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22-5

◇202:名無しの元引きこもり

 パーティ始まった。


 203:名無しの転生者

 何のパーティだっけ?


 204:名無しの転生者

 >>203

 言うな!またやつが来る!


 205:名無しのお嬢様

 ついに来ましたわね!

 今回だけは特別に! 私も実況に参加しますわ!


 206:名無しの転生者

 うわでた


 207:名無しの転生者

 別のやばいのが来ちゃったよ


 208:名無しの転生者

 そもそもお前がどうやって実況すんだよ

 現地にいないだろ?


 209:名無しのお嬢様

 もちろん、私のチート能力を使うんですわ!

 【厄介夜会】(ウォッチパーティ)という能力で、次元を超えてあらゆる会合を観測・共有することが出来ますの!

 普段はこれでありとあらゆる貴族の弱みを握りまくってますわ~!


 210:名無しの転生者

 はえ^~すっごい


 211:名無しの転生者

 情報系だと最強クラスのチートだな


 212:名無しのお嬢様

 さぁさぁ皆さんお静かに!

 お楽しみの時間が始まりますわよ!


◇213:名無しの元引きこもり

 つーか腹減ったんだけど。ここの料理って食べていいんだよな? 夕食どきに開催するとか主催者はなに考えてんの?


「皆様方、今晩は。本日は私、アナスタシアとドレイクとの婚約パーティに来ていただいて感謝いたしますわ。パーティは楽しんでいるかしら?」


 214:なんか名前が変に聞き取れないんだが。第一王女とモブ令息って言った?

 215:私が知らない方の名前は、匿名化されて聞こえますわ。プライバシーを守ることは大切でしょう?

 216:そもそもプライバシーガン無視の能力なんですがそれは……


「アナスタシア殿下、お聞きください!」

「貴方は、ユリウス、それにセレナまで……何をしに来ましたの?」

「殿下は以前、身を清めてから出直せとおっしゃいました。──ですから今日、こうして参りました」

「私の病は、色街で不貞を働いて貰ってきたものではありません。ドレイク・グランヴァルトに呪いをかけられたものです」


 217:ファッ!?

 218:マジで断罪始まってて草

 219:流石パーフェクトお嬢様だぁ……

 220:宰相息子くん病気だったのか

 221:つーかさっきから掲示板の形式おかしくない?

 222:コンパクトで見やすいだろう? 俺のハッキング系チートのおかげだ

 223:知らねーよ、そんなの

◇224:流石貴族の出るパーチーだな、料理もめちゃくちゃ上手いぜ。お菓子はクソまずいけどな。


「ユリウス、何をふざけたことを!」


「ドレイク、黙りなさい。……そこまで言うなら証拠はあるのでしょうね?」


「もちろんです。こちらが証拠です」


「これはたしかに、ドレイクがユリウスに呪いをかけたことを証明しているな」


「「おお」」


「なんてこと……ドレイク、あなたとの婚約はここで破棄いたしますわ」


 225:ファッ!?

 226:婚約破棄も起きてて草

 227:これは珍しいですわ! 婚約破棄の中でも、保身のための婚約破棄! なかなか遭遇できるものではありませんわ!


「そしてユリウス、私の早計をお許しください。改めて、私との婚約を──」


「お気持ちはありがたいのですが、私は、私を救ってくれた方と婚約することに決めました」


 228:あ

 229:これは……

 230:素晴らしいですわ! 婚約破棄から復縁、復縁拒否のコンボ、さらには第四王女との婚約発表につなげるなんて! 芸術点が高すぎますわ!

 231:言うとる場合か! 要するに第四王女が完全に寝取られるってことやろ!

 232:イッチ! 何をやってるんだ!

◇233:エスカルゴ初めて食ったけどうんまいなぁ!


「その方の名前は──」

「お待ちなさい、ユリウス。今度こそ貴方に恥をかかせないためにいいますけど、そもそも貴方を呪殺しようとしたのは、セレナですわ」


 234:ファッ!?

