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『ハズレ能力だと思ったら、ポーションが何でもありでした 』  作者: Lark224a


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第4話 始まる崩壊。

その日も特に何事もない一日だった。


朝起きて凪が作ってくれた朝食を囲み、何気ない会話を交わしてから凪は部活へ向かう。俺も友達と勉強をして夕方に帰宅し、凪の作った夕食を食べ、お風呂に入って眠りにつく、そんな当たり前の日常を、何の疑いもなく過ごしていた。


それは、どこにでもある平凡で穏やかな毎日だった。だからこそ、その日常が一晩で崩れ去るなど、この時の俺は夢にも思っていなかった。


――7月7日 0時00分


ドカーーーーン!!!!


腹の底まで突き上げるような凄まじい爆発音が夜の静寂を引き裂き、今まで生きてきた中で一度も聞いたことのない轟音に叩き起こされた俺は、その衝撃でベッドから勢いよく転げ落ちた。


「なっ!!何だ!!今の音は!?」


眠気など一瞬で吹き飛び、心臓が激しく脈打つ。床へ手をついて体を起こすと、再び爆発が起きるのではないかという恐怖に背中を押されるように、俺は慌てて窓へ駆け寄った。


勢いよくカーテンを開き、窓を開放して外を見た瞬間、目に飛び込んできた光景に言葉を失う。


そこには、昨日まで存在していなかったはずの塔が、街を見下ろすように堂々とそびえ立っていた。


「‥‥え、あれは一体何だ?あんな建物あったか?」


思わず漏れた声は、自分でも驚くほど震えていた。


家やビルを押し潰すように天へ向かって伸びるその塔は、人の手で造られた建造物とは到底思えない異様な存在感を放っている。月明かりに照らされた漆黒の外壁は不気味な光沢を帯び、まるで最初からそこに存在していたかのような威圧感で街を支配していた。


しかも、それは一本だけではない。


窓から見渡せる範囲だけでも、遠くの街並みの向こうに何本もの巨大な塔が立ち並び、夜空を切り裂くように突き出している。


「な、何なんだよ‥‥これ」


目の前で起きている現実を理解することが出来ず、頭の中が真っ白になっていると――


ドカーーーーン!!


再び爆発音が響き渡った。それを合図にしたかのように、


――ドカーン!! ――ドゴォォォン!! ――ズガァァァン!!


あちこちで爆発が連鎖するように鳴り響き始め、窓ガラスがビリビリと震える。赤い炎が夜空を染め、遠くでは黒煙が立ち上っているのが見えた。


「はぁ‥‥はぁ‥‥」


息が浅くなる。これは夢じゃない。夢なら今すぐ目が覚めてほしい。そんな願いとは裏腹に、爆発音も窓の震えも、肌に感じる夜風の冷たさも、何もかもが現実だった。


目の前の光景を飲み込めないまま立ち尽くしていると、


バンッ!!


勢いよく部屋の扉が開かれた。


「お兄ちゃん!!外がッ‥‥外がッ!!」


そこに立っていたのは寝間着姿の凪だった。


顔は青ざめ、目には大粒の涙が浮かび、全身を小刻みに震わせている。その姿を見ただけで、どれほど恐怖に怯えているのか痛いほど伝わってきた。


それ以上に俺の胸を締め付けたのは、普段なら絶対に俺を「お兄ちゃん」と呼ばない凪が、無意識のうちにそう呼んでいたことだった。


それほどまでに、この異常事態は凪から心の余裕を奪っていた。


もちろん俺自身も混乱していた。


目の前の現実を受け止め切れず、今にも足がすくみそうになるほど恐怖を感じている。


それでも、怯え切った凪の姿を見た瞬間、不思議と頭の熱が少しだけ冷めていくのを感じた。


――俺は兄だ。


俺まで取り乱したら、凪は誰を頼ればいい。その思いだけが、かろうじて俺を現実へと引き戻してくれた。


「大丈夫だ!!俺が何とかする!!」


そう言って強く凪を抱きしめると、震えていた体から少しだけ力が抜けていく。


凪も俺の服をぎゅっと掴み、乱れていた呼吸を少しずつ整え始めたのを確認すると、俺は出来る限り落ち着いた声で今後の行動を伝える。


「幸い、家の近くには塔は落ちてきていない。だから無暗に外へ出るのは危険だ。まずは状況を確認しよう。凪は動きやすい服に着替えて、こういう時のために用意してある防災グッズを持ってきてくれ。俺もすぐに準備を始める」


そう指示を出すと、凪はまだ震えながらもコクンと力強く頷き、自分の部屋へと走って戻って行った。


そうだ。兄である俺が取り乱してどうするんだ。今は父さんや母さんのことも心配だが、それ以上に俺には守らなければならない存在がすぐ側にいる。


だからこそ、まずは冷静になって状況を整理し、父さんと母さんに連絡を取ってこれからどうするべきかを聞くべきだ。そう考えた俺は震える手でスマホを取り出し、まずは父さんへ電話を掛ける。


しかし――


『現在、回線が非常に混み合っています。また、時間を空けてお掛けください。』


無機質なアナウンスだけが流れ、電話は一方的に切れてしまった。


「くっ‥‥!」


嫌な予感を振り払うように今度は母さんへ電話を掛けるが、返ってきたのは父さんの時とまったく同じアナウンスだけだった。


何度掛け直しても結果は変わらない。


どうやら、この異常事態は俺たちの住む街だけで起きているわけではなく、他の地域でも同じようなことが起きているらしい。一斉に安否確認をしようとする人たちで回線が混雑し、まともに電話も繋がらなくなっているのだろう。


なら、今さらメッセージを送ろうとしても届く可能性は低い。


父さんと母さんのことは心配で仕方で、今すぐ二人の無事を確認したい気持ちは山々だったが、繋がらない以上は、今の俺にはどうすることも出来ない。


だったら、今やるべきことは一つだ。


父さんと母さんを信じ、俺は俺に出来ることだけをやる。


――凪を守る。


それだけに集中しよう。


そう心に決めると大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出して乱れた呼吸を整える。こんな時だからこそ焦って判断を誤るわけにはいかない。俺まで冷静さを失えば、凪を守ることなど出来なくなってしまう。


まずは情報収集だ。


テレビよりも早く現場の状況が分かるかもしれない。そう考えた俺はスマホでXを開き、今この瞬間、日本中で何が起きているのかを確認するのであった。

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