02:カガチ奴隷商会
「で、傭兵って言っても何をやれば……え~っと……」
おっさんの事務所、おっさんは椅子い深く腰掛け、机に腕を置いている。俺の席もあるがあんまし座る気にはなれない。借金で落ち着く気分になれないから。
「ああ、そういやまだ名乗ってなかったな。俺はグライド・ギアー、このクソドバーの責任者、トップだな。そんで傭兵の仕事と言えばもちろん殺しだ。クソドバーの敵を殺してもらう。ここは火薬なら大量にあるから火薬は必要な分自由に持っていっていい。金は取らない。だがまぁ一人じゃキツイかもしれねぇな。ほれ、こいつをやる」
おっさん、グライド親分がポケットからシワクチャの札束を机に投げる。え……? 札束?
「え? その? このお金は?」
「お前さんとはそれなりに長い付き合いになってもらわないと困る。借金分はちゃんと返してもらいたいからな。だから準備不足、戦力不足になって死んだら困る。それで奴隷を買え、ちゃんと戦力になりそうなヤツ。戦力増強だ」
「え!? 奴隷!?」
奴隷!? そんなもんがあるのか? いや地獄って考えるとまぁありえるんだが。俺もついさっきまで普通の生活を送ってたわけで……はやく地獄に慣れないとな。
「そんな驚くことじゃねぇだろ? というかお前さんアルターエゴのことを知らなかったみたいだしな。アルターエゴ見て喜ぶってのは異常だ」
グライド親分がよく分からないことを言う。ロボットなんだから普通喜ぶだろ。
「え? アルターエゴで喜ぶのが異常ってどういうことですか?」
「アルターエゴは特別じゃないからな。見た目は一つ一つ違うが、アルターエゴに特別な存在はない。アルターエゴの性能は操縦者に大きく依存するんだ。アルターエゴが特別に見えたらそれは操縦者が特別ってこと。アルターエゴ自体に価値は特にないんだよ。ま、発掘したりとかで手間はかかるがな」
「え? あっ、そういうことか。アルターエゴは一杯あるしそれ自体は特別じゃないから……グライド親分にはおかしく見えたと。とくに価値のないもので喜んでたから」
「そういうこと。アルターエゴは名の通り別人格みたいなもんだ。自分の一部が力を持った存在。操縦者のエゴ、つまりそいつの考え方とか生き方、信念、感情が反映される。そしてエゴが強いほど、大きいほど強い。エゴが力になるんだ」
「それってつまりワガママなほど強いってことですか?」
「まぁ簡単にいうとそうだな。だから大抵強いアルターエゴ乗りは変なヤツとかクソ野郎ばっかだ。その点お前さんはある意味安心できる。変な部分がもう見えてるからな。ああいうロボット? あれで興奮するっていう人種。受け答えはまぁまともだし。変な所に実害がないっていうのは雇い主としてはかなり助かる」
変なヤツ扱いされる……が、もっともな意見だ。実害のある部分で変だったりクソだったりしたら困るしな。けど、どうやらあのアルターエゴっていうロボットは精神性、というか結構オカルティックな機能を搭載しているんだな。だからレッドアビスもマスター登録をしただけで俺が名乗らずとも俺の名前が分かったんだ。
「さて、俺もそろそろ仕事しねぇといけねぇ。名前はまだ聞いてなかったな。名乗ったら奴隷商のところにいってこい。事務所の際に地図看板があるから」
「あ、はい! 俺はレン、レン・コウガミです!! それじゃあ言ってきます親分!」
殺しをさせられる。正直実感はわかないしよく分からないがこの職場、というか雇い主はかなりホワイトだと思う。ちゃんと投資もするし世話もしてくれた。完全に恩を受けた感じだ。奴隷、奴隷か。とにかく行ってみないことにはよく分からないな。
──────
俺は親分に言われた通り、地図を確認しカガチ奴隷商会という場所にやってきた。外観はなぜかアラビアン風、内装は和風というよく分からない感じ。だが不思議と高級感はあった。