 235:流れ変わったな


「まさか!? 彼女がそんな事をするはずが──」

「本当のところ、貴方が潔白だというのも、その証拠を掴んだことも知っていましたのよ。でも私から言うのも野暮でしょう? ですが、こうなってしまっては黙っているわけにはいられませんもの」


 236:第四王女ちゃん、信じてたのに……

 237:お待ちなさい! これは、第一王女の陰謀ですわ! 彼女、ただの悪役令嬢かと思いましたが、なかなかやりますわねぇ!


「……ご覧なさい、これが動かぬ証拠ですわ」


「この証拠はたしかに、セレナ殿下とドレイクが通じていた事を証明しているな」


「「おお」」


 238:何がおおだよ


「セレナ? 何か言うことは?」


 239:まずいですわ! このままでは第四王女が破滅してしまいますわよ!

 240:イッチ、何しとるんや! 王女ちゃんが断罪されてまうぞ!

◇241:え? 何? 断罪? ああそうか、準備してきた断罪ネタだよな? 話聞いてなかったけど、適当なやつ断罪しとけばええんよな?

 242:それだ! それしかない! とにかく場を荒らしてまえ!

 243:つーか話聞いとけ!


「あっ、お姉様。この度は結婚おめでとうございます。たしか今度はドレイク様と結婚なさるんでしたよね」


 244:いや第四王女も話聞いてないんかい!


「──その婚約、ちょっと待った!」


 245:待ったならもう入ってますけど


「……え、何この空気、もしかしてもう誰かが断罪されてる? せっかく婚約する王女の断罪ネタ準備してきたのに」


 246:え? 第四王女の断罪ネタ?


「突然現れて、貴方は誰なのかしら? まぁいいわ、せっかくだから披露してもらおうじゃないの」

「エイン、君は一体……」


 247:マジで何なのこいつ?

 248:宰相息子も困惑していらっしゃる

 249:なぜメインヒロインを断罪しようとしているのか


「あっそうですか、それじゃ失礼して」


「俺は、第一王女、アナスタシア・ドラン・エルディスがユリウス・ヴァレンシュタインの殺害を計画していたことを、ここに告発する!」


 250:あれ?

 251:なんか断罪相手違くね?

 252:いや、今回に限っては正解だろ


「ほら、これが証拠だ!」


「この証拠はたしかに、アナスタシア殿下が、ドレイクと共謀してユリウスの殺害を計画し、更に、万が一計画が露呈した場合に備えてセレナ殿下に罪をなすりつけられるように偽の証拠も準備していたことを証明しているな」


「なるほど、アナスタシア殿下は、宰相の権力を手に入れたいと考えていたが、公明正大なユリウス殿ではそれが思うままにならないと感じ、次期宰相の座を狙っていたドレイクと共謀して、セレナ殿下という保険を得たうえで、ユリウス殿を亡き者にしようとしていたのだな」


「「おお」」


 253:何がおおだよ

 254:これは「おお」だろ


「ちょっとまちなさい! あなた、”婚約する王女”の断罪ネタを持ってきたといいましたわよね! 何でセレナじゃなくて私の断罪ネタを持ってきているのよ!」


 255:ほんまそれな


「えっ、あなたが第一王女だったの? ていうか今日は第一王女とドレイクって人の婚約パーティじゃなかったの? 失礼にならないよう、ちゃんと何のパーティか調べてきたのに!」


「今までの騒ぎを見ていないの!? ドレイクとは婚約破棄したばかりじゃないの!」


◇256:マジで!? 情報が古かったか!

 257:あーもうめちゃくちゃだよ


「あの……、皆さん、お話は終わりましたでしょうか……」


 258:ん?

 259:第四王女ちゃんどうした?


「わたくし、皆様にあることをお伝えしに来たんです」


 260:あっ

 261:ついに来たか

 262:NTRが完遂する……!

 263:やめろ! シトラス! その先を言うな!

 264:お静かに! 女の子の一世一代の告白ですわよ!

