第26話 副作用と効果時間。
「あーーヤバかった。あんな酷い物を初めて経験した。」
凪が持ってきてくれたポーションを飲んだことで、全身を襲っていた凄まじい筋肉痛は何とか治まってくれた。
さっきまで指一本動かすだけでも全身の筋肉が悲鳴を上げていたことを考えれば、こうして普通に体を起こせているだけでも随分と楽に感じる。
まさか強化ポーションの効果が切れた直後に、あそこまで酷い筋肉痛を引き起こすとは思ってもいなかった。
「強化ポーションが作れたのは嬉しいけど‥‥これは使えないな。」
苦労してようやく完成させた強化ポーションではあるが、使用後にあれほどの筋肉痛に襲われるのであれば話は別だ。
力を大幅に引き上げられる強力な効果と引き換えに、効果が切れた瞬間からまともに動けなくなるという新たな副作用的なデバフが判明したことで、せっかく完成した強化ポーションを封じることを余儀なくされるのであった。
「凪、助かったよ。」
すぐ近くにいた凪へと手を伸ばし、その頭にポンと手のひらを乗せて優しく撫でながらお礼を言う。
「う、うん‥‥もう、体は大丈夫なの?」
「あぁ、全く問題ない。いや~~このポーションは封印だな。」
軽く腕を曲げたり肩を回したりして確かめてみるが、先ほどまでの激痛が嘘だったかのように体は問題なく動いてくれる。
それを確認して安心した俺とは対照的に、凪は俺が口にした『封印』という言葉が気になったのか、不思議そうに首を傾げた。
「え?もう使わないの?」
「まぁーーな。だって効果時間がそんなに長くない割に、効果が切れれば動けなくなるからな。今は使うことは出来ないだろ?もうちょっと人数がいれば話は変わるんだが、今は二人だから片方が動けなくなったら終わりだろ?」
強化ポーションを使っている間は、確かに今までとは比較にならないほどの力を手に入れられる。
だが、その代償として効果が切れた瞬間に戦闘不能になるのであれば、俺と凪の二人しかいない現状ではあまりにも危険すぎる。
「まぁ、それはそうだけど‥‥勿体なくない?せっかく完成したのにこれで終わりなんてさぁ。」
「仕方ないだろ。ここまで酷い筋肉痛を起こすんだから。」
そう。俺だってせっかく完成させた強化ポーションを手放したいわけではないし、出来ることなら今後も使っていきたいとは思っている。
だが、使用後にここまで明確なデバフを抱えると分かった状態で実戦投入するのは流石に無理があり、さっきのように安全な自宅で動けなくなるのとは訳が違う。
もし外で化け物と戦っている最中に効果が切れ、あの筋肉痛に襲われればどうなるかなど考えるまでもない。
まともに立つことすら出来なくなった俺を凪一人で守らなければならなくなり、その状態で新しい化け物に襲われれば二人揃って危険に晒されることになる。
せめて効果時間と筋肉痛、この二つの問題のどちらか一方でも無ければ、まだ使い道を考える余地はあったんだけどなぁ。
「やっぱり無理だよ。俺だって嫌だけど諦めるしかない。」
「うーーーん‥‥私はまだ何とかなると思うんだけどなぁ。」
俺がそう結論を出しても、凪は未だに納得出来ないのか腕を組みながら考え込み、強化ポーションが入った容器へと視線を向けている。
どうやら凪の中では、これだけの力を得られるポーションを副作用があるからという理由だけで諦めてしまうのは勿体ないらしく、まだ何かしらの可能性が残されていると信じているようだった。
そこまで凪が言うのであれば、完成したばかりの段階で完全に諦めてしまうのも早いかもしれない。
筋肉痛を軽減する方法があるのか、それとも強化ポーション自体を改良することで副作用を抑えられるのかは分からないが、もう少しだけ時間を掛けて調べてみるか。
「分かった。もう少し何か出来ないか色々と考えてみる。でも、今日は終わりだ。さぁ、ごはんにしようか。」
「うん!!そうだッ!!私の成長も聞いて!!」
さっきまで強化ポーションのことで頭がいっぱいだった凪は、思い出したように声を弾ませると、今度は自分の魔法について話したくて仕方がないといった様子で俺の後をついてくる。
その後は強化ポーションについて考えるのを一旦止め、凪と共に晩御飯を食べることにした。
食事中は凪が今日どんな魔法を使えるようになったのか、何が出来るようになったのかを楽しそうに話し続け、俺はそんな凪の話を聞きながら今日一日を終えるのであった。




