18-3
◇109:名無しの元引きこもり
というわけでなんとか解放されたわ
よかった、これでかいけつですね
110:名無しの転生者
あのさぁ……
111:名無しの転生者
全く解決してないが
112:名無しの転生者
将軍にお土産渡して帰っただけじゃねーか
◇113:名無しの元引きこもり
でも将軍は喜んでたよ、全くの無駄足じゃなかった
114:名無しの転生者
敵国を喜ばしてどうすんだよ
◇115:名無しの元引きこもり
どっちかつーと村に迷惑かけてる王国の方が敵やろ
なので将軍の言う通り王国軍を撤退させます
116:名無しの転生者
思い切りが良すぎる
117:名無しの転生者
ナチュラルに祖国裏切ってて草
118:名無しの転生者
今までも似たようなことやってたし今更だろ
◇119:名無しの元引きこもり
みんなも一緒に撤退させる作戦考えようや!
ワイ軍事には詳しくないから流石に作戦思いつかんわ
120:名無しの転生者
いつもみたいに精神魔法ブッパしてりゃ勝てるだろ
◇121:名無しの元引きこもり
>>120
御者さんが言ってたけどそういう直接的な攻撃はできんのや
帝国の攻撃と思われて戦争始まったら元も子もないからな
もっと平和的な方法を考えてよ
122:名無しの転生者
無茶言うな
123:名無しの転生者
ワイらだって軍事に詳しいわけじゃないんやぞ
専門家に聞けよ
124:名無しの天才軍師
ワイを呼んだか?
125:名無しの転生者
誰やお前
126:名無しの天才軍師
その名の通り天才軍師や! 今までの戦績は4003勝!
127:名無しの転生者
はえーすっごい
128:名無しの転生者
なんだかうさんくせーな
◇129:名無しの元引きこもり
軍師ニキ! ワイに作戦を教えてくれ!
130:名無しの天才軍師
今回の条件はややこしいで
攻撃せんと追い出せん、でも攻撃したら戦争になる
──せやから、“たまたま起きた不運”に見せかけて、敵にダメージ与えるんが正解やな
131:名無しの転生者
なるほど
◇132:名無しの元引きこもり
サンガツ!
早速作戦思いついたで!フレッドにも相談してみる!
133:名無しの転生者
はえーな
◇134:名無しの元引きこもり
却下された
135:名無しの転生者
はっや
136:名無しの転生者
どんな作戦?
◇137:名無しの元引きこもり
>>136
最近盗賊団を捕まえて自首させたやろ?
そいつらを呼び戻して王国軍にぶつける作戦
138:名無しの転生者
あのさぁ……
139:名無しの転生者
ガチの内乱罪じゃん
◇140:名無しの元引きこもり
フレッドくん曰く悪い事してない兵士に戦わせるのはあかんって
そこまで気づかんかったわ
141:名無しの転生者
気づけよ
142:名無しの天才軍師
別に人的損傷に拘る必要はないやろ
兵糧とかのインフラを攻撃する手もあるぞ
◇143:名無しの元引きこもり
なるほど!
また思いついたで!フレッドに相談してみるわ!
144:名無しの転生者
はっや
◇145:名無しの元引きこもり
却下された
146:名無しの転生者
はい
147:名無しの転生者
今度は何?
◇148:名無しの元引きこもり
こないだ動物に感染する精神魔法を開発したんや
それでバッタを操って辺り一帯に蝗害を起こす作戦
149:名無しの転生者
ヒェッ……
150:名無しの転生者
最悪すぎる
◇151:名無しの元引きこもり
フレッドくん曰く村の畑も全滅するからだめだって
そこまで気づかんかったわ
152:名無しの転生者
気づけよ
◇153:名無しの元引きこもり
インフラもだめならどうすりゃええんや!?
軍師ニキも考えてや!
154:名無しの天才軍師
う~ん、あとは士気低下させるくらいやな
155:名無しの転生者
どういうこと?
156:名無しの天才軍師
なんでもいいから、兵士のやる気を下げて、脱走兵を大量に出すんや。
ちゅーても上官の命令に逆らわせるわけやから、よっぽどのことが起こらないと難しいけどな
◇157:名無しの元引きこもり
そう言われてもなぁ……
知識教えるだけじゃなくて作戦も考えてくれへんか?