 265:寝取られ報告の告白なんていやだあああああああああああ!


「私は、ユリウス・ヴァレンシュタイン様との婚約を、破棄します」


◇266:え?

 267:あらまぁ

 268:どういうこと?

 269:言うことってそれだけ?

 270:続きはまだ? 音が聞こえてこないんだけど

 271:【厄介夜会】(ウォッチパーティ)の能力でしたら、既に解除いたしましたわ。彼女はこれから、とっても大切なお話をしますもの。お楽しみの時間はもう終わり。実況するなんて無粋でしょう?

 ここからはイッチさんだけに聞かせてあげましょう。今度こそ、ちゃんと彼女に向き合うのですよ。よろしくて?


    ◆


☽「私は、ユリウス・ヴァレンシュタイン様との婚約を、破棄します」


 「セレナ殿下……どうして……?」

 「一体どういうことだ?」


☽「ユリウス様。あなたは、わたくしを救ってくださいました。正しく、丁寧に」


☽「あなたと結婚すれば、きっとわたくしは幸せになれるでしょう。あなたは私を守ってくれるから」


 「それなら、なぜ婚約破棄なんか……?」

 「ヴァレンシュタイン家の縁を、自ら断つというの……?」


☽「でも、それでは──わたくしは一生変わることが出来ません。ずっと、不自由なまま」


 「落胤の王女が、なにをいっているんだ……?」


☽「誰かに憧れるだけじゃ駄目なんです。誰かに守られるままでは駄目なんです」


 「卑しい生まれのくせに、王族として扱ってもらえるだけ、ありがたいとは思わないのかしら?」

 「ここへきて感情論、ですか」


☽「だから、婚約はお受けできません」


 「そんな理由で婚約破棄をするというの……?」

 「ユリウス様にも迷惑をかけて、なにがしたいのかしら」

 「ヴァレンシュタイン家も、とんだ災難ですわね」


 「……セレナ、あなたは自分の立場を──」


☽「嫌です」


 「なんですって!?」


☽「立場に縛られるのはもう、やめたんです」


 「名ばかりとはいえ、王族貴族ともあろうものが、何を戯言を言っているのかしら」

 「きっと、ろくなことになりませんわよ」


☽「今までは、ずっと良い子でいましたけど」


 「そのまま大人しくしていればよかったのにねぇ」


☽「本当はわたし、──わがままなんです」


 「わがままというより、ただの錯乱だろう」

 「結局、彼女は何がしたかったのかしら?」


◇「……」


◇「カッコカワイイ宣言だ……」


    ◆


 バルコニーに、夜風が流れ込んでいた。

 喧騒は遠く、音楽もいつの間にか止んでいる。石造りの手すりの向こうには、王都の夜景が静かに広がっていた。


 ユリウスとセレナは、並んで立っていた。


「……ごめんなさい」


 先に口を開いたのは、セレナだった。


「最初から、こうするつもりだったんです」


 ユリウスは少しだけ目を伏せた。

 それから、静かに笑う。自嘲ではなかった。痛みを飲み込んだあとに残る、どこか清々しい笑みだった。


「構いませんよ。王女殿下に振られるのは、慣れておりますから」


 冗談めかした言葉だった。

 だが、そこに責める響きはなかった。


「それより、あなたこそ。今夜の選択は、簡単ではなかったはずです」


 セレナは手すりに指先を乗せた。石は冷たい。

 身勝手な理由だと、自分でも分かっていた。貴族としても、王女としても、きっともっと賢いやり方はあったのだろう。


「後悔はしていません」


 声に出すと、思ったよりも軽かった。


「誰かの言いなりになって、傷つかない場所に置いてもらうより……自分で選べないまま生きるほうが、ずっと嫌ですから」


 ユリウスは黙って夜景を見ていた。

 その横顔からは、感情が読めない。けれど、しばらくして彼は小さく息を吐いた。


「一つだけ、聞いてもいいですか」


「……はい」


「あなたは今夜、わざわざこの場で婚約破棄をした。ですが、本当はその必要はなかった。私だけに、たった一言断れば済む話だったはずです」


