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20-1 どうせなら金を賭けて謎を解け

【悲報】財布落とした


◇1:名無しの元引きこもり

 ホテル代払えない、詰んだ。このままだと犯罪者になってしまう!


 2:名無しの転生者

 お前は元から犯罪者だから気にするな


 3:名無しの転生者

 いつもみたいに造幣すればいいじゃん


◇4:名無しの元引きこもり

 >>3

 だから、財布を落としたって言ってるだろ。無理なんだよ


 5:名無しの転生者

 どういうことだよ


◇6:名無しの元引きこもり

 正確には、造幣スクロールを無くしたんや。

 ほら、財布って結構重量あるしかさばるやろ?

 スクロールならペラ紙一枚で済むから財布として持ち歩いてたんや、会計のときに錬成すればいいからな。


 7:名無しの転生者

 えぇ……


 8:名無しの転生者

 店員の目の前で贋金作るって頭おかしいだろ


 9:名無しの転生者

 金ないなら結局どうすんの?服役する?


◇10:名無しの元引きこもり

 >>9

 するわけ無いだろ。

 誠に遺憾ながら仕事をしてお金を稼ぐことにしたよ。


 11:名無しの転生者

 おお


 12:名無しの転生者

 えらい


 13:名無しの転生者

 ついにニート脱却か


 14:名無しの転生者

 仕事場はもう決めたの


◇15:名無しの元引きこもり

 >>14

 カジノ


 16:名無しの転生者

 何故にカジノ?


 17:名無しの転生者

 学生なのによく採用されたな


◇18:名無しの元引きこもり

 >>17

 いや採用されてないよ、客としてカジノに行ってるから


 19:名無しの転生者

 は?


 20:名無しの転生者

 仕事ってギャンブルのことかよ


 21:名無しの転生者

 もっと真面目に働け


◇22:名無しの元引きこもり

 >>23

 ホテル料金クソ高いのにちまちま稼いでなんかいられないやろ、

 小銭は少し残ってるからこれを元手に一発逆転や!


 23:名無しの転生者

 うーんこの


 24:名無しの転生者

 完全にギャンブル中毒者の思考


 25:名無しの転生者

 そもそもギャンブル経験無いならやめとけ


◇26:名無しの元引きこもり

 >>25

 賭ケ○ルイとかカ○ジとか嘘○いは読んだことはあるから大丈夫!


 27:名無しの転生者

 それは経験って言わねぇよ


 ……


◇150:名無しの元引きこもり

 勝った!、銀貨1枚が金貨5000枚に化けた。

 いやー、働いて金を稼ぐのもたまにはいいね


 151:名無しの転生者

 ファッ!?


 152:名無しの転生者

 嘘やろ?


 153:名無しの転生者

 稼ぎスギィ!


 154:名無しの転生者

 初心者がよくそこまでやれたな


◇155:名無しの元引きこもり

 >>154

 言ったやろ経験あるって。

 参考書読んどいてよかったわ


 156:名無しの転生者

 参考書……ギャンブルマンガ……あっ(察し)


 157:名無しの転生者

 イカサマかよ


◇158:名無しの元引きこもり

 せや、魔法でチョチョイのちょいや


 159:名無しの転生者

 ガッツリ犯罪やんけ


 160:名無しの転生者

 服役しろ


 161:名無しの転生者

 犯罪者になりたくないから金稼いでんじゃないのか?


◇162:名無しの元引きこもり

 いいんだようちの国だと元々カジノは非合法だから、

 それにバレなきゃイカサマじゃないんだぜ


 163:名無しの転生者

 なおさらあかんやんけ!


