攻略方法。チート敵と妹。
河部の発言によりあまりに残酷な事実を突きつけられた神鈴団は徐々にやる気を削がれていった。
しかし、健師はまだ完全に諦めたわけではなかった。攻略法を何とか考えだそうと頭を回す。当然、この思考の時間もゴーレムは攻撃を続ける。
電子レンジの画面に数字が映し出される。河部が全員に警鐘を鳴らす。
「これは…皆さん!何とかして水から脱出し管理庫に一時避難してください!!」
電子レンジ。それはマイクロ波を出して水分子を振動させ、温める方法。電子レンジで温まる理由である水分子の大量に含まれる水の中にいたらそれは自殺行為。第一、人間には水が含まれるのだから電子レンジの中に入ること自体が致命傷である。なので、全く別の世界である異世界管理庫の中に入るのは妥当と言える。だが、この異世界管理庫、自分専用の倉庫のため他のメンバーとの会話が出来ない。完全防音という便利な機能が災いしてしまっているのだ。つまり、ゴーレムの居場所に戻るタイミングは自分で考えなくてはならない。早すぎると一人で戦わなければならないし、遅すぎるとほかのメンバーに大迷惑をかける。まるでチキンレース。七人ともタイミングを見計らう。管理庫に入って三分経った頃だろうか。ようやく一人が先陣を切り、ゴーレムの居場所へ向かう。その一人は最年少の花音だった。
「…誰もいない。やっぱり早かったんだ…あれ、水が引いてる…ゴーレムもゴミの山に戻ってる…マイクロ波も出てない…?」
花音は理解する。よく考えたら入った時付いていた電気も一部消えている。ゴミ山と反対の方向にある入口の自動ドアのあたりを見ると、自動ドアの横の両サイドにあるものを見つけた。
「あれは…防犯ゲート?多分違うだろうけど…最初入った時は気づかなかったなぁ。」
防犯ゲートとは、家電量販店などによくある入り口の扉の両サイドに設置されている万引き防止のための機械だ。花音は推理する。ゴミ山はまだゴーレムになっていない。つまりこのゲートが自分たちのような「挑戦者」を検知する道具なのではないか、と。だが、何故か電気は一部であるが付いている。つまり、このゲートはゴーレムを動かすスイッチであるが、電気は別のセンサーで反応していると言うこと。
「…なぁるほど。そういう事だったんだ。」
花音は剣を取り出し、ゴミ山に向かい始める。花音は簡単な事だったんだと笑う。非常に簡単。さっきのドライヤー攻撃のとき、ドライヤーは壊れ、もうゴーレムの体にならなかった。つまり、壊れた家電はゴーレムの形にならない。手当り次第家電を壊していけば良いのだ。エアコン、パソコン、固定電話。こういう家電が真っ二つになっていく。その様子に花音は罪悪感を感じてしまう。でも、壊さなければ倒せない。ひたすら割っていく。ただ、当然ゴミ山になる程なのだから凄まじい数の家電がある。一人で壊すにはかなり時間がかかる。そのため100個ほど壊した時、途方に暮れ、諦めてしまった。すると、まるでやる気の入れ替わりのように戦闘態勢の瑠花が出てきた。
「ゴーレムー!!絶対倒すー…!!あれー?花音ちゃんしかいないー。ってー!!何この大量の壊れ家電ー!!」
「…それ、私が壊したやつです。瑠花おねーさん。」
「えー!?この量をー!?頑張ったねー!!」
瑠花は驚愕する。花音はその瑠花に向かってこれ程壊した理由を説明する。瑠花はそれならと家電を壊し始める。そして二人の努力もあり、ついに最後の一つ「冷蔵庫」を残すのみとなった。
「はあ、疲れたねー。」
「ですねぇ…壊しましょうか。」
そうして壊れた家電を避け冷蔵庫に2人が近づくと、池野が転移してきて「うぉー」っという声を上げ入口側に走り始め、ドア手前でくくっと止まり花音と瑠花の方向に走り始めた。不幸なことに、この池野の行動にゲートが完全に反応してしまった。付いていなかったライトが完全に付く。
これに花音と瑠花は肩を落とす。
「池野くーんー?何やっちゃってくれてるのかなー?」
「あ?瑠花?何言ってんだてめぇ。単純に転移して目の前に走っただけだろ?何がいけねぇんだ。」
俺はなんもしてねぇ、という顔で二人を見る。それを花音と瑠花がギロリと睨む。そして、冷蔵庫が浮き始め、小さな音を立てる。するとあたりの気温がどんどん下がり始める。
「ゴーレムじゃなくてただの冷蔵庫じゃん!」
「池野くんー。反省として倒してきてー。相手はせいぜい2度くらいまでしか下げられないよー?」
「アァ!!もう何が何だかわかんねぇんだよ!!腹立つからぶっこわーす!!」
池野が全力で立ち向かう。潰すように殴り、撃破した。これと共に気温が若干上昇し始める。
「ふー!!倒した!!」
「池野くんー。良くやったねー。」
「つーかなんでテメェらしかいねぇんだよ。」
この池野の声を皮切りにするように、健師、帳之、河部と南が出てくる。これにあきれるように花音が喋り始める。
「あのさぁ、なんで十五分も出てこなかったのよ。」
健師が答える。
「いやぁー、武器のメンテしちまった。」
「わたシはこの時間が妥当だと思った。それだけだ。」
健師のまさかの発言と帳之の適当な発言に花音と瑠花は先程の池野以上に肩を落とす。
「ほんとにすまなかったな。花音、瑠花ねぇ。あと池野もか?」
「池野くんはあまりかつやくしてないでーすー。」
「瑠花!!トドメ刺したのは俺だろぉがよぉ!!」
瑠花と池野で軽く喧嘩し始める。健師が間に入る。
「はいはい。喧嘩すんな。次の敵もやばいかも知んないんだぞ。」
「おにーちゃん。大口をたたくなら早く出てきてよね。」
花音の一言で健師が申し訳なさそうな顔をし、入口とは別の出口と書かれたドアに向かって歩き始める。次の敵の討伐に向かって。




