1.5
食事が終わると、ヴェラリンは椅子から立ち上がり、訓練された動作で皿と椀をテーブルから集め始めた。手つきは丁寧で無駄がない。あらゆることに秩序を保つことに慣れた人間の動きだった。
止めようかと思った。そんなことをする必要はないと言おうかと。だが彼女の動き方を見ていると、口を出す気がなくなった。もしかしたらこれが、彼女なりの居場所の作り方なのかもしれない。あるいは、ヴェラリン・シルバークラウンという人間にとって、何もせずにじっと座っていること自体が苦痛なのだろう。
「まずい料理でごめんなさい」突然そう言った。振り向かないまま。手はまだ皿を片づけている。「料理するのは初めてだったから」
声はいつも通り平坦だが、その一言の奥に何かがあった。恥ずかしさではない。言い訳を求めない、正直な告白だった。今まで学んだことすべてを完璧にこなしてきた女が、最も単純なことでの失敗を認めている。
「問題ない」真面目な顔で答えた。「十分いい出だしだ」
もちろん、頭の中では別の話が展開されている。何をやっても完璧な女が、塩の入れすぎなんていう初歩的なミスをしている光景には、どうしようもなくおかしいものがあった。だがそれを口に出すほど馬鹿じゃない。
ヴェラリンは小さくうなずき、かまどの横にある木の水盤で皿を洗い始めた。俺は椅子にもたれ、窓から入ってくる朝の空気に身を任せた。
その穏やかな空気は、長くは続かなかった。
コン。コン。コン。
玄関に三回のノック。速くて、軽くて、朝のこの時間にはあり得ないほどのエネルギーに満ちている。
俺は片眉を上げた。
珍しいな。こんなに早く来るとは。
普段は昼前に現れて、チョコレートがぎっしり詰まった袋と、俺がサインしなきゃいけないビジネス報告書の束を持ってくる。こんな朝早くに来るということは、何か急ぎの用があるのだろう。
椅子から立ち上がり、玄関に向かった。扉を開けると、朝の光が一瞬目を射した。
その光の向こうに、金色の髪をした女が立っていた。朝にしてはあまりにも大きな笑みを顔に貼り付けて。
「ハロー、レッチ!」
その声は家の中まで響き渡った。おそらく裏の森にも。おそらく王都にも届いている。
セレナ・ヴァレンローズだ。
俺が生まれた村の地主の娘。彼女の家族は村で最も敬われていたが、自分たちと平民の間に壁を作ることは一度もなかった。セレナ自身、農家の子供たちと一緒に畑を駆け回って育った。俺もその一人だ。それが俺たちの友情の始まりだった。
そして今、かつて田んぼの畦道を走り回っていたあの女が、クレセンティア・グループの代表だ。この世界に存在する最も裕福な企業グループの。
世の中は何が起こるかわからない。
「元気? 健康?」セレナは首をかしげながら聞いた。あの明るい青い目が、いつまでも消えない好奇心で輝いている。
「ああ、まあ。いつも通りだ」平坦に答えた。
セレナは何か言おうと口を開きかけたが、その言葉は一瞬で消え去った。視線が俺の後ろにある何かに釘付けになった。
正確に言えば、誰かに。
振り返る暇もなく、セレナはすでに俺を通り越していた。その動きがあまりにも速くて、風が顔に当たった。
「ヴェラッチ!!」
セレナがヴェラリンに抱きついた。あまりにも力強い抱擁で、銀髪の女は危うくバランスを崩しかけた。さっき洗い終わったばかりの皿が手から落ちそうになる。
「生きててよかった!」セレナが叫んだ。声が安堵と怒りの間で震えている。両腕がヴェラリンを抱きしめて、離したらこの女が消えてしまうとでも言うように。
俺は台所の入り口に立ったまま、少し驚いていた。
「二人は知り合いなのか?」
セレナは抱擁を解かないまま、こちらを振り返った。「うん! 私とヴェラは親友なの!」
親友。ゲームにはまったく存在しない情報だ。
俺はヴェラリンに目を向けた。そしてそこに、それを見た。
笑み。
計算づくの薄い笑みじゃない。いつもの無表情でもない。心からの笑みだった。小さくて、注意して見ていない人間にはほとんど気づかないくらいの。だがそこには、俺がこれまで一度も見たことのない温かさがあった。
ヴェラリン・シルバークラウンが、誰かと会ってこんなに嬉しそうにしているのを見たのは初めてだった。
胸が少し軽くなった。
よかった。この世界で、彼女は一人じゃなかった。
セレナはようやく抱擁を解いたが、両手はまだヴェラリンの肩を掴んでいた。いつもは明るいあの目が、今は心配で満ちている。
「パーティーで何があったか聞いて、すぐに王都に戻ってきたの」いつもより静かな声で言った。「婚約のこと、残念だったね、ヴェラ」
ヴェラリンの顔から笑みが消えた。
「いいえ......」静かに答えた。「私の過ちだから。婚約を破棄されるほどの」
セレナが一瞬黙った。
それから、表情が変わった。
「あなたの過ち?」繰り返した。いつもの明るい声の奥に、突然鋭いものが現れた。「それ、あのバカ王子の過ちでしょ」
俺の心臓が跳ねた。
「おい」すぐに言った。「口を慎め。あの人はこの国の次期王だぞ」
セレナは、まったく感心していない目でこちらを見た。
「知らないよ、そんなの」一片の恐れもなく言った。「友達を傷つけたんだから。あの人、まだガキなのよ」
口を開いて言い返そうとしたが、言葉が出てこなかった。反対だからじゃない。むしろその逆だ。完全に同意している。だがこの世界でそれを声に出すのは、トラブルを招くのと同義だ。
俺はため息をつき、こめかみを揉んだ。
一方には、王子の元婚約者で危うく処刑されかけた女が俺の家に住んでいる。もう一方には、世界一の企業の経営者が同じ家で次期国王を侮辱したばかりだ。
俺には朝から騒がしすぎる。




