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推し活のために退寮したら、隣の部屋(103号室)に「推し(本人)」が住んでいた。 ~推しすぎたせいか、心の声まで聞こえます~  作者: しまじろう
第5章|能力編 ――一途がすぎると、女の子になるらしい――

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幕間・怜子side あの日の、私へ

※本作はフィクションです。挿絵はすべて自作(AIで生成)です。

――スタジオの、モニターの、前で。


私は、いつものように、腕を組んで、二人の、リハーサルを、見つめていた。


華と、葵。……私が、担当する、アイドルたち。


「怜子さん、今の、どうでした?」


「……サビの、入り。半拍、走ってた。……もう一度」


「うっ。……厳しー」


葵が、頬を、膨らませる。……けれど、その目は、真剣だ。……華は、黙って、頷いて、位置に、戻る。


……“業界一、冷徹”。……そう、陰で、呼ばれていることは、知っている。……でも、それで、いい。……この子たちを、いちばん高い、舞台に、立たせる。……それが、今の、私の、仕事だから。


――ほんの、少し前まで。……こんなふうに、人前に、出る仕事さえ。……怖くて、できなかった、私が。


◇


……昔。私も、この子たちと、同じ、ステージに、立っていた。


そして、私にも。……たった一人の、“推し”が、いた。


霧島レン。……十年以上、ひそかに、想い続けた、人。


彼に、恋を、していたわけじゃ、ない。……ただ、まっすぐで、ひたむきな、彼の、生き方が。……眩しくて。……そのために、私も、頑張れた。……純粋な、憧れ。……一途な、想い。


――なのに。


あの、収録の日。……はしゃいだ、共演者たちに、両側から、抱きつかれて。……私は、女の、体を、失った。


男に、なった、自分を。……よりにもよって、いちばん、見られたくなかった、彼の、前で。


(……こんなに、一途に、想っていたのに)


あの日から、ずっと。……私は、自分に、問い続けていた。


(……どうして、私だけが、こんな目に。……一途で、いることは。……罰に、値する、ことだったの……?)


人前に、出るのが、怖くなった。……肌を、晒すのが、怖くなった。……水着なんて、二度と、着られないと、思った。……そうして、私は。……ステージを、降りた。


◇


――そんな、私を。……変えたのは。


隣の部屋に、越してきた、あの、冴えない、青年、だった。


佐藤和馬。……私と、同じ。……“一途に、想い続けた”果てに。……あの、奇妙な現象を、抱えた、人。


初めて、彼が、女の子に、なる姿を、見たとき。……私は、心臓が、止まるかと、思った。……ああ、この人も。……私と、同じ、痛みを、背負うのか、と。


……だから、放って、おけなかった。


でも。……救われたのは。……私の、ほうだった。


『……間違いなんかじゃ、ないです』


彼は、言った。……まっすぐな、目で。


『一途で、いること。……誰かを、まっすぐ、想い続けること。……それが、間違いだなんて。……俺は、絶対に、思いません』


――その、言葉が。


十年、私が、自分を、責め続けた、その、答えを。……たった一言で、ひっくり返して、しまった。


私の、一途は。……罰なんかじゃ、なかった。……“誰かを、一生懸命、想った証”。……そう、思って、いいのだと。……この人は、教えて、くれた。


◇


――先日。


久しぶりに、鏡の前で。……クローゼットの、奥から、水着を、引っ張り出して、みた。


……まだ、手が、震える。……まだ、心臓が、ざわつく。


でも。……あの頃みたいに。……見るのも、嫌、というほどでは、なくなっていた。


(……いつか。……また、着られる、かな)


鏡に、映る、自分に。……そっと、問いかけて、みる。……すぐには、無理でも。……少しずつ、なら。……取り戻して、いけそうな、気が、した。


……“冷徹マネージャー”の、私も。……“怖がりで、臆病”な、私も。……全部、ひっくるめて。……私、なのだ。……もう、どちらも、隠さなくて、いい。


◇


リハーサルを、終えた、華が。……ふと、スタジオの、隅で。……スマホを、見て、こっそり、笑っている。


……その、画面に、映っているのが、誰なのか。……なんとなく、わかって、しまった。


(……この子も。……ずっと、一途、なのね)


華の、和馬への、想い。……そして、和馬の、華への、想い。……傍から見ていれば。……もう、痛いほど、伝わってくる。


――あの、神様が、尊ぶという。……“たった一人への、一途な想い”。


もし、それが。……ちゃんと、相手に、届いて。……返されたなら。……きっと、あの、呪いは。……祝福に、変わるのだろう。


(……だったら。……この二人なら、きっと、大丈夫)


私は、そっと、微笑む。……もう、恋という、形で、あの人を、想うことは、ない。……でも。……“同じ痛みを、知る、先輩”として。……この二人の、行く先を。……見守って、いたいと、思った。


◇


(……あの日の、私へ)


男に、なって。……ステージを、降りて。……ひとり、暗い部屋で、膝を、抱えていた、あの日の、私へ。


……大丈夫だよ、と。……私は、今なら、言える。


あなたの、一途は。……無駄じゃ、なかった。……いつか、あなたと、同じ痛みを、知る人が、現れて。……あなたを、そっと、救って、くれる。


だから。……もう、自分を、責めないで。


――窓の外。……よく晴れた、空を、見上げる。


……さあ。……次の、リハーサルだ。


私は、ぱん、と、両手で、頬を、叩いて。……もう、影の、ない足取りで。……モニターの、前へと、戻っていった。


★現役時代のアイドル怜子★

挿絵(By みてみん)


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