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第二部 6 ノアside

楽しんで頂けると嬉しいです!


「……わかりました。嘘みたいな話ですが私の人生なんです」


 ナディアの話を黙って聞く。

 最後まで話を聞くと、そう考えれば辻褄が合う事がある。

 ナディアの表情からは嘘だとは思えなかった。

 手が震えていて一生懸命に僕に伝えようとしている。

 無理矢理に話させた事を少し後悔する。

 こんな大切な事打ち明けるには、どんなに勇気が必要だっただろう。ナディアの人生はどんなに辛かっただろう。処罰を執行する役目は多くルードが請け負っている。だからあの時見たナディアは絶望をしていたのか。


「……あの時。ルードとの婚約を待ち望んでいたはずの君が、瞳が冷たくて全て諦めてるように見えたんだ。僕が守らないといけないと消えてしまうんじゃないかって思った」


 ナディアを自分の腕の中に閉じ込める。一歩引く体をさっきよりも強く抱きしめた。

 僕は君を離してあげられない。ナディアは誠意を持って話してくれた。僕はどうなのだろう。すべてを話すべきなのか。


「僕はナディアを信じる。でも、少し時間をくれないかな。……エルムの事も話したいから、整理させて欲しい。僕がナディアを愛してる事実は変わらないよ。大丈夫だよ。ゆっくりおやすみ」


 額に口付けを落としナディアの部屋から出る。

 トーマの部屋に行く為に中庭を通る。

 三日月が綺麗で足を止める。


(2人で見たいな)


