第47話 葵の“研究”と暴走
※本作はフィクションです。挿絵はすべて自作(AIで生成)です。
「さあっ! 今日こそ、私が、和葉を、堪能する番よっ!」
次の、休日。俺の部屋に、乗り込んでくるなり。葵ちゃんは、拳を、握りしめて、高らかに、宣言した。
「……堪能、って。……俺は、見世物じゃ、ないんですが」
「いいから、いいから! ……ほら、華ソンベ、麻衣オンニ。例の“実験”、お願いっ!」
葵ちゃんに、けしかけられて。華ちゃんと、麻衣さんが、にやり、と、顔を見合わせる。
「じゃあ、和馬。……ちょっと、失礼するわね」
「え、ちょ、ま……!」
右から、華ちゃん。左から、麻衣さん。二人の手が、ぽん、と、同時に、俺の肩に、置かれる。
【華:70%】【麻衣:73%】
――ぐわん、と。
いつもの、めまい。体が、ふわりと、軽くなって――ぽん、と。
「……はい、っと」
気づけば、俺は、また、あの、和葉の、姿に、なっていた。
「きゃーっ、出た出たっ! ……ほんとに、可愛いっ! なにこの子、なにこの子ぉっ!」
葵ちゃんが、目を、きらっきらに、輝かせて。……和葉になった俺に、がばっ、と、抱きついてきた。
◇
「よーし。……じゃあ、まずは、お着替えね!」
「お、お着替えっ!?」
葵ちゃんが、どこから持ってきたのか、可愛らしい、ワンピースを、ばさっ、と広げる。
「私の、私物っ! 和葉なら、絶対、似合うと思ってっ! ……ほらほら、脱いで脱いでっ」
「ちょ、自分で、着ますからっ……! 引っ張らないでっ!」
だが、葵ちゃんは、聞かない。ぐいっ、と、部屋着の裾を、まくり上げ――ぱさっ、と、頭から、抜き取って、しまった。
……そして。露わになった、俺の格好を見て。三人が、ぴたり、と、固まった。
「……あの、和葉。……その、下着」
「え……?」
「だって……ぶっかぶか、じゃない」
……そうだ。俺が、身につけているのは。女の子になる前の、男物の、下着。……小さく、なった体には、まるで、合わず。……今にも、ずり落ちそうに、なっていた。
「わ、わっ……!」
慌てて、両手で、押さえる。……我ながら、間抜けな、格好だった。
「……そりゃ、そうよね。体は、女の子でも。……下着だけは、男物の、ままだもの」
華ちゃんが、あごに手を当てて、しみじみ、頷く。
「これじゃ、ワンピース、着られないでしょ。……はい、葵。あなたの、予備。貸してあげなさい」
「あ、そうだねっ! ……はい、和葉。私の、予備の下着っ。……これに、着替えなさい?」
葵ちゃんが、可愛らしい、女の子用の下着を、ずいっ、と、差し出してくる。
「い、いや、自分で、着ますからっ……!」
「だーめ。……ちゃんと、着られるか、見ててあげる」
「そ、そういう問題じゃ、ないんですっ……!」
結局。三人がかりで、寄ってたかって。……俺は、女の子用の、下着に、着替えさせられて、しまった。
そして。
「……ふむ。……ちゃんと、着替えると。……また、印象が、違うわね」
華ちゃんが、じろじろ、と、遠慮なく、眺め回す。
「わあ……。和葉ちゃん、女の子の下着、ちゃんと、似合ってる……」
「か、可愛いっ……。ねえ、ちょっと、こっち、向いて?」
麻衣さんと、葵ちゃんまで。……着替えたばかりの、俺を、じろじろ、じろじろ。
「み、見ないでくださいっ……! 着替え、終わったなら、早く、ワンピース……!」
三人の、遠慮の、ない視線に。……和葉の姿の俺は、真っ赤になって、その場に、しゃがみ込む。
(う、うぅ……。……し、羞恥心で、死ぬ……!)
結局。ひとしきり、じっくりと、眺められたあと。……俺は、ようやく、ひらひらの、ワンピース姿に、なっていた。
「わあ……っ! ……に、似合う! 似合うわ、和葉っ! ……くっ、悔しいけど、可愛いっ!」
「な、なんで、悔しがるんですか……」
「次は、メイクね!」
と、今度は、麻衣さんが、いそいそと、コスメポーチを、取り出す。
「はい、和葉ちゃん、目、つむって。……ちょっとだけ、可愛くしてあげる」
「い、いや、これ以上、なにをっ……!」
やわらかい、パフが、頬を、ぽふぽふ、と、叩く。……麻衣さんの、顔が、すぐ、目の前まで、近づいて。……甘い、匂いが、する。
(ち、近い……! ……集中、されると、目の、やり場に、困る……!)
