」


 「...」


 「...」


 早苗も妖夢も、返す言葉が無かった。


 「何? まだ私に何かあるの?」


 「いえ、もういいわ...」


 「貴重なお話、その、ありがとうございました」


 彼女たちはそう言うと、博麗神社を後にした。




 「...私はどうすればいいの...?」 

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