「いらっしゃませ。おや? ご新規さんですね。私はこのカガチ奴隷商会のワタベと申します。よろしくお願いいたしますね?」
「あ、よろしくお願いします! 俺はレン・コウガミです」
ワタベさんは中性的な顔立ちで細身の男性。優しそうな癒し系の顔で少しカマっぽい雰囲気だ。長い髪をまとめて肩に垂らしている。あのお母さんキャラがよくやってるやつだ。ワタベさんもまた建物と同じでアラビアン和風な服装をしている。
「ではレンさん。今日はどういったご用命で?」
「えっと、資金はこれぐらいなんですけど。その傭兵をやることになったので戦力が欲しいんです。なので、戦える、強い奴隷が欲しいです」
俺はそう言ってズボンのポケットから親分からもらった札束をワタベさんに手渡す。
「おっと、傭兵になられるのですね。レンさん、可愛らしいから意外です。ではとっておきの奴隷を紹介しますね。レンさんが死んでしまったら損失です。ではこちらへ付いてきてください」
可愛いとか言われてもなぁ……俺は男なんだよなぁ~もしかして口説いてるのか? いやオカマ的なお世辞か。移動する俺とワタベさん。細長い廊下を歩く。一定間隔で扉が廊下の左右に存在する。扉には札がついていて、愛玩とか労働、人外、元貴族とか熟女とか少女とか少年とか、いろいろある。そして廊下を歩いていると行き止まりになる。そこには扉があり、戦と書かれている。なるほど戦奴隷専用の部屋か。ワタベさんが鍵を使って扉をあけ、一緒に部屋に入る。
「お、おお」
部屋に入った俺は思わず驚いてしまう。何故かと言えば、まずその人数の多さだ。金属製のプレートのついたシャツを来た奴隷と思われる人達が広い一室に数百人はいた。みなプレートのついたシャツを来ている以外は普通の格好だ。みすぼらしくもないし清潔感がある。よく見ればこの部屋にはトレーニング用と思われる機械もあり、戦ですぐ使えるように管理されているとわかる。これはどう考えなくても、高級品だ。
「イルシィ、それとアウル、イグル。来てください」
ワタベさんが奴隷たちの集団に呼びかける。すると、無表情でムキムキ長身の女性、というよりは女の子と無邪気な表情をしたちょっと身長高めの青年、落ち着いた雰囲気で無邪気な青年によく似た青年の三人が集団から出てきた。三人は俺とワタベさんの元にやってくるとお辞儀をして挨拶をした。ワタベさんがどうぞといった感じで手を高級そうなソファに向ける。俺とワタベさんはそのソファに向かい合うように座る。
「それでは早速私一押しの戦奴隷を紹介したしますね? まずはイルシィ、この筋肉ムキムキの女の子ですね。元々は北方のコロシアムの奴隷だったのですが全戦勝利して、あっさり奴隷から開放されたんですが、コロシアム時代の貴族のファン男性にセクハラされそうになって殺してしまいました」
「まぁそれでまた奴隷になってしまった。という感じの女の子です。といっても人格は問題ないです。殺してしまった貴族もちんこ丸出しで近づいてきたらしいので仕方ないと思います」
「どうも、イルシィと言います。ど、どどどどど、どうかよろしくお願いします!!」
さっきまで無表情だったはずのイルシィは尋常ではないぐらいどもりながら照れている。何故か俺に目を合わせない。しかしこうやって近くでみるとデカイ。俺が女になって身長が若干縮んだとはいえデカイ。多分183cm以上はあると思う。シャツの上から割れた腹筋が見える。顔自体は結構童顔で綺麗可愛いといった感じ、体にはあまりあってないが……落ち着いた雰囲気の青の長髪で年齢は相応に見えるようなそうじゃないような。
「あのイルシィは何歳なんですか? ワタベさん。もしかして結構若い?」