158:名無しの天才軍師
えー全然わかんない
159:名無しの転生者
無能
159:名無しの転生者
使えねーな
160:名無しの天才軍師
そんなん言われても、ワイ軍事作戦とか考えたことないんだもん
最低限の知識は勉強したけど、作戦考えたりとかは無理やで
161:名無しの転生者
は?
162:名無しの転生者
こいつほんとに軍師か?
163:名無しの転生者
今までどうやって勝ってきたんだよ
164:名無しの天才軍師
そらワイのチートスキルよ。
【神風】っていうチートで、ワイが戦争に参加すると、必ず敵軍側に異常気象が起きて大打撃を与えられるんや。
165:名無しの転生者
えぇ……
166:名無しの転生者
天才軍師というより天災軍師だな
167:名無しの転生者
でもまぁ4003勝出来るんなら軍師としては有能だろ
168:名無しの天才軍師
あっ、それは変換ミスや
正確には四戦三勝やな
169:名無しの転生者
は?
170:名無しの転生者
しょぼい
171:名無しの転生者
大して活躍してないじゃん
172:名無しの転生者
なんでチートスキルあるのに一回負けてんだよ
173:名無しの天才軍師
>>172
給料上げてほしいから上官に文句言ったんやけど、それが戦争判定になったみたいでスキルが発動してもうたんや。
それで大地震が起きて、祖国が軍隊ごと壊滅。給料上がるどころか職場もなくなったのでワイの負け。
174:名無しの転生者
えぇ……
175:名無しの転生者
スキルの判定ガバすぎやろ
◇176:名無しの元引きこもり
う~ん、喉まで作戦が出かかってるんやけどなぁ
◆
エインとフレッドが村長の家に戻ると、玄関先で両親が待ち構えていた。
「どこに行ってたんだ!」
父親が怒鳴る。だが、その表情に滲んでいたのは、怒りよりも不安だった。
「心配したのよ……」
母親も、たまらず駆け寄ってくる。
フレッドは言葉を探すように視線を落とし、それから、ゆっくりと経緯を説明した。
王国軍に交渉しに行ったこと。追い出されたこと。帝国軍の陣地まで向かい、捕まり、尋問され、どうにか解放されたこと。
話を聞き終えた両親は、青ざめた顔で黙り込んだ。
「馬鹿者!」
父親が拳を握りしめる。
「敵国の陣地まで行くだなんて……無事だったからよかったものの……」
母親は、目元を押さえていた。
「本当に……戻ってこられなかったら……」
フレッドは短く頭を下げた。
「……ごめんなさい。でも、どうしても村を……なんとかしたくて」
ミリーが、不安そうに口を開く。
「じゃあ……どうするの? 兵士さんたち、追い出せるの?」
御者が腕を組んだまま、ぼそりと答えた。
「無理だな。王国軍も帝国軍も動かない。俺たちにできることは、何もない」
「そんな……」
ミリーの目に涙が浮かぶ。
その時だった。
「そうだ!」
全員が、はっとして振り向いた。
エインが立っていた。
目が、爛々と輝いている。口元には、獰猛な笑みが張り付いていた。
「いい方法、思いついたぜ」
居間に沈黙が広がる。
エインは、そのまま作戦の説明を始めた。
話を遮る者はいなかった。全員が、黙って耳を傾けていた。
やがて説明が終わると、ミリーが勢いよく声を上げた。
「すごい! これなら、あいつらを追い出せるよね!」
御者は呆れたようにため息をつく。
「……なんつーアホな作戦だ」
だが、それ以上の言葉は続かなかった。
その口元は、かすかに歪んでいる。
両親は顔を見合わせた。
「その作戦は……」
母親が言いかける。
「フレッドに、危険があるんじゃないか?」
父親も言葉を継いだ。
「もし魔法を使っている最中に見つかったら……それに、“伝令役”は誰がやるんだ。作戦が失敗したら、真っ先に関与を疑われるぞ」
その言葉に、誰も返事をしなかった。
場が静まり返る。
誰が伝令を担うのか。
その問いだけが、空気の中に浮かんでいた。
──と、その時。
「わしが、やろう」
扉の向こうから、落ち着いた声が聞こえた。
振り返ると、村長が立っていた。
いつの間にか、話を聞いていたらしい。
その顔に浮かんでいたのは、躊躇ではなかった。
「村長……」
フレッドの父親が声を漏らす。
村長は杖をつきながら、ゆっくりと部屋に入ってきた。足取りは確かで、まっすぐだった。
