第19話 パーティー
新しく追加された『パーティー』『買い物』『ポイント』『換金』の四つの項目。その中から、俺はまず『パーティー』の文字を選択してみることにした。
すると目の前の画面が一瞬で切り替わり、そこに表示されたのは〇ケモンの手持ち画面を思わせるようなものだった。
一番上には俺の名前が表示されており、そのすぐ下には、もう一人分が入りそうな空白の欄が一つだけ用意されている。
「‥‥つまり、これって‥‥そういうことだよな?」
「う、うん‥‥私もそう思うよ。」
俺と凪は画面と互いの顔を交互に見ながら、ほぼ同時に同じ結論へと辿り着く。パーティーという名前から考えても、この空白の欄には仲間となる誰かを登録するのだろうが、問題はその方法だった。
「ただ、これどうやって入れる?セットするんだ?何かやり方があるのか?」
「うーーん、そうだよね。お兄ちゃんの欄は動かせないし、仲間に入れるみたいな項目もないし‥‥試しに手でも繋いでみる?」
「‥‥ふふっ。」
何でそこで手を繋ぐという発想になるんだよ。
そんな凪の妙な提案がおかしくて思わず小さく笑ってしまったが、だからといって他に試せそうな方法があるわけでもない。俺は半信半疑のまま右手を差し出し、凪も少し照れくさそうにその手を握ってきた。
その瞬間――先ほどまで何もなかった空白の欄に、まるで最初からそこにあったかのように『九条 凪』という名前が浮かび上がった。
「えーっと‥‥出来たな。」
「う、うん‥‥出来ちゃったね。まぁ、正解ならこれで良かったよね。」
まさか本当に手を繋ぐだけで登録されるとは思っていなかったため、俺達はしばらく繋いだ手と画面を交互に見つめてしまう。
仕組みは全く分からないが、凪の名前が表示された以上、これで俺と凪が同じパーティーになったと考えていいのだろう。
「だな!!うん、成功したんだし悪くないよな。それより、パーティーを組んだらどういう効果があるんだろう。ゲームとかなら経験値が貰えたり、アイテムを共有できたりするけど、これはどうなんだろうな。」
「私はそういうゲームは全くやらないから分からないけど‥‥経験値って、それはどうやって得るの?」
「それはモンスターを倒せば得られるな。この現状で言うなら‥‥あの化け物を倒せば得られるってことになるんじゃないか?」
少なくとも、俺が知っているゲームの知識を当てはめるならそうなる。
もちろん、この世界に現れた化け物とゲームのモンスターが同じ仕組みなのかは分からないが、目の前にこんなゲームじみた画面が現れている以上は全く関係がないとも思えなかった。
「ならさ、レベルを上げるとどうなるの?」
「それは‥‥強くなるだろうな。」
「なら、私としてはだけど‥‥明日から化け物と戦いたい!!」
凪の口から飛び出した予想外の言葉に、俺は一瞬何を言われたのか分からず、その顔をじっと見つめてしまった。だが、凪は冗談を言っているようには見えず、その目は真っ直ぐ俺を見返している。
「え?それは今日みたいに明日も化け物と戦って、レベルを上げたいってことか?」
「そう!!私達が強くなって化け物を倒せるようになれば、お母さんやお父さんとも合流できるでしょ?」
「まぁ、それはそうかもしれないが‥‥死ぬかもしれないぞ?今日だってポーションがあったから無傷だったが、もしそれが無かったら無事じゃなかったんだぞ?」
今日戦った化け物の姿が頭の中に蘇り、俺は自然と声を低くして凪に言い聞かせる。
結果だけを見れば俺達は二人とも無事に帰ってこられたが、それは俺のポーションがあったからこその結果であり、一つでも何かが違っていれば、今こうして家で話していられなかった可能性だって十分にあった。
「‥‥それはそうだけど‥‥私は、このままずっと家に隠れるなんて嫌だよ。」
さっきまでの勢いは消え、凪は少しだけ俯きながら小さな声でそう呟いた。その言葉を聞いてしまうと、俺もすぐに否定することは出来なかった。
俺だって、このまま家に閉じ籠もり続けていれば全てが解決するなんて思っていない。
食料にも限りがあるし、何より今も離れ離れになっている両親がどうなっているのか分からない以上、いつかは俺達の方から動かなければならない時が来る。
「うーーーん。分かった。ただ、今すぐには決めなくていいんじゃないか?それこそ新しい項目を全部確認して、それからどうするか考えても遅くないだろ?」
「‥‥うん、そうだね。少し急だった。もう少し考えてからの方がいいよね。」
凪も俺の言葉に納得したのか、小さく頷いてくれた。
化け物と積極的に戦うかどうかについては一旦保留になったが、とりあえず『パーティー』については凪と組めることが分かり、俺達は次の項目を確認することにした。




