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アズール・ブレイブ・ファンタジー  作者: 白井御飯
第二章 紅炎の志
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2.追募:言語習得能力を向上させる方法

「それでこんなにボロボロに……」

 ゼスィリアに哀れみの目を向けられたルカは、返事もできないまま机の上に突っ伏していた。

 結局あの後本当に動けなくなるまでしごかれて、挙げ句の果てに「自力で立てないなら置いて行きますよ」と言われ、本当に置いて行かれて、しばらく訓練場で野晒しになっていたのだ。

 元々運動が得意でないが故に、そこまで体を動かすことが好きではなかったルカは、普段から積極的に運動をしない。どっちかというとインドア派なのだ。この間のヘルグリューン戦がどうにかなったのは、ほとんど火事場の馬鹿力と奇跡のおかげである。そんなところに、いきなりスパルタ式にあれこれ叩き込まれてみてほしい。撃沈するに決まっている。

「そんな貴方に悲報なのだけど」

 ゼスィリアは哀れみのこもった目でルカを見つめたあと、どすん! という重量感のある音を立てて、何かをルカの傍に置いた。

「『純粋な実力もですが、教養も足りなさ過ぎて、このまま公の場に出したら間違いなく我々が恥をかきます』……そう言って、トゥルースが用意していた座学の教本が、これよ」

 ルカは力なくそちらに目をやる。

 そこには、数えるのも嫌になるほどの教本の数々が、塔を作って高々と聳え立っていた。

 何故だろう。安全な場所に居るはずなのに、先日の崖下の絶望が蘇ってくる。

 それでもルカは、ここで負けるわけにはいかないと、なけなしの根性で教本の一冊に手を伸ばした。

 力の入らない指をどうにか持ち上げ、ぱら、ぱら、とページを捲り、そこに書かれている文字に目を滑らせる。

 そして、そっと本を閉じた。

 おかしい。見たくないものを見た気がする。疲労の影響だろうか。

 もう一度、ページをぱらりと捲って、ルカはそっと目を瞑った。

 どうやら、疲労による幻覚ではなかったようだ。幻覚であって欲しかった。

 だが悲しいかな、これは紛れもない現実だ。

 認めよう。認めざるを得ない。


 読めない。


 ルカは再度パタリと本を閉じ、そしてゼスィリアの方に顔を向け、問うた。

「……ゼスィリアさん」

「何?」

「これ、何語?」

「え? 神獣共用言語だけど……」

「……」

 澱みないゼスィリアの返事に、ルカは、自分の心を支えていた最後の根性が、ポッキリ折れたのを感じた。

 ……ちょっと考えてみれば当たり前のことなのだ。なのに、深く考えることをしなかった。そのツケが今、回ってきている。

 そう、ここは()()()()()()

 ()()()()使()()()()()()()()()()()()()のである。

 となると、当然、疑問となってくるのは。

「……何で、言葉、通じてるの?」

「……? 言葉は、通じるものじゃないの?」

「……?」

「……?」

 この行き違い、思ってたより大分やばいやつかもしれない。

 ルカはようやく、事態の重さを理解した。



 四苦八苦しながら何とか認識の擦り合わせを行った結果、わかったのは以下のようなことだった。

 神獣には、言語の壁という概念がない。

 というのも、どうやら神獣の言葉は、基本的に喋ると同時に相手の理解できる言語に変換されて伝わるようなのだ。逆もまた然りで、相手がどんな言語で喋っていようと、その相手の言いたいことを理解することが出来ると言う。言わば、耳と口に翻訳機能が備わっているようなものだ。

 一方で、文字の方は、記録を付けるために各々の種族が生み出したものなので、種族ごとに若干差異があるという。そして、各種族ごとに文字が違うと不便だということで生み出されたのが神獣共用言語なのだそうだ。ちなみに、ルカの為に用意された教本は全部この神獣共用言語で書かれていた。異文化の民であるルカに対するトゥルースのささやかな配慮だったのか、それとも最低限の教養くらい身につけろという嫌味だったのかは定かではないが、それ以前の問題だった事が発覚してしまったのでこの際それはもうどうでもいい。

 ルカは頭を抱えた。

 同時翻訳状態で言葉が通じる。

 それ即ち、本来この言語がどう使われ、どう話されているかという所から言語を学ぶことが出来ないということだ。

 発音は分からない、話し方も分からない、文字だけ学んで言語を覚えなければならない。

 ぶっちゃけ、普通の外国語習得より面倒である。

 ついでに、ここで再度、ルカの成績を思い出してみよう。

 英語の成績、3。

 採点方式、体育と同じ。

 関心・意欲・態度のみ、A。

 要するに、ルカの外国語習得能力は、けっこう低いということだ。

「……世界に……嫌われている……」

 ルカはもう、そうつぶやくのが精一杯だった。




 その後、ゼスィリアに教本を読んでもらうことで解決することにした結果、トゥルースの用意した教本の一冊目のタイトルは、「馬鹿でも分かる神獣共用言語」であったことが分かった。

 ただでさえ死に体のルカにぐっさりトドメの一撃がぶっ刺さってしまったのは、言うまでもない。

第一章一話で会話が微妙に噛み合わなかったのは、ゼスィリアの耳には「転移」も「テレポート」も同じ言葉に聞こえていたからなのでした。

同時翻訳の弊害ですね……。


久々の更新で申し訳ありません。第二章以降はこんな感じでポツポツと更新を続けます。よろしくお願いいたします。

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