解放
「ただいま戻りました。」
会場から馬車に乗り込み、すぐに帰宅した。屋敷は学園の近くにあるので馬車だとほんの数分でついてしまった。
そして、部屋に入った瞬間私は右目の辺りをナイフで切り付けられ、反対の頬を叩かれた。
「この出来損ないが!なにのこのこと帰ってきたんだ!今すぐに荷物をまとめて出ていけ!」
「わかりました…」
やはりお父様に怒鳴られて追い出された。思った通りだ。
もともと所持品が少ないため荷物をまとめるのに時間はかからない。ただ、パーティー用のドレスを着ていたため、着替えに少し時間がかかってしまった。服装は白いシャツに黒いズボンという何とも質素な格好だが、ドレスなんかよりもこの格好のほうがノアは好きだ。なぜなら、とても動きやすいからである。
「それでは、今までありがとうございました。それではこれからもお元気でお過ごしください。」
そう一言残し、私…いや僕は幼馴染の治める領地のある北方の地に旅立った。
レイの治めるクラウスベルク侯爵家のクラウスベルク領は北方のわりに交通整備がしっかりしているため1週間程度でつくことが出来るだろう。
(そういえば、このことレイ知ってるのかな?僕の方から連絡してもいいけど返事が来ても受け取れないしなぁ…まあいっか!)
そうしてノアは列車と馬車を乗り継ぎ、1週間後、クラウスベルク領につくことが出来た。
だが、ここで問題が発生した。
それは、ノアがものすごく方向音痴なので、城の見える方にいくら歩いても全く着く気配がないのである。それに街中はお祭りの準備をしているようで、かなり騒がしく、余計に道がわかりにくかった。
(僕は昔よく来てたけど、こんなお祭りなかったと思うんだけどなんだろ?)
すると、街の人たちは、道の端により始めた。城門の方からは歓声が聞こえてくる。
ノアは人と人の間を抜け、一番前の列に出た。これなら何が起こっているのかよくわかる。
すると遠くから、馬に乗った騎士や兵士たちが行進してきた。凱旋式だろうか?
(そういえば、ちょっと前に届いた手紙に最近魔物が大量発生してるって言ってたっけ?)
その騎士たちの先頭で馬に乗って歩いているこの国では珍しい黒髪の青年がいた。
その黒髪の青年はなぜかこちらに近づいてくる。
(あれぇ?あの顔どっかで見覚えがあるような?)
よく見ると金色の目に黒髪、整った顔立ちだが表情はとても冷たい。
「あれぇ?レオじゃん!久しぶり!元気にしてた?」
そう大声で叫ぶとレイモンドは驚いたような顔でこちらを見た。
そして、僕が人込みから抜けると顎が外れたように大きく口を開けていた。
まさに、開いた口が塞がらないということわざを実践しているかのような状態だ。
すると、レイモンドは耳元でこちらに話しかけてきた。
「なんでお前がここにいるんだよ⁉今は首都にいるんじゃなかったのか?とりあえず、後ろから兵士たちについてこい!」
「は~い」
そういって最後尾を待ち、凱旋を終え城に戻ると応接室に通された。
そして、しばらく待っているとレイモンドが来た。
「もう一度聞く。なんでお前がここにいるんだ?本来お前は第二王子の婚約者なんだから今頃王城に泊まり込んでいるものだと思っていたが?」
「もう第二王子の婚約者じゃないよーだ。」
「なんで⁈」
「卒業パーティーのときに冤罪で婚約破棄された。なんでも僕は知らないかわいいご令嬢をいじめていたらしい。」
「それで、親に捨てられてここまで来たわけか。それは理解したがその右目と頬はどうした?」
「えーっとお父様にやられちゃった。右目は見えているんですけど、ちょっとこの傷は残っちゃうみたい。」
レイモンドは呆れたような顔をしながら手当をしてくれる。
「ところで何なんだ?その敬語とため口の混ざった変なしゃべり方。」
「あ~これはもう癖だね~。もう第二王子の婚約者じゃないしため口でいっか?」
「あぁ、そっちの方が聞きなれてる。あとなんで濡れ衣着せられた相手を可愛いなんていってるんだ?普通そこはちょっとくらい皮肉るだろ…。」
「実際僕は第二王子のことは好きじゃなかったし事実可愛かったんだもん!」
久しぶりに彼と話した僕は少し浮かれていた。なんといってもレイと久しぶりに会えたから。すぐに城からも出ていくつもりだったんだ。