「ああ、分かりますか? この子は13歳です。10のときにコロシアムに出始めて一年で開放されたので。そりゃそんな小さい頃に丸出しのキモイのに襲われそうになったらやっちゃいますよね~。イルシィは強いんですがやはり過去が過去だけあってあまり男性のお客様とは相性が良くないので今まで誰にも紹介できなかったのです」
「13!? 滅茶苦茶若い……若いのに頑張ったな。イルシィちゃん。ホント」
「あ!! ありがとうございます……っっ!!」
何故か凄く喜んでいる。ピョコンと少し跳ねたのを俺は見逃していないぞイルシィちゃん。可愛いなぁイルシィちゃん。
「次に、ワンズ兄弟、兄のアウル・ワンズと弟のイグル・ワンズですね。。連携が得意で強い絆を持った二人です。元々戦奴隷の両親から生まれて本人達も戦奴隷をして育ちました。ですがマスターが戦死しましてね。困ってたところをうちが引き取った感じです」
「優秀で強いんですが、二人セットで買っていただかないと価値が落ちますし、けれどそれぞれ個々の力も強いので単純に高級なんですよ。なので今まで買えるお客様が居なかったんです。戦奴隷を買うお客様は駆け出しの傭兵か緊急時に安い奴隷を沢山買う人がほとんどなので、今まで紹介できなかったのです」
「どうもー、アウルです!! 何歳ですか!? マスター!!」
「こら、アウル、まだマスターと決まっているわけじゃないぞ。はしゃぐな。僕がイグルです。よろしくお願いします」
兄のアウルは落ち着きがない。にこにこと笑顔で銀の短髪。身長は178cmぐらいか。弟のイグルは落ち着いている。イグルも銀髪だが髪は長めだ。身長は180cmぐらいか?
「え? ああ、俺は20だよ。君らは?」
「え!? マスター俺とためじゃーん!! あっは! これって運命じゃね!? なぁイグル?」
「全くお前は……俺が19でアウルが20です。すみませんホント。こいつすぐに調子にのるけど悪いやつじゃないんで……」
イグルは申し訳なさそうに頭を下げる。そしてアウルの頭を掴み下げさせる。そういう役割なんだな君たちは。
「ワタベさん、あの渡した資金で買えるってことですよね? じゃあ買いますね」
「おや、実際に強さを見なくてもよろしいのですか? あまり人を信じすぎるのは気をつけたほうが……」
「それは大丈夫ですよ。俺にはワタベさんがプロとして奴隷のことをきちんと考えて、適切なマスターに渡るようにしている。そう見えました。ワタベさんは信用できますよ。何よりこの子達はワタベさんに呼ばれた時いやそうじゃありませんでしたしね。大丈夫です」
「おお、レンさん、ありがとうございます。美少女に褒められると嬉しいですね。ふふ。ではお買い上げの手続きに移りましょう。これからも特に用事がなくても来ていいですからね?」
ワタベさんは純粋に照れていて、かわいい人だなと思った。どうやら気に入られたようだが奴隷商に用っていうのは買う以外にどういうのがあるんだろうか? と、疑問には思ったものの、今は手続きだ手続き。そしてそれが終わったら色々聞いてまわろう。戦うんだ。負けないように、死なないように、親分に恩を返すためにも頑張ろう。
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荒野の丘、カガチから少し離れた場所、巨大な人影、黒いバイザーフェイスの巨大ブースターを背負ったアルターエゴ。その側に人影がある。金髪で長身のニヤついた表情の男。ファーのついた派手なコートを羽織っている。男はタバコを吸い。その目はカガチの方向を見据えている。
「ふぅ~。あんましクソドバーには長居したくないし。さっさと終わらせるか。クサイしな。じゃ行こうか、オウガラス」
黒いアルターエゴ、オウガラスに男は乗り込む。オウガラスはその二足であるき始めるとブースターが光る。オウガラスは消えるように急発進した。カガチへと、真っ直ぐに。