◇164:名無しの元引きこもり

 お、換金しようとしたら金額多いからってVIPルームに案内してくれるみたいやな。

 サービスええなぁ


 165:名無しの転生者

 あっ


    ◆


「つまり、こういうことか?」


 少年が口を開いた。


「俺は身の潔白を証明しない限り、ここから帰れないと」


 オーナーは、ゆっくりと指を組んだ。


 その動作は、獲物を前にした猟師のように慎重で、冷徹だった。


 口元には薄い笑みがある。

 だが、その目は笑っていない。


Exactlyそのとおりでございます


 低い声だった。


「あんたには、自分がイカサマ師でないことを証明してもらいたい」


 少年は、オーナーの視線から逃れるように部屋を見回した。


 薄暗い部屋だった。

 窓はない。換気口すら見当たらない。

 扉には鍵がかけられ、出入り口には屈強な警備員が二名、腕を組んで無表情に立ちふさがっている。


 テーブルの上には、使い込まれたトランプの山。

 そして、白いチップが積まれた皿。


 一枚が、金貨百枚分。


 少年は、再び目の前の男へ視線を戻した。


 カジノのオーナー。


 獣のような目をしている。

 獲物を見定める、研ぎ澄まされた視線。


 空気が、重い。


    ◆


 オーナーの脳裏に、数時間前の報告がよぎる。


 最初、店側はこの黒髪の少年を、ただの冷やかしと判断していた。


 資金も少ない。服装も粗末。

 どうせ数ゲームで負けて、すごすごと帰るだろう。

 むしろ常連客と協力し、早めに負かして追い返す方が効率的だ。


 そう考えていた。


 しかし、少年は勝った。


 何度も。何度も。何度も。


 最初は銀貨一枚程度だったチップが、気づけば金貨に変わっていた。

 そして金貨は、数十枚に。数百枚に。


 フロアスタッフは困惑し、常連客たちは苛立ち、やがて誰もが同じ結論にたどり着いた。


 こいつ、何かやっている。


 イカサマだ。

 間違いない。


 だが、手口が分からない。


 カードに細工をした形跡はない。

 袖への隠し札もない。

 怪しい動きもない。

 仲間の合図もない。


 それなのに、勝ち続ける。


 このまま放置すれば、店は大損だ。


 オーナーは即座に決断した。


 金額が大きいので、という理由をつけてVIPルームへ呼び込む。

 そして、ここで決着をつける。


 罠を張る。

 逃がさない。


 オーナーは、にやりと笑った。


    ◆


「しかし、証明しろと言われても、どうしろっていうんだ?」


 少年が訊ねた。

 口調は落ち着いている。焦りは見えない。


「簡単だ」


 オーナーが答える。


「あんたが俺とポーカーで勝負すればいい」


「どういうことだ?」


「あんたがイカサマをしていないと言うなら、先ほどの連勝はあんた自身の腕前によるもの。つまり、俺以上の腕前のはずだ」


 間を置く。


「であれば、今よりさらに金額を増やして換金できるだろう」


 そこで、オーナーの声が冷たさを増した。


「だが、もしあんたがイカサマをしていたというのなら、あんたは確実に負ける。イカサマを見破られるのか、あるいはイカサマを使えないせいなのかは知らないがな」


 オーナーは淡々と続けた。


「そして言っておくが、イカサマがバレたらチップはすべて没収だ」


 少年は、少しだけ笑った。


「いいだろう。俺の腕前を見せてやるよ」


    ◆


 オーナーがカードを取り出し、勝負の準備が始まった。


 その様子を見ながら、少年が口を開く。


「ところでオーナーさん。コンコルド効果、いや、埋没費用効果って知ってるか?」


 オーナーの目が、すっと細められた。


「こんな商売をやってるからな。もちろん知ってるぜ」


 指先でカードの角を整えながら、オーナーは続ける。


「一度負けが立て込むと、無理に取り返そうとする心理のことだろ。それがなんだ?」


 少年は、ゆっくりと顔を上げた。


「あんたらは今、まさにそういう状況じゃないですか」


 間を置く。


「このまま勝負しても“絶対に負ける”のに、“勝てるだろう”と思い込んで、俺に勝負を仕掛けている」


 そう言いながら、少年はテーブルに置かれていたトランプの束を手に取り、オーナーへ差し出した。


「何のつもりだ?」


「ゲームの前に、ちょっと試したいことがあるんだよ」


 少年は、軽い口調で答える。


「そのカードを切って、何枚か引いてみな」


「何をしようというんだ?」


「当ててみよう」


 少年の目が、鋭く光った。


 オーナーは、黙ってカードをシャッフルした。それから、一枚、また一枚とカードを引いていく。


「左端から」


 少年が、淡々と口を開く。


「♡の六、♤の五、♢のクイーン、♤のジャック」


 次々と。


 一枚の狂いもなく。


 オーナーの手が止まった。


「……!」


 動揺が、その表情に浮かぶ。


 少年は、にやりと笑った。


「俺の“目”は特別製でね。簡単にイカサマで勝てると思わないことだな」


 オーナーは、しばらく沈黙していた。


 そして、ゆっくりと口元を歪める。


「いいね。燃えてきたよ」


    ◆


 テーブルに、白いチップが積まれる。


 一枚が、金貨百枚分。


 少年、五十枚。

 オーナー、五千枚。


 全財産と店を賭けた勝負が、始まった。


    ◆


 オーナーは、まず少年のイカサマを見抜くことに集中した。


(あの“特別製の目”……警戒しなければ)


