第24話 強化ポーション!!
「あーダメだな。全く上手く行かない。何がダメなんだろう。あーダメだな。一旦、休憩にするか」
何度試しても思い描いた結果にはならず、考えれば考えるほど頭の中が煮詰まっていく。
このまま続けても同じことを繰り返すだけだと判断した俺は、思考を一度リセットする意味も込めて休憩を取ることにした。
――プシュ!!
コンビニから持って帰って来た〇ットブルのプルタブを起こすと、炭酸の抜ける小気味いい音が響き、開いた飲み口から独特の甘い匂いが漂ってくる。
そのまま缶を傾けてゴクゴクと喉へ流し込めば、冷たい液体と弾ける炭酸が舌から喉を強く刺激しながら胃の中へ落ちていき、考え続けて疲れていた頭まで一気に目が覚めていくようだった。
「あーーー美味い!!久しぶりの〇ットブルは最高だな!!何かを考える時はこれに限る。」
口元から缶を離して満足しながら何気なく〇ットブルを眺めていると、そこには「ココロ、カラダ、みなぎる。」という文字が書かれていた。
そして〇ットブルと言えば、もう一つ有名なのが「体に翼を授ける」という言葉であり、それを頭の中で思い浮かべた瞬間、今まで繋がらなかった何かが突然一本の線になった。
「そうか‥‥!!これとポーションを合わせるんだ。」
今までは何もない状態から目的に合ったポーションを生み出そうとしていたが、別に最初から全てを作る必要なんてない。
元々この世界に存在している飲料をベースにして、そこへ俺の能力でポーションの効果を組み込むことが出来れば、これまでとは全く違う方法で新しいポーションを作れるかも知れない。
「試す価値は全然あるな。」
そうと決まれば考えている時間が勿体ない。俺は缶の中に残っていた〇ットブルを一気に飲み干すと、近くに置いてあった未開封の新しい〇ットブルを手に取り、改めてその缶をじっと見つめた。
「さて、やるか。イメージするのは〇ットブルのCMだ。あのCMみたいな超パワーをイメージする。」
目を閉じて記憶に残っているCMを思い出しながら、手の中にある〇ットブルへ意識を集中させて力を注ぎ込んでいく。
どれぐらいの量を注げばどれほどの強化になるのか分からない以上、少しずつ試すよりもまずは結果がはっきり分かる方がいいと考え、俺は最小ではなく最初から出せるだけの力を注ぎ込んだ。
すると、手の中にある〇ットブルの缶が淡い黄色の光を帯び始め、その光は俺が力を注ぎ込むほど徐々に強さを増していく。
金属で出来た缶そのものが内側から発光しているかのような不思議な光景に、俺は思わず目を見開いた。
これは来てる!!間違いなく来てる!!
今まで何度試しても得られなかった確かな手応えがあり、胸の奥から期待が一気に込み上げてくる。やがて缶を包み込んでいた黄色い光がゆっくりと収まっていったところで力を注ぎ込むのを止め、俺は完成した改良版〇ットブルを両手で確かめるように持ち直した。
見た目だけなら、さっきまでの〇ットブルと何一つ変わっていない。
それでも、確かに何かが変わったという感覚だけは手のひらに残っている。
「頼むぞ!!」
――カシュ!!
勢いよくプルタブを起こして蓋を開け、そのまま缶を大きく傾けて中身を一気に口へ流し込む。
味も炭酸の刺激も普通の〇ットブルと大きく変わったようには感じられなかったが、喉を鳴らして――ゴクンと飲み込んだ、その直後だった。
「ッ!?」
体の奥底で、何かが弾けた。
腹の奥からブクブクと煮え立つマグマのような熱が込み上げ、それが一瞬で胸や背中、両腕、両脚へと広がっていく。
皮膚の表面が熱いわけではなく、骨や筋肉のさらに奥側から直接焼かれているような感覚で、時間が経つほどその熱は弱まるどころか激しさを増していった。
「熱い!!熱い!!」
あまりの熱さに立っていることすら出来なくなり、俺は堪らずその場に膝をつくと、自分の体を抱え込むようにして蹲った。
全身から汗が噴き出し、心臓は胸を突き破りそうなほど激しく脈打っているのに、不思議と苦しくはなく、むしろ熱が強くなるのに合わせて筋肉の一本一本へ凄まじい力が流れ込んでくるのが分かる。
そして、その熱が限界まで高まった瞬間――。
「はぁ!!!!」
腹の底から飛び出した叫び声と同時に全身へ力が一気に駆け巡り、膨れ上がった筋肉に耐え切れなくなった服が――ビリビリッ!!と音を立てて弾け飛んだ。
「はぁッ!!はぁッ!!何だ、この感じ‥‥今まで感じたことがないぐらい!!体から力が溢れてくる!!」
荒く息を吐きながらゆっくりと立ち上がってみると、自分の体なのに自分の体ではないような奇妙な感覚があった。
腕を軽く動かしただけでも筋肉が今までとは比べものにならないほど鋭く反応し、足に少し力を込めれば、そのまま床を蹴り抜いてしまいそうなほどの力が全身から溢れている。
俺はこの力がどれほどのものなのか確かめるため、先程飲み干した〇ットブルの空き缶を拾い上げると、手のひらの中へ収めるようにして握り込んだ。
本当に、ほんの少しだけ力を入れたつもりだった。
――ベキッ!!
次の瞬間には薄いアルミの缶が一気に押し潰され、手の中には元の形が分からないほど平たくひしゃげた金属の塊だけが残っていた。
まるで強力なプレス機にでも押し潰されたような有様を目の当たりにして、俺は自分の手と潰れた缶を何度も見比べる。
「ハ、ハハハ!!成功だ!!」
思わず笑い声が漏れた。
これまでポーションは無から作り出すものだとばかり思っていたが、既存の飲み物をベースにして新たな効果を付与するという方法でも作ることが出来た。
しかも、完成したものは俺自身が想像していた以上の力を発揮しており、手の中で無残に潰れた缶を見つめながら、俺は自分の能力にまだまだ未知の可能性が眠っていることを確信するのであった。




