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アズール・ブレイブ・ファンタジー  作者: 白井御飯
第二章 紅炎の志
15/18

1.急募:文系脳を脳筋に改造する方法

第二章、開幕です。

 国語が5、数学が3、理科が4、社会が5、英語が3。

 いきなり何だと思われただろうか。

 何のことはない、ルカの成績を5段階評価にしてざっくり平均したものである。

 計算が苦手で凡ミスで点を逃しがちな数学、文法に苦戦して全然英文が書けない英語は努力と根性でどうにか及第点を保っているが、国語は常に首位の成績。社会も歴史が好きなので割と良い成績がとれ、理科は物理・科学は苦手なものの生物・地学でどうにか盛り返してこの成績だ。

 多少の落差は見られるものの平均すれば4であり、何より授業態度が真面目なので、基本的に通知表に書かれる評価は高めである。苦手な教科は『関心・意欲・態度』でどうにかするスタイルだ。

 今までも、これからも、ただの中学生として生きるのなら、それで何とかなるはず、だった。



 ばちこーん!


 景気のいい殴打音が響く。

 からん、ころん、と、木剣が虚しい音を立てて転がっていく。


「この程度を捌けないようでは、御前試合で死にますよ」


 衝撃を捌ききれず、手の痺れに撃沈しているルカに、無慈悲な声が降り注いだ――。


***


 ゼスィリアがルカと契約を交わし、正式に『騎士』を得て、これで『皇継』争いに遅れきっていた『竜の国』はようやく一歩前進……と言うわけには、残念ながらいかなかった。

 何せ正式に『騎士』としての務めを果たすにあたって、ルカには問題が山積みだったのだ。

 まず常識がなってない。当たり前だ。人間の世界で生きてきたのだから神獣の常識など知るはずもない。

 次に学が足りない。先ほど述べた成績を見れば一目瞭然であるが、ルカが得意な分野は全部『人間の世界でしか通用しない常識』のもとに成り立っている。国語は言わずもがな日本語の学問であるからこの神獣帝国で通用するはずもないし、社会だって地理も歴史も地球のものだ。逆にこの世界でも通用する数学がとことん苦手。神術などの科学的にあり得ない要素はあるものの、基本的な物理法則は一緒なので役に立ちそうな理科もあんまり得意ではない。世界に嫌われているのだろうか。

 そして、これが一番致命的なのだが。

 先ほどの成績に付け加えよう。

 体育の成績は、3だ。

 あれである。『関心・意欲・態度』の項目だけ、常にAだった。

 他の項目は、平均的。

 これがどういうことがお分かりだろうか。



 ルカは、そこまで、運動神経が、よろしくない。



「本当に何で貴方が騎士なんですか」

「私が一番そう思います」

 一晩を経てとりあえずの形で(滅茶苦茶嫌そうだったが他になれる人もいなかったので仕方なく)ルカの師匠を務めることになったトゥルースは、そこそこの絶望とはっきりした侮蔑のこもった眼差しをルカに向けた。

「全く以て、間の悪い。どうしてよりにも寄って御前試合の直前に、現れてしまったんですかねえ、貴方は」

「そんなことを言われても……」

 ほろりとルカは涙をこぼす。

 『御前試合』。

 それは、皇帝候補として選ばれた『皇継』たちが、今の時点でいかに皇帝に相応しく研鑽しているか確かめるための試験の一つである。

 その名が示す通り、現皇帝陛下の前で、一対一で戦い、純粋な実力を競う催しだ。

 ただし、ここからが問題で、戦うのは『皇継』ではなく、彼らの懐刀である『騎士』の方なのである。

 つまり、『騎士』の実力がそのまま、『皇継』の評価に繋がるのだ。

 だというのに、当の『騎士』たるルカの実力がこれである。

 ただでさえ元から『皇継』としての評価が高くないゼスィリアがようやく引き当てた『騎士』がこれでは、余計にゼスィリアの評価が下がってしまう危険性があった。

 それでも、それでもだ。まだしっかりいろはを叩き込んでもらえる時間があったのなら、まだ良かったのだ。

 何と、こんなに鍛えがいのある状態のルカを放り込まねばならない御前試合は、よりにもよって一ヶ月後だったのである。

 この話を聞かされた時、ルカは頭を抱えたくなった。こんなところで生来の空気読み技術のなさが影響するとは、誰が予想できたであろう。トゥルースが『間が悪い』と吐き捨てたくなるのも無理もないことであった。

 トゥルースは盛大なため息をつくと、先ほど場外に吹っ飛んでいったルカの木剣を拾って、ルカに放ってよこした。木剣はルカの頭をどついた後、からん、と、虚しい音を立ててルカの前に転がる。

「……とにかく、起きてしまったことは仕方ありません。今のあなたにできることは、少しでもマシな愚図になることだけです。さっさと立ちなさい、もう一度やりますよ」

「はぁい……」

 トゥルースの辛辣な言葉に、ルカはよろよろと木剣を拾って立ち上がる。

 最もなことを言われているとわかっているからこそ、反論もできないのだ。

(根性、根性)

 自分にひたすら言い聞かせる。

 骨が折れても走れたくらいだ。厳しい鍛錬だって、耐えられるはず。

 そんな人に向けたらハラスメントまっしぐらな根性論で心を奮い立たせて、ルカはゆらりと木剣を構え直した。

第一章の無敵ぶりは何だったのかと突っ込みたくなるほどのボロボロっぷり。

第一章で解明しきれなかった謎も拾いながら、第二章を展開していけたらと思います。


ちなみにこの物語は、無茶な根性論を推奨しているわけではございません。何卒ご了承ください。

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