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03:THE GAME

 カガチ奴隷商会でイルシィ、ワンズ兄弟を引き取った俺は彼らと共にカガチの武器屋に来ていた。店内はかなり広い、アルターエゴの装備品や装甲車から戦車等の兵器も売っているからだ。といっても金のあまりもそうないので値段の張るものは買えない。俺は店員の商会で一番コスパのいい火薬「ブラウン3」を使った火薬製品。銃弾、爆薬、アルターエゴ用装備、イルシィ達に持たせる多機能ライフルを買った。


 イルシィ達に持たせる予定の多機能ライフルは立ったままでも十分持てるぐらいの重さであまり威力が高いようには見えなかったが店員曰く対アルターエゴでもこれで十分らしい。その他の製品についても定員から説明を受ける。イルシィは真面目に俺と一緒に聞いているがワンズ兄弟は戦奴隷としての経験が長いからかもう知ってるといった感じであまり真面目には聞いていなかった。


 ──ブオオオオオオオン!!


「敵襲、敵襲、防衛準備を開始しろ。カガチの傭兵はグライドの事務所に来い。みな速やかに行動するように」


 大音量の警報が鳴り響き、続いてグライドの音声が流れた。傭兵、そうだ俺も傭兵。敵襲への対処に呼ばれた。そういうことだろう。俺はイルシィ達に移動を開始すると伝えようと振り返る。イルシィ達の表情はさっきまでとはがらりと変わっていた。冷たく、殺気ごもった表情。慣れてないのは俺だけだとよく分かった。俺は「行くぞ」とだけいうと3人はそれぞれ購入した装備を持ち俺に追従し移動を始めた。



──────



 グライド親分の事務所につく。親分は険しい顔をしていた。いつもの余裕がない。俺が思っているよりも多分状況は悪いと察する。


「どうやら、来てくれたのはレンだけみたいだな」


「え? どういうことですか??」


「他の契約していた傭兵が5人居たんだが逃げたみたいだな。新たに契約してくれるヤツもいなかった。まぁ旗色が悪いし仕方ないといえば仕方ないが、傭兵は信用が第一だというのに」


「逃げた!? そんなに状況悪いんですか?」


「悪い、というか最悪だな。警備にあたらせてた正規兵のやつらは、カガチを裏切ったらしい。盗賊と共にカガチに進行中、裏切らなかった正規兵のやつらはもうそいつらに殺された」


「なっ、正規兵が裏切った!? というか待ってくださいよ。聞いた感じだと結構な規模なんじゃ……」


「まぁアルターエゴは最低でも20機は来るだろうよ。元から確認されてた盗賊団のアルターエゴが12機、裏切った正規兵のアルターエゴが8機だからな。正直ここまでの戦力差だとお前さんに戦えというのも心苦しい。命をかけろとは言わない。時間を稼いでくれ。このカガチが完全制圧されないよう。新政府の応援が来るまで、できるだけ持ちこたえてくれ」


「待ってくださいよ!! それじゃあ借金どうなるんですか!! 俺が命を賭けずに戦って危なくなったら逃げて、それで、それで街が制圧されちゃったら。グライド親分、きっと殺されちゃいますよね? そんなことになったら俺、借金も恩も返せなくなっちまう」


 親分は困ったような笑顔を見せる。そしてしばらく黙ったあと。


「真面目、いや、不器用だなお前さんは。分かった、なら賭けてみるか。お前さんにこのカガチの力全てをつぎ込む。全ツッパだ。アルターエゴを武器屋に持ってこい」


 俺は嫌だ。こんな歯切れの悪い別れは嫌だ。親分はいい人だ。悪い人でもなく、普通の人でもなくいい人だ。人間は3種類、さっき言った3種類でその殆どがいい人ではないと俺は思ってる。9割はそうではない、俺はそう思う。だが親分はその9割じゃない、だから、だからこそ俺が受けた恩は単なる打算とか利用じゃない。ただの善意だ。俺は、その善意に応えたい。踏みにじるような、適当なやつに俺は絶対になりたくない。



──────



「まさかまたここに来ることになるなんてな」


 俺はレッドアビスに乗り、俺が地獄送られた最初の場所に来ていた。モニターで景色を見る。壊れた建物、と銃弾そしてよく見れば。警備の砦だったことがわかる「カガチ警備砦」という看板があった。イルシィ達は親分からもらった装甲車に乗って、身を隠せられそうな瓦礫の影に隠れている。彼らは慣れている。状況を戦いのために整えていく。俺はそれを見て、戦いが始まるのだという実感をする。


 カッコつけたことを言ったが。俺がどこまでやれるかは分からないしおそらく俺は異常なんだろう。一日も経っていない。この街に来て、親分にあって奴隷を買って。命をかける絆なんてどこにもないのは明白だ。傭兵の信用というのも借金を踏み倒せば関係のないことだ。


 結局の所気に入らない、自分が適当になるのが、気に入らないだけだ。くだらないプライドと言えばそうなのかも知れない。けど俺はそれがとてつもなく気にらない。そして俺は自分のプライドのため、カガチで世話になった人のために戦う。そう決めた。ワンズ兄弟は不満そうに難しい顔をしている。巻き込んですまないと思いつつも俺は、自分を曲げる気はなかった。


「なぁイグル。俺たち死ぬかもなぁ……マスターがどれぐらい強いかしらないけど、俺たちだけじゃ絶対無理だし、恩義だなんだで生きられないっていうのにさ。前のマスターもいいやつだったけどそのせいで……」