「村を守るのが、わしの最後の務めじゃ」
そう言って、周囲を一通り見回す。
「作戦の内容からしても、村長であるわしが“伝令役”をやるのが一番の適任じゃろう」
父親が何かを言いかけたが、村長は手で制した。
「案ずるな。わしはこの村で生まれ、この村で育った。この歳まで生きて、ようやく役に立てる場面が来た。それだけで充分じゃ」
誰も、口を挟まなかった。
◆
翌日。
村長は、王国軍の野営地を訪れた。
入口では、歩哨の兵士が槍を構えて立ち塞がる。
「止まれ。何の用だ」
村長は杖を突きながら一歩踏み出し、低い声で言った。
「この地で、気になることがありましてな。副団長殿に、どうしてもお伝えしたいことがある」
「気になること?」
「……この土地にまつわる話です。放っておけば、部隊に支障が出るやもしれませんぞ」
兵士は訝しげな表情を浮かべたが、やがて黙って頷き、奥へと引っ込んだ。
◆
しばらくして、村長はバルド副団長の天幕に通された。
天幕の出入口は開け放たれており、数名の兵士がやや距離を置いて見守っている。なかには、立ち止まって様子を伺う者もいた。
バルドは椅子に座ったまま、面倒くさそうに村長を見た。
「で? 何の話だ」
村長は、ゆっくりと頭を下げた。
そして、芝居がかった抑揚で語り始める。
その声は、わざとらしいほど丁寧で、おどろおどろしく響いた。
「もしや……副団長殿のお目当ては、あの山ではありませんかな?」
バルドの眉が、ぴくりと動いた。
「……機密事項だ。村人風情が詮索するな」
声に苛立ちがにじむ。
だが、村長は構わず続けた。
「──あの山には、古くからの言い伝えがありましてな」
周囲の兵士たちが、ざわめいた。
「言い伝え……?」
「山の呪い、って……」
「そんなもん、あるわけ……」
ひそひそと、囁き声が広がっていく。
村長は、さらに声を落とした。
わざとらしいほど芝居がかった調子で。
「むやみに近づこうとすれば……必ず災いが訪れる」
そこで、間を置く。
「“大切なもの”が失われ、最終的には命が奪われる……昔から、そう言い伝えられておるのです」
村長の喉の奥から、低い笑い声が漏れた。
「ふふ……ふふふ……」
バルドは椅子を蹴るように立ち上がった。
「たわけが。迷信などに構っていられるか」
声を荒げる。
「帰れ。話は終わりだ」
村長は軽く会釈し、踵を返した。
だが、天幕を出る間際、振り返って一言だけ残す。
「……忠告は、いたしましたぞ」
村長は背を向けたまま、ゆっくりと歩き出す。
その背中が、天幕の影に消えていった。
残された兵士たちは、互いに顔を見合わせる。
誰も、口を開かない。
妙な空気だけが、野営地の一角に重く沈んでいた。
◆
その日の夜。
月は雲に隠れ、あたりは闇に沈んでいた。
エインとフレッドは、茂みの中に身を潜めている。
王国軍の野営地は、しんと静まり返っていた。
見張りの兵士が、松明を片手に巡回している。
一人、また一人。足取りは緩く、時折あくびをする姿も見えた。駐留が長引き、気の緩みが出ているのかもしれない。
隣では、フレッドが固く息を潜めていた。
握った手のひらが、汗で湿っている。
「準備はいいか?」
エインが、小さく問いかける。
「うん……」
フレッドは短く頷いた。
声は、わずかに震えている。
その時、エインの懐の魔道具が淡く光った。
ヴォルフ将軍と連絡を取っていたスパイからの合図だった。
見張りの配置、巡回の間隔──すべてが共有されている。
エインは静かに頷いた。
「行くぞ」
見張りの隙を突いて、二人は闇の中へと滑り出した。
影から影へ。
足音を殺し、地を這うように進む。
スパイの手引きに従い、天幕の列のあいだを抜けていく。すぐそばから、兵士たちの寝息が聞こえてきた。いびきをかく声も混じっている。
やがて、バルド副団長の天幕の前にたどり着いた。
中は静かだった。
かすかな寝息が、布越しに漏れている。
エインとフレッドは、視線を交わした。
フレッドが頷く。
エインはそっと天幕の布をつまみ、音を立てずに持ち上げた。
中を覗く。
バルドが、寝台の上で横たわっていた。
深く眠っているようだった。
二人は、静かに中へ忍び込む。
そして──魔法を行使した。