 ナディアの話を思い出し自分に腹が立ってしかなかった。

 ナディアを救えた僕はいなかったんだな。ナディアは1人で苦しんでいた。今度はナディアを守りたい。

 僕はトーマの部屋へと足を進める。

 深呼吸をし扉を叩く。


「遅かったですね。ナディア様はどうでした」


 マザラが出迎える。部屋の奥にはトーマが椅子に座ってる。トーマは僕の変化に気付いたのか不思議な顔をしてる。


「ノアどうした」

「……エルムの事ナディアに話しても良いかな」


 2人の顔をゆっくり見る。


「好きにしろよ。俺は構わない」

「ノアが1番良いと思える選択をして下さい。私たちはいつでも貴方の味方です。ノアも私たちの味方でしょう」

「あぁ、勿論だよ。ありがとう」

「ノアは真面目に考えすぎだ。末弟は好き勝手やれば良いんだよ。それだけ、いろんな面倒ごと押しつけられんだから」


 マザラは呆れたような表情を向ける。


「トーマは好き勝手やりすぎです。後始末する私の身にもなってください」

「好き勝手するのは、マザラを信頼してるからに決まってんだろ」


 ニヤニヤ笑うトーマを嫌な顔をしてマザラは見て持っていた鞄に手を入れる。


「物凄く嬉しくないです」


 マザラはにっこり笑い仕事の書類1束を勢いよく机の上に置く。



 トーマの部屋にしばらくいて帰る途中、辺りを見回しているエマを見つけた。

僕の顔を見た途端に泣きそうな顔で話しかける。


「ノア殿下!」

「エマ?どうしたの。ナディアに何かあった?」

「ナディアお嬢様の姿が見えないのでノア殿下を探しておりました」


 エマの言葉を最後まで聞かず足がナディアの部屋へと向かう。


「ナディア!」


 やっぱり姿は見ない。あのまま1人にしたのは失敗だった。ナディアが心を落ち着かせる為に部屋から出たかも知れない。

 僕は中庭へと急ぐ。そこにも姿は見えない。奥まで行くと花壇の所から、三日月の光で何かが光ってる。


「……婚約指輪」


 息を切らしたエマの声が後ろから聞こえてくる。


「ノア殿下。私、騎士団の人に知らせて一緒に探してもらいます」

「ちょっと待って。それはダメだ。僕に考えがあるから君はナディアの部屋で待っていてくれないか」

「わ、わかりました。ナディアお嬢様をお願い致しましす」


 僕はトーマの部屋へと向かう。扉なんか叩いてる時間がもったいなくて、そのまま扉を開ける。

 まだ、仕事をしていたトーマが慌てた僕を見て椅子から腰をあげる。


「ノアどうした」

「ナディアがいなくなった。中庭に婚約指輪が落ちてた。だから……」


 婚約指輪をトーマに見せる。


「わかった。手を貸してやる。あのバカ女の仕業だろう。マザラの部屋行くぞ。詳しい地図があるはずだ」


 2人で急ぎマザラの部屋に行く。血相を変えた僕を見て驚き、状況を話すと冷静に話しだす。


「落ち着いてください。あのバカ女でも、殺す事はないと思います。それに動かせる兵はないはずです」

「いや、あるな。お香だか香水だか作っていただろう。変な奴らが出入していたと報告受けていたな。兵力にはならないと思って気にも留めなかった」

「お香か……。で、リーファ姫が使いそうな場所は?」


 お香と聞き嫌な予感がする。

 地図を開きマザラが考える。地図を指差す。


「こことここは小さな小屋があります」

「その場所じゃ疑ってくれって言ってるみたいなもんだ。こっちの小屋は兄上の管理だしな。」

「こっちの湖の倉庫は誰が使っても怪しまれないし、絶対朝には人が来る」


 中庭から1番離れている湖にある倉庫を指差す。


「確かにそうですね。しかも近くにはトーマが管理している屋敷があります。何かあればトーマに押しつけられますね」

「俺も舐められたもんだな」


 トーマは指を一回鳴らす。数名の黒い服装を纏った者が現れる。地図を何箇所か指を差す。


「黒部隊。今差した場所に行って誰かいないか確認してくれ。邪魔者は拘束して連れて来い」


 無言で頷き一瞬にしていなくなる。


「ノア、無事に見つかると良いいですね」

「お前が見出した奴らを信じろよ」

「うん。そうだね」


 しばらくすると、1人の黒部隊が戻ってくる。1人は僕の方を向き頭を下げる。もう1人はトーマに向かい頭を下げる。


「エルム様、お探しの方をお見つけいたしました。湖の倉庫です。意識はありません」

「トーマ様、近くにいた怪しい者も捕らえ例の場所に監禁しました」


 そう、報告するとすぐに姿を消す。


「ノア急げ。俺は怪しい奴のところに行く。責任を持って処罰する。行くぞマザラ」

「はい」


 僕はすぐに湖の倉庫へと向かう。

 外へ出ると黒部隊の1人が待っていた。


「エルム様こちらです」

「今はノアだよ」

「申し訳ございません」


 ナディアが心配でイライラする。名前なんてどうだって良いのに、ナディアに会うにはノアじゃないといけない気がする。


 僕は急いで倉庫へと着いた。

 黒部隊は倉庫を見張っているようで中を覗き込むと気を失っているナディアが横たわっている。

 中には3人の男がナディアを見張っている。

 男たちは今すぐ何かをするわけではないがナディアのそばにいる事が気に食わない。

 1人がナディアに何かを近づける。


「剣を」

「しかし」

「大丈夫だよ。殺しはしないから」


 剣を取り戸の前に立ち、思いっきり戸をぶっ壊し中に入る。一斉に3人がこちらを見て飛びかかってくる。

 基礎がなってない為、全然手応えがない。剣の柄で3人を気絶させて行く。


「汚い手でナディアに触るな」


 黒部隊が気絶させた3人を拘束し連れていなくなる。



 僕は倒れているナディアを起こす。

 見た限り、服も崩れてはいないし傷も付いてはいない。


「ナディア!」


 ナディアがゆっくりと目を開ける。安心して笑みが溢れる。


「ナディア良かった。どこか怪我はしてない?」

「貴方はどなたですか?」


 ナディアが起き上がれるように手を伸ばす。自分の聞き間違いかと思いそのまま手を出す。ナディアの表情がいつもと違う。


「自分で起き上がれます。お気遣いありがとうございます」


 僕の手を取らずに立ち上がる。ナディアは不安な表情で周りを見渡す。もしかしたらナディアは怒っているのかもしれない。


「ナディア。僕が分からないの」

「申し訳ありません。どこかでお会いした事あったんですね。ですが、私はルード様の婚約者です。ご無礼をお許しください」


 本当にナディアは僕を覚えていないんだ。ルードの婚約者だと思っている。何かを言わなければいけないのに声が出てこなくて苦しい。

 僕に見せたいろんな表情のナディアはここにいない。

 急に苦しみ出したナディアが倒れる。


「ナディア!」


 呼びかけるが反応が無い。一体ナディアに何が起きてるんだ。外に居た黒部隊に声をかける。


「リアン、これを持って先に行って医者をナディアの部屋に」

「わかりました」


 リアンにナディアの近くにあった壺を渡し、一瞬でいなくなる。

 僕はナディアを抱きナディアの部屋へと急ぐ。途中木の枝に手足を切った気がしたけど気に留めず足を動かす。

 さっきのナディアが嘘ならばどんなに良いだろうか。

 一度止まり、書面を書く。雑な文字になったがあいつなら読めるだろうと封をする。


「ビス、これをアランへ。早く頼む」


 名を呼ぶとどこからともなく現れたビスに書面を託しまた走る。


 空はオレンジ色に染まり太陽が昇る。



呼んで頂きありがとうございました!

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