「それは……申し訳ないと思っています。でも──」


「でも、あなたがそうしたのは、見てもらいたい方がいたから、でしょう」


 セレナは言葉を失った。


「そして、それは私ではないのですね」


 短い沈黙が落ちた。

 ユリウスは答えを求めなかった。もう分かっているのだろう。だからこそ、セレナも何も言えなかった。


 やがて、彼は静かに口を開いた。


「困ったことがあれば、どうか遠慮なく頼ってください。あなたとの約束は、形を変えても守れます」


 そこで初めて、ユリウスはセレナを見た。


「……そう言うくらいは、許されるでしょう」


 セレナは深く頭を下げた。

 彼はそれを静かに受け止め、引き留めなかった。


 ユリウスはバルコニーを後にした。

 役目を終えた者のような、迷いのない足取りだった。


    ◆


 しばらく、セレナはその場を動けなかった。

 夜風が頬を撫でる。熱を冷ますようで、それでも胸の奥までは届かなかった。


「セレナ!」


 振り返ると、エインが立っていた。

 礼服は少し着崩れている。あの騒ぎの中心にいたはずなのに、顔だけはいつも通りだった。


「良かった。そこにいたんだ」


 何も変わらない声だった。

 けれど今は、その変わらなさが少しだけ怖かった。


「あの、俺さ」


 エインは言いかけて、止まった。

 珍しいことだった。何かを探しているような、言葉を選んでいるような、ぎこちない間があった。


「エインさん」


 セレナが呼ぶと、彼は黙ってこちらを見た。


「改めて、あなたに伝えたいことがあるんです」


 一度、深く息を吸う。

 逃げないために。誤魔化さないために。


「エインさん、わたしは、貴方のことが好きでした」


 声は、思ったより落ち着いていた。


「ですが……本当に好きだったのは、理想のわたし自身です」


 エインは何も言わなかった。


「自由で、立場に縛られない貴方の姿に、自分を重ねていただけでした。貴方のことを知ろうとも、理解しようともしていなかった」


 言葉にするたび、胸の中に積もっていたものが形を失っていく。


「わたしは、貴方のことなんて、何も見ていなかったのです」


 夜風が一度だけ吹いた。

 セレナは目を伏せる。


「……ごめんなさい」


 それが、ずっと言わなければならなかった言葉だった。


「今日は、それを貴方にお伝えしたかったのです」


 もう十分だった。

 そう思って、セレナはエインから目を逸らした。


「……では、これで」


「待ってくれ!」


 背中に、エインの声が刺さった。


「俺もなんだ!」


 セレナは足を止めた。


「俺も、セレナのことを今まで知らなかった! 知ろうともしなかった!」


 声が少し上ずっていた。

 けれど、ふざけているわけではなかった。


「でも気づいたんだ! 本当は、俺は! セレナのことを知りたかったんだって!」


 エインはそこで一度、息を吸った。


「だから──」


「まずはお友達からでお願いします!」


 セレナは目を見開いた。


 告白でも、謝罪でも、誓いでもなかった。

 それなのに、その言葉は不思議と、どんな甘い約束よりもまっすぐ届いた。


 エインは悪びれた様子もなく続ける。


「だって俺達、今日が、“初対面”だろ?」


 夜景を背に、エインが立っていた。

 まっすぐ、こちらを見ている。


 黒い瞳が、青い瞳を映していた。


 セレナは、ほんの一瞬だけ迷った。

 それから、まっすぐにエインを見返す。


「……私も、今度こそ貴方のことを知りたい」


 彼女は少しだけ息を吸った。


「こちらこそ、よろしくお願いします!」


    ◆


◇314:名無しの元引きこもり

 なんか一緒に遊びに行くことになった


 315:名無しの純愛主義者

 脳が回復する

次回、デート!デートですわよ!

ブラックなコーヒーをご用意なさいませ!

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