 最初から仕掛ける必要はない。まずはイカサマなしで、相手の観察に徹する。


 オーナーがカードを配る。


 パラパラと、乾いた音がテーブルに落ちた。


 視線を上げ、少年を観察する。


(……)


 動きに不審な点はない。


 カードの持ち方、視線の動き、呼吸のリズム。すべて自然だ。


 だが、少年のプレイは明らかに素人だった。


 ベットのタイミングが遅い。迷いがある。表情の作り方も洗練されていない。経験不足が、露骨に見て取れる。


 しかし、その判断だけは、的確すぎた。


 オールイン。


 少年が、上限までチップを賭ける。


 次のゲーム。

 少年は、フォールド。


 その次も、フォールド。


 そして、オールイン。


 まるで、相手の手札を知っているかのようだった。勝てる時だけ賭け、負ける時は降りる。


(なぜだ?)

(なぜ、この手札でオールインができる?)

(なぜ、このタイミングでフォールドできる?)


 オーナーは目を凝らす。


 カードへの細工はない。

 袖への隠し札もない。

 仲間との合図もない。


 強いて言えば、少年は時折、こちらの目を覗き込んでくる。


 だが、瞳に手札を映すような初歩的なミスはしていない。


 ゲームが続く。


 結果、少年の勝利が積み重なっていく。


 オーナーのチップは、じりじりと減っていった。


    ◆


 その後も、同じ流れが続いた。


 少年は的確にオールインとフォールドを繰り返し、確実にチップを増やしていく。


 オーナーは、判断を変えた。


(見抜けないなら、こちらもやるまでだ)


 イカサマ解禁。


 カードの積み込み。袖への隠し札。ディーラーとの合図。


 長年の経験で培った技術を、惜しみなく使い始めた。


 次のゲーム。


 オーナーは、袖に隠していたカードを引き抜こうとした。


 その瞬間。


「おっと」


 少年が、軽く笑った。


「その袖、飴ちゃんでも入れてるのかな?」


 オーナーの手が止まる。


(……!)


 少年は、まるで手口を知っているかのように言った。


 いや、見ていたかのように。


 オーナーは、引き下がるしかなかった。


    ◆


 次のゲーム。


 今度は、別の手だ。セカンドディール。上から二番目のカードを配る。


「あんたは指を折られたいのか? ドMなんだな」


 またもや、牽制が入った。


(こいつ……)


 オーナーの額に、じわりと汗が浮かぶ。


 手口を知っている。いや、それだけではない。


 やる前から、分かっている。


 まるで、こちらの思考を読んでいるかのように。


    ◆


 結果として、イカサマは封じられた。


 オーナーのチップは、さらに減っていく。


 呼吸が、わずかに荒くなった。


 焦りが、胸の奥で燃え始めている。


    ◆


 やがて、チップの枚数が逆転した。


 オーナーは、冷静に思考を巡らせようとする。


(このままではマズい)


 焦りが胸の奥で燃え上がる。チップの山が、じりじりと削られていく。このままでは、本当に店ごと持っていかれる。


 だが同時に、別の感情も湧き上がっていた。


 興奮。


(こんな勝負は)


 オーナーの唇が、かすかに歪む。


(この店を奪ったとき以来だ)


 あの時の感覚が、蘇る。


 全てを賭けた死闘。勝てば天国、負ければ地獄。ギャンブラーとしての血が、嫌でも沸き立つ。


 オーナーは、思考を加速させた。


(なぜ、手札が分かる?)

(なぜ、こちらのイカサマが分かる?)

(しかも、手口まで)

(やる前から分かっているかのように)


 思考を読む?


(まさかな)


 オーナーは、その仮説を心の奥に留めた。直接的な証拠はない。


 だが、試す価値はある。

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