特異能力。霊媒と制裁。
帳之の右手には分厚めの本がはしっかりと握られていた。そしてその本を開き淡々とした口調で言った。
「裁きを受けよ。」
魔王は困惑する。当たり前だ。自分より圧倒的に小さい少女に「裁きを受けろ」なんて言われたら誰だって動揺する。そんな魔王を気にせず帳之は続ける。
「罪状はこの世界に必要のない存在にも関わらズやって来てしまったこと。『わたシ』の神よ。この者の罪を裁きによって許シ、死後の自由を与えよ。」
この一言で魔王は死んだ。あまりにもあっけなさすぎる最期であった。この現実に対し花音が低めの声で言った。
「…ねぇ、お兄ちゃん。魔王とかヤバそうな名前してるくせに弱すぎない?」
「異世界転移してきたやつに関しては河部が詳しいから河部に聞いてくれ。」
「簡単に申し上げますと、異世界転生や転移をした存在は良くも悪くもパワーバランスが崩れがちなんです。本人の意思に関係なく来た人は特に。」
この会話がされている間、瑠花は周囲の空気をうかがっていた。その様子を見た健師が聞く。
「瑠花ねぇ。『霊』はどうなってる?転生したか、残ったか。」
「…未練が強いみたいだから残ってるみたいだねー。もしかしたらこの先私達を邪魔してくるかもしれないねー。」
「だったらめんどくせぇな。除霊できねぇのか?」
「できることにはできるけどー、私たちから切り離すだけでこの世界には残留するから危険は残るねー。」
瑠花が除霊を始める。除霊の間、今回転移してきた連中のボスがこんなにも弱いため南はこれからの手下も弱いのではないかと余裕をかましていた。除霊の作業が終わる。
「除霊終わったよー。」
「さ!さっさと次の手下を倒しましょう!」
南が先行する。ほかの六人もそれに続く。廊下を歩き、階段を降り始める。一つ下の階につく。そしてその階で一際目立つボタンを押すタイプの自動ドアの前に立つ。これに対して帳之が話す。
「…ここには自動ドアが残ってるんだな。なんかここだけ扉が違うのおもシろいな。」
健師がドアのボタンを軽く押す。ウイーン、という音と共にドアがゆっくりと開き始める。真っ暗な部屋が広がってると思ったら、蛍光灯やLED、白熱電球が自動的に付く。目の前には捨てられてしまったような家電が山積みになっていた。
「…ゴミの山だな…ゴーレムはどこにいるんだ?」
健師が当たりを散策し始めた途端、洗濯機や電子レンジ、掃除機に冷蔵庫が整った形になっていく。仕上げと言わんばかりにモニターに顔が映し出され、とてつもない水流が発生する。
「ちょ、ちょっと!何よこれ!水が強すぎる!!」
南が甲高い声を上げている中、南が下手に動かず浮きつつ状況を分析する。ゴーレムの体を見回し、どこかにヒントになるようなものが無いか探す。そして、あるものを見つける。
「ねー!!みんなー!!多分これ洗濯機の力だよー!!洗濯機の『すすぎ』の所が光ってる!!」
それは、ゴーレムの右腕の先。ドラム式洗濯機のボタンのうち、すすぎの所だけが光っていた。そして、モーターの弱まる音が聞こえたと思ったら、左側からブォーっという轟音と共に高温の風が吹き荒れる。
「チッ。これはドライヤーかよぉ…」
池野が理解し、風の根源に向けて水かさが低くなっていく中泳ぎ、風の出ているであろう壁の穴に向かって大きく右腕を振りかぶり殴った。すると、ゴーレムの胴体の一部から火花がバチッと上がり、ドライヤーが下へ落ちる。しかし、ゴミの山から別の家電を取寄せ補強する。
「う、嘘だろ…まるで意味がねぇ…」
池野が衝撃の表情をあげると、河部がこの状況を簡単に言葉にする。
「…このゴーレム、恐らくさっきの魔王とは違うパワーバランスの崩れ方をしています!!」
その河部の発言は、この神鈴団以上のチート能力の持ち主を相手にしたこの状態で勝ち目は薄いことを明言することに等しかった。