「こらアウル!! 聞こえるだろうが!! 俺も思うことはあるが、もう始まっちまったこと、決まったことだ。全力をつくして生きる選択肢を勝ち取るだけだ」


「そうだな。それはそうとイグル、来たぞ、敵だ──」


 カガチから見て東からアルターエゴの集団がやってくる。確認できたのは25機、親分の話よりも多い。敵の装備は正規兵のものと思われるもので統一されていた。性能の保証された量産モデル。正規兵が盗賊に渡したのだろう。新政府と書かれた曲面のある追加装甲とマシンガン、それと斧、ハルバードのような近接武装をしている。


 速度は80kmほどか……俺のレッドアビスも通常の速度は80kmほど、瞬間的な加速は別だがおそらくスペックは盗賊たちと変わらない。レッドアビスはカガチ全体からの支援を受けて、サブエンジンと大きな武器コンテナを背に装備した。マシンガン2丁と金属製のブレード、グレネードランチャー、手榴弾、そして大量の火薬を詰めた爆弾。それが今のレッドアビスの武器。火薬を詰め込みすぎているからコンテナを銃弾が貫通したら爆発して終わりだ。


「おいおいおい!! なんだぁ? 一人だけかぁ? まぁでも予想通りほとんどの傭兵は逃げたみてぇだなぁ? そのアルターエゴを降りて降伏するなら生かしてやるぜぇ? ドルガン盗賊団に従わねぇやつは殺す。それがこれからのカガチのルールだァ!!」


 完全に盗賊団を目視できる距離に近づいた。盗賊の頭と思われるものの通信が入る。


「下品な声だな。悪いけど、いや悪くないか。盗賊団に情けは無用だしな。俺はお前らを殺す。殺して、俺のプライドを守らせてもらう」


「なんだとコラァ!? 誰が下品だ、俺はこれでも結構モテ──」


 俺は通信を切る。聞く必要はない、これから殺す人間のことを知って、動揺でもしたら俺の死ぬ確率があがる。まぁ聞いて殺意の方が高まりそうな感じではあるが。戦闘を開始する。そう戦闘、今度はゲームじゃなくて、本物の殺し合いだ。


「マスターレン、戦闘を開始します。エゴフィールド展開、イルシィ、アウル、イグル、を味方識別でエゴフィールド領域に。敵エゴフィールドとの衝突まであと12秒。敵の攻撃、来ます」


「エゴフィールド? よくわからんが、ワガママなほど強いんだろ? アルターエゴは、だったらとことんワガママになってやるよォ!!!!」


 敵がマシンガンを一斉に乱射する。音速を超える銃弾を避けるには通常、相手の射撃を予測し、自前に回避する。俺はいつも通り、予測、回避をする。相手よりも数段早い反応で。ジャンプと旋回を織り交ぜた3次元乱数機動を行う。ジャンプしてブースターで加速、反対方向への噴射で急減速、接地と同時にスライドステップ。加速度、Gの嵐……それを受けるはずだ。しかし、Gをまるで感じない。身構えていた俺は違和感を感じる。それだけではない。俺は、目を疑う。


「銃弾が……止まって、いや、遅いのか。止まって見えるほど……遅い!?」


 敵の乱射した銃弾がある一定を境にその動きを停止と見間違えるほどに急減速、いや、速度を失った。


「敵攻撃、エゴフィールド内に侵入。敵脅威レベル計測、レベル3、普通ですね。なのでマスターレンの相手ではありません。こちらの脅威レベルに気づかれる前に反撃を開始しましょう」


「意味の分からねぇ用語ばっか並べられてもな。だがまぁなんとなく、なんとなく分かったよ。今が攻め時だってことはなぁ!!」


 俺はレッドアビスを回避から前進運動に切り替え、敵集団に突進する。ブースターをフルパワーで可動させる。速度の計測器を見るとその速度は2134kmとある。はは、滅茶苦茶だな。一瞬で敵集団に接触する。そして俺は感じていた。敵の展開するエゴフィールドを。ああ、そうか、そういうことか。エゴフィールドってのは操縦者の強さだ。俺は強くて敵は弱い。俺が強いから弱い敵の銃弾は遅くなって、俺が強いから俺は異常に加速できる。そして敵エゴフィールド内に入った時、確かに感じた。こいつらは弱い、存在そのものが雑魚であると──



「な!? なんだあいつぁ!? 脅威レベル測定不能!? 意味わかんな──」


 マシンガンを乱射、その銃弾は音速なんて生易しいものじゃなくて、最早ビームだった。俺の後方から同じくビームのような銃弾が俺の銃弾と共に敵を貫く。イルシィとワンズ兄弟の援護だ。どうやら味方識別でエゴフィールド内に入れると仲間を俺と同じ領域で戦えるらしい。


「おかしいな、通信は切ったはずなんだけどな」


「エゴフィールド内ではお互いに精神的干渉を受けたりしますから。敵の強い心の声が聞こえたということです」


「なるほどね」


 俺はマシンガンをばら撒くように撃つ。その全てが正確に25機の敵アルターエゴを貫き。敵パイロットを絶命させた。無慈悲な圧倒的な戦力差。無感動な殺戮。これはゲームですらない。ただの作業だ。


「ミッションコンプリート。さぁ帰ろうか、みん──」


「──君、強いねぇ」


「──!?」


 寒気がする。敵は皆殺しにしたはずだ。だが声がした。それだけじゃない。声がすると同時にあの感覚、自分以外のエゴフィールドに入る感覚を感じた。寒気の感覚、強く感じた方向を見据える。黒いアルターエゴ、巨大なブースターを背負った。いかにも高機動で。俺はすぐに理解した。こいつはヤベェ──

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