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『ハズレ能力だと思ったら、ポーションが何でもありでした 』  作者: Lark224a


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第12話 検証。

――翌朝。


軽い食事を済ませて最低限の片付けを終えてから、俺は凪と共に昨日発現した能力の検証を始めることにした。


昨日は突然のことで、とにかくポーションを作れるという事実を確認するだけで精一杯だったが、一晩休んだことで体調もすっかり元に戻っている。


今なら、どこまでの物を作れるのか、ある程度踏み込んだ検証が出来るはずだ。


「それでお兄ちゃん。何から始めるの?」


俺の向かい側に座った凪が興味津々といった様子で身を乗り出してくる中、俺は昨日のことを思い返しながら検証する順番を頭の中で整理していく。


「そうだな。まずは、どの程度のポーションを作れるのかを検証したい。」


「どの程度?」


「そう。昨日作った奴は小さい怪我を治すイメージだったから、今度はもっと大きな怪我を治すイメージで作ってみる。例えば骨折とか捻挫とか、そういう怪我だな。それが出来るなら、次は病気に対して効果がある物も試してみたい。」


昨日は傷を治すという漠然としたイメージだけでもポーションを作ることが出来た。なら、治療する対象をもっと具体的にすれば、それに合わせて効果も変化する可能性は十分にある。


だが、俺の説明を聞いていた凪は少し考えるように首を傾げると、すぐに検証する上での問題点に気付いた。


「でも、それだと実際に怪我を治さないと作れたかどうか分からなくない?」


「そうなんだよな。実際に怪我をするわけにもいかないからな。とりあえず今は、効果があると思ってやるしかない。」


ポーションを生成すること自体は出来ても、本当に想定した効果が付与されているのかまでは見ただけでは判断出来ない。だからといって、検証の為だけにわざと骨を折ったり捻挫したりするのは流石に論外だった。


「そうだね。検証の為に怪我をするなんて危なすぎるもんね。」


「だな。じゃあ、始めるか。」


凪も納得したところで、俺はテーブルの上に置いておいたペットボトルのキャップを一つ手に取り、意識を集中させる。


イメージするのは昨日よりも遥かに大きな怪我で骨折や捻挫といった、自然に治るまで長い時間が必要になる怪我を瞬時に治療するポーションだ。


ただし、生成する量に関しては前回と同じくペットボトルのキャップ一杯分に設定する。


量によって消費するエネルギーや効果そのものが変化する可能性もあるが、いきなり効果と量の両方を上げてエネルギー不足で気絶してしまっては、何が原因だったのか判断出来なくなってしまう。


だからこそ、まずは効果だけを変えて検証し、その後で量による変化を確かめる。その方が一つずつ違いを確認出来るし、自分の限界を把握する意味でも安全だった。


頭の中で出来る限り鮮明に効果を思い描き、そのイメージを具現化するように能力を発動すると、手に持っていたペットボトルのキャップの中に液体がじわりと現れ、瞬く間に一杯まで満たされていった。


「ちゃんと出来たね!!」


「あぁ、そうだな。少なくとも生成自体は問題ないみたいだ。」


見た目だけでは昨日の物との違いはほとんど分からないが、想定した効果を頭の中で維持したまま生成出来たことに変わりはない。


今作ったポーションをすぐに使う予定はないので、間違えて他の物と混ざらないよう別の容器へ慎重に移し替えると、俺はマジックを手に取って容器に『大 怪我』と記入した。


これから種類が増えることを考えれば、どのポーションに何の効果を想定したのか分かるようにしておいた方がいいだろう。


「疲れはどんな感じ?まだまだ行ける?」


「そうだな。今は大丈夫だ。昨日より体の感覚も分かってきたし、まだ余裕はあるから次だ。」


それからも俺は条件を少しずつ変えながら、次々にポーションを生成していった。


一回、二回と回数を重ねるごとに容器の数が増えていく一方で、体からは目に見えない何かが確実に削られていく。


最初の数回はほとんど気にならなかった疲労も、五回を超えた辺りから徐々に重くなり始め、頭の奥に鈍い倦怠感がまとわりつくようになってきた。


それでも自分の限界を知ることも検証の一つだと考えて続けた結果、十回目の生成を終えたところで、俺はとうとうその場に座り込んだ。


「はぁ‥‥はぁ‥‥これ以上は無理だ。次、やったら間違いなく気絶する。」


呼吸をする度に胸が大きく上下し、全身から力が抜けていく。激しい運動をしたわけでもないのに手足には鉛でも括り付けられたような重さがあり、立ち上がろうという気さえ起きなかった。


昨日も感じたこの独特な疲労感からして、やはりポーションを作る度に俺の中にある何らかのエネルギーを消費しているのは間違いないだろう。


そんな俺の様子を心配そうに見ていた凪だったが、何かを考えるように黙り込んだかと思うと、不意に口を開いた。


「‥‥エネルギーが切れるなら、そのエネルギーを補給できるポーションを作れば無限じゃない?」


「‥‥」


一瞬、何を言われたのか理解出来なかった。


だが、凪の言葉を頭の中で噛み砕いた瞬間、疲労で鈍っていた思考が一気に冴える。


確かに、その通りだ。


ポーションを作る為に俺自身のエネルギーを消費しているのなら、その消費したエネルギーを回復させるポーションを作ればいい。あらかじめ何本か用意しておけば、こうして限界まで消耗した時だけでなく、緊急時にも役立てることが出来る。


何より、それが本当に可能なら、俺の能力に存在するはずの『エネルギー切れ』という最大の制限を、俺自身の能力で踏み倒せることになる。


それが出来たら‥‥神だ。


思いついた瞬間、試さずにはいられなかった。


俺は床に手をつき、重たくなった体を無理矢理起こすと、残っている力を掻き集めるようにしてイメージを始める。


だが、能力を発動しようとした直前、凪が慌てて俺の腕を掴んだ。


「ちょ!!無理しちゃダメ!!もう限界なんでしょ?また回復したら試せばいいから!!ねぇ?」


「でも、これが出来るなら――」


「出来るかどうか確かめる前にお兄ちゃんが倒れたら意味ないでしょ!!」


強い口調でそう言われ、俺は言葉を詰まらせる。


普段なら俺の方が止める側なのに、今は完全に立場が逆転していた。凪の言っていることが正しいのも分かっているだけに反論することも出来ず、俺は小さく息を吐いて体から力を抜いた。


「‥‥分かった。そうする。」


凪に促されるまま再び腰を下ろし、俺は回復するまで大人しく体を休めることにした。


エネルギーを回復させるポーション。


もし本当にそんな物まで作れるのなら、この能力は俺が思っていた以上に、とんでもない力なのかもしれない。

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