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『ハズレ能力だと思ったら、ポーションが何でもありでした 』  作者: Lark224a


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第5話 すぎ去るのを待つ。

「お兄ちゃん。準備出来たよ?」


動きやすい服装へ着替えた凪がリビングへ戻って来ると、安心を求めるように自然と俺の隣へ腰を下ろし、肩が触れ合うほど身体を寄せてきた。


その小さな温もりからも、凪が必死に不安を押し殺していることが伝わってくる。


「‥‥これからどうなるの?パパとママは大丈夫かな?」


「これからについては色々と考えてる。父さんと母さんにはメッセージだけは送っておいたけど、回線が込み合ってるせいで連絡が取れていない。無事だと信じて待つしかない。」


送信済みの表示だけが虚しく残るスマホの画面を見つめながら答えるが、自分の言葉に確信などない。それでも今は信じる以外の選択肢がなかった。


「‥‥うん。じゃあ、私達も避難する?」


「避難は迷ってる」


これが普通の地震や台風のような災害なら迷わず避難する。


だが、今回起きている出来事は、昨日までの常識が一切通用しない異常事態だ。そんな状況で指定された避難所へ向かって、本当に安全だと言い切れるのか。


もし避難所の方が危険だったらと、そんな考えが頭から離れないが、だからと言って、このまま家に閉じこもっていれば助かる保証もない。


避難するべきなのか、それとも待機するべきなのか。頭の中で何度も答えを探し続けるが、どちらを選んでも不安しか浮かばず、正解は最後まで見つからなかった。


そんな俺の横顔を見つめていた凪は、そっと俺の手を包み込むように握る。その細い手は少し震えていたが、それでも兄を励まえようという想いだけは真っ直ぐ伝わってきた。


「‥‥大丈夫だよ。私達なら何とかなるよ。きっと、上手く出来る。私も頑張るから」


「そうだな。二人で何とかしよう」


妹の言葉に少しだけ肩の力が抜け、俺は小さく笑って頷く。兄妹二人で生き残ると心に決めた、その瞬間だった。


ゴロゴロゴロ。


今度は爆発音ではない。地面の奥底から響くような重低音と共に家全体が大きく揺れ始め、家具や食器が激しく音を立てる。


「凪!!頭を守れ!!」


「うんッ!!」


俺は咄嗟に凪へ覆いかぶさり、自分の身体を盾にして揺れが収まるのを待った。


床が軋み、壁が震え、棚の上から小物が落ちる音が家中へ響き渡ること数分後、ようやく揺れは収まったものの、今度は家の外から無数の怒号や悲鳴が聞こえ始めた。


「速く!!こっちだ!!」


「急げ!!」


胸騒ぎを覚えた俺は凪から離れると、カーテンをほんの少しだけ開き、外の様子を慎重に確認する。


すると道路には迷彩柄の服を着た自衛隊員達が慌ただしく走り回り、車両も次々と通り過ぎていた。その表情には救助へ向かう余裕はなく、まるで戦場へ赴く兵士のような張り詰めた緊張感が漂っている。


「あれは自衛隊‥‥自衛隊が出動してるってことは、救助とかが始まってるってことか?それとも、他に何か別の問題が起こったのか?」


窓の外を見つめながら呟くと、凪も俺の隣まで歩いてきた。


「あれって自衛隊だよね?救助に来てくれたのかな?」


「どうだろうな。救助っていうよりは別の目的に見える。少しネットで情報を探ってみるか」


俺はすぐにスマホを操作して情報を探し始める。そして、その理由はものの数秒で見つかった。


「‥‥何だこれ」


思わず声が漏れる。


画面には、一般人が遠くから撮影した一本の動画が映し出されていた。


「どうしたの?」


異変に気付いた凪も画面を覗き込み、その映像を目にした途端、俺と同じように言葉を失う。


そこに映っていたのは、空から降ってきた巨大な塔の入口から、アニメや漫画の中でしか見たことのない異形の化け物達が次々と姿を現して逃げ惑う人々へ容赦なく襲い掛かっていた。


悲鳴が響き渡り、人々は我先にと逃げ惑う。その映像はあまりにも現実離れしているのに、スマホ越しでも伝わってくる恐怖だけは紛れもなく本物だった。


どうやら先程の地震を合図に、塔の中から化け物達が一斉に現れたらしい。


もしこの映像が本物なら、この出来事があの場所だけで終わるはずがない。全国各地へ現れた塔から同じように化け物が現れていると考える方が自然だった。


そう判断した俺はすぐに家中の窓を外から見えないよう塞ぎ、玄関や勝手口、ありとあらゆる扉へ鍵を掛ける。外から中の様子を窺えず、簡単には侵入も出来ないよう、出来る限りの対策を急いで施した。


「お兄ちゃん」


「凪。俺達は家に引きこもる。さっきの映像は、あの場所だけじゃなくこっちでも起こると思う。つまり外へ出ても全く安全じゃない。さっき見た自衛隊も救助じゃなく、化け物と戦うためにやって来たんだ。」


凪は不安そうな表情を浮かべながらも、小さく頷いた。


「じゃあ、私達はことが終わるまで家にいるってこと?」


「うん。それが今は‥‥一番安全だと思う。」


正しい判断なのかは分からないが、それでも、何も分からない今は不用意に外へ出るより、この家で状況を見極めるしかない。


そうして俺達兄妹は、嵐が過ぎ去るその時まで家へ引き籠ることを決めるのであった。

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