「はい、できたっ。……うわあ。……ほんとに、女の子だぁ……」
鏡を、見せられて。……そこには、見知らぬ、めかしこんだ、可憐な女の子が、ぽかんと、口を開けて、映っていた。……我ながら、直視できない。
◇
「あーっ、ずるい、麻衣オンニ、独り占めしないでっ! ……和葉、次は、私と、遊ぶのっ!」
「あら。……次は、私が、髪を、結んであげる約束でしょう」
華ちゃんまで、参戦してきて。……三人が、和葉(俺)を、両側から、ぐいぐいと、引っ張り合う。
「わっ、と、と、と……! ちょ、みんな、落ち着いて……!」
「和葉ー、こっち向いてっ!」
「だめよ、和葉ちゃんは、こっち!」
「和馬。……じっとしてなさい」
着せ替えられ、髪を、いじられ、頬を、つつかれ。……もみくちゃに、される。
と、そこへ。
「……あの、お兄ちゃん。じゃなくて、和葉ちゃん。……お茶、入れたよ」
唯が、呆れ顔で、盆を、運んでくる。……三人に、揉みくちゃにされる、俺を見て。
「……なんか、お兄ちゃん。……女の子になってから、余計に、モテモテだね」
「た、助けてくれ、唯ぃ……!」
「やだよ。……面白いもん」
(この、妹め……!)
◇
「はい、和葉。……疲れたでしょ。膝、貸してあげる」
ひとしきり、遊んで。葵ちゃんが、ぽん、と、自分の膝を、叩いた。
「あ、ずるい、葵ちゃん。……和葉ちゃんの膝枕は、私の番」
「なに言ってるの、麻衣さん。……次は、私が、耳掃除、してあげる約束――」
「その、争奪戦。……本人の、意思は、無視ですか」
俺の、ぼやきは、やっぱり、誰にも、届かない。
結局。……葵ちゃんの膝に、頭を、乗せられ。麻衣さんに、手を、握られ。華ちゃんに、髪を、梳かれる。
……三方向から、注がれる、甘やかし。……不覚にも、心地よくて。
(……だ、だめだ。……これじゃ、また、戻れなく、なる……!)
――と、その時、だった。
こんこん、と。玄関の、ドアが、ノックされた。
◇
「はーい」
何も考えず、扉を開けたのは、いちばん近くにいた、麻衣さんだった。
開いた、ドアの、向こう。……そこに、立っていたのは。
「……夜分に、失礼します。回覧板を、お持ちしました。……あら?」
同じ階の、隣人。……いつも物静かで、どこか、影のある、元アイドルの――如月怜子さんだった。
「……お客様、でしたか。お邪魔を――」
と。……和葉(俺)の姿を、目に留めた、その、瞬間。
――ぴたり、と。怜子さんの、動きが、止まった。
「……っ」
いつも、穏やかで、感情の、読めない、その顔から。……すう、と、血の気が、引いていく。
切れ長の目が、大きく、見開かれ。……和葉を、じっと、食い入るように、見つめる。まるで――信じられないものを、見た、みたいに。
「れ、怜子さん……?」
異変に、気づいた、華ちゃんが、眉を、ひそめる。
だが、怜子さんは、答えない。……ただ、青ざめた顔で。……和葉に、なった、俺のことを。……震える瞳で、見つめ続けていた。
「……あなた」
やがて。……絞り出すような、声で。怜子さんは、言った。
「……その、体。……“急に、女の子になる”のは。……もしかして、あなた自身の、意思では、ないのでは、ないですか」
「――っ!?」
全員が、息を、のむ。……なぜ、それを。
「……ど、どうして、それを……」
俺が、和葉の声で、問い返すと。
怜子さんは、ぎゅ、と、胸元を、握りしめて。……ひどく、痛みをこらえるような、顔で。……こう、告げたのだった。
「……その体質のこと。……私、知っています」
「「「……えっ」」」
「……だって。……昔、私も。……“同じこと”に、なったんですから」
静まりかえった、部屋に。……怜子さんの、その言葉だけが。……重く、重く、響いた。
(……この人が。……“同じ”……?)
俺の、平穏な日々を、揺るがした、この、奇妙な力。……その、謎の、いちばん深いところに。……この人が、いる。
――そんな、予感が。……和葉の姿の、俺の胸を、そっと、締めつけた。
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