第二部 終
楽しんで頂けると嬉しいです!
「トーマには悪いけど、覚悟決めてもらわないとね」
無邪気に笑い部屋を出て行くノアを見送り、ノアとトーマ殿下が玉座の間に乗り込んた日から1週間が経った。
ノアは今もマザラさんと一緒に処理に追われている。疲れて夜遅く帰って来るノアの表情は清々しく感じた。
ノアがいない間、私は教会に通う日々を送っている。1人ではここに来れないので、ルード様とリリアについて来てもらっていた。
「お花のお姉ちゃん」
子供たちは会う度に表情が豊かになって行く。
ルード様もリリアも初めは戸惑っていたが教会にいる人々と話すようになった。
子供たちは私に抱きついてくれる。可愛らしくて私もお返しとばかりにギュッと抱きしめる。
「今日もありがとうございます。子供たちもナディアさんの虜ですね」
教会の奥からランベルト様が出てくる。女の子は笑いながら外で待ってると言って出て行ってしまった。
ランベルト様にダディム殿下と言うとまだ慣れないからと呼ばせてもらえなかった。
「ランベルト様。お邪魔しております。今日は登城の日ですよね。どうですか?慣れましたか」
ランベルト様は苦笑いをしながら私を長椅子に座るよう促し、その隣にランベルト様も座った。
「そうですね。取り敢えずは慣れました。まだ実感は湧かないんですが、国王陛下のお顔を見ると少し私がそのまま王子として育っていたらどうなっていたんだろうって思うんです。私は力無き人たちの力になりたいと思っています。でも、王子として生きていたら私は手を差し伸べてはいないでしょう。昔は自分が嫌いな時だってありました。なんでこんな人生なんだと。でも今は私はこの人生で良かったと思うんです。いいえ。私はこの人生で良かった」
そう、言い切ったランベルト様は素敵な笑顔をしていた。何か声をかけたくても私の言葉が浅はかに聞こえてしまう気がして、ただランベルト様を見ているだけしか出来なかった。
「実は当初トーマ殿下の申し入れを断ろうと思っていたんです。貴族の方とは会った事はないですが、助けて欲しい人々がいる事は分かっていてでも、見て見ぬフリをするのが許せなくて。でも、嫌な顔をせず子供たちと接して花を渡した貴女が美しくて、話してみないとその人の事は解らないって感じました」
「私はお花を貰えて嬉しかったんです。だから、喜んで欲しかった。でも、ランベルト様にそう思えて頂けて良かったです」
「えぇ。実際、トーマ殿下に会うと私に謝罪をしたんです。私の存在に気付けず申し訳ない。苦しんでいる人々を助けられなく申し訳ないと」
ランベルト様は慌てたように長椅子から立ち私に手を伸ばす。
「つまらない事を長く話しすぎましたね」
私は伸ばされた手を取り長椅子から立ち上がる。ランベルト様は私と繋いだ手を見ながら小さく口を開く。
「私がもし王子の生活を送っていて、ナディアさんと出会えていたら何か変わっていたんでしょうか」
「えっ?」
「あぁ、今の言葉聞かなかった事にして下さい。ただの戯言ですから」
寂しそうに笑うランベルト様はどこか儚げで綺麗だった。
「そうか、ナディアのおかげだね。トーマに褒美もらわないと」
「私は大した事してないよ」
いつもより早く帰ってきたノアに、今日ランベルト様と話した事を伝えた。
「ダディム殿下はいろいろと考え深いだろうな」
「そうだね」
ランベルト様はこれから笑って過ごす事は出来るのだろうか。
教会に居る人々は笑って過ごす事は出来るのだろうか。
「トーマがちゃんとやるから、心配しなくて良い。あれでも、未来の国王陛下になるんだから」
私が不安な表情だったのかノアが手を取り視線を合わせた。
「ナディア。ひと段落したから帝国に帰ろうか。この後の事はトーマとマザラでちゃんとするし。僕たちが呼ばれた理由は取り敢えず解決したからね。それにきっとまたすぐ会えるさ」
約3週間でいろんな事があったなって考えながらノアがずっと見つめるから恥ずかしくなり目線をずらした。ノアが握っている手に力を込めていた。少し痛いけど安心する。
「ねぇ、本当に僕の婚約者で良い?他の人が良いとかある?」
不安な表情で杞憂な心配しているノアが可愛いく思えてしまった。
「……そんなに自信ないの。私はノアが良いの。ノアじゃないとダメ」
「本当に?」
「本当に」
「じゃ、帰ったらすぐ婚姻しよう」
「婚約してすぐでしょ。早すぎよ」
「出来るだけ早く僕だけのナディアになって欲しい。……ナディアに触れたい。いい?」
熱のこもった瞳で見られたら、断る事は出来ず私は頷く。ノアの笑顔につられて私も微笑んだ。
ノアは私を優しく抱きしめる。
「ナディアありがとう。愛してる」
ノアの優しい口付けが降ってきた。
ウォール国を出国する日が来た。
海を見てはしゃいだ時が懐かしい。
ルード様と普通に話せたり、リリアと仲良くなったりすると思わなかった。
ノアに全てを話す事になるとは思わなかった。
お見送りにトーマ殿下とマザラさんが来てくれた。ノアも嬉しそうな顔を見て微笑ましくなる。
「ノアとナディアに女の子が生まれたら俺が婚約者になってやるよ」
「は?」
ノアはびっくりしてトーマ殿下をまじまじと見る。
「そんな事考えてたんですか」
「お前らの子だったら可愛いと思うし好きになれそうだ」
「いやいや。なんで?絶対やだよ」
「どれだけ離れると思ってるんですか」
「年なんて関係ない。それに。お互いの国が堅固になるし、一石二鳥だろ」
「そんな問題じゃないから」
「トーマはなんでも叶えちゃうから本当になるかもしれないですね」
「マザラ、変なこと言うなよ」
「ま、そんな冗談は置いといて。ノアお元気で」
「ノアまた何かあったら頼むな」
「あぁ!任せて」
3人のやり取りに思わず笑ってしまう。
ノアがルード様に呼ばれて先に行ってしまい、私もお礼を言ってノアの後を追おうとした。
すると、トーマ殿下とマザラさんが私のところに来た。
「ノアはなんでも1人で背負う癖があるので、気に留めてやってください」
「ナディア、ノアを頼む。俺たちは側にいてやれない。何かあったらすぐ連絡くれ。助けになる」
凄く羨ましく、自分の事のように嬉しくて笑顔になる。
「ありがとうございます。ノアは幸せ者です。こんなに思ってくださる方がいて下さって。私も負けてられませんね。私もノアを幸せにします」
満足そうな顔をしたトーマ殿下とマザラさんに頭を下げてノアの後を追おう。
「2人と何話してたの?」
「ノアを頼むって」
「そっか」
「……私を……」
出航する船の汽笛に私の声がかき消された。
ノアには聴こえていたみたいで、顔を赤くしている珍しいノアが見られた。
『私を一生離さないで。愛してるわノア』
読んで頂きありがとうございました!
第二部終わりました。
ありがとうございました!
おまけの話を続けようと思います。




