1.2
あの夜、俺はあの場にいた。
貴族としてじゃない。
来賓としてでもない。
王立魔法学院の大広間の端に立っていた、ただの平民だ。とはいえ、あの夜の俺の服装は質素とは程遠かった。出席していた貴族の何人かよりも上等なくらいだ。
当然だ。この世界で十八年も生きて、何の準備もしていないわけがない。
水晶灯が頭上で煌めき、若い貴族たちの笑い声が部屋を満たし、ワインはまるでこの世界が苦しみを知らないかのように流れ続けていた。
そして、あの声が響いた。
「私、レオンハルト・フォン・アステリアは、ここに婚約を破棄する」
前世から暗記していた台詞だ。
大広間が凍りついた。
俺は部屋の中央にそびえる大階段に目を向けた。そこに三人がいた。ヴェラリンは階段の下に立ち、顔面蒼白。階段の上では王子がアリシアを抱き寄せ、吐き気がするほど薄い笑みを浮かべていた。
十八年間待ち続けた瞬間が、ついに訪れた。
すべて準備してきたはずなのに、心臓は思った以上に激しく打っていた。ポケットの中で拳を握り、震えを隠す。
告発が始まると、大広間にひそひそ声が広がった。「残酷」「嫉妬」「当然の報い」。すべてが一人の女に向けられていた。
そして、炎が現れた。
小さい。速い。ほとんど反射のようだった。
俺にはそれが何を意味するか、正確にわかっていた。
ゲームの中では、これがヴェラリンにとってすべてが終わる瞬間だ。悪役が打ち倒され、物語があらかじめ決められたシナリオ通りに進む転換点。
炎は空中で偶然とは呼べないほど正確に軌道を変えた。青い光が現れ、魔法障壁が展開され、すべてが俺の記憶通りに終わった。
「ヴェラリン・シルバークラウン、その罪により、死刑を言い渡す」
その言葉は槌のように落ちた。
沈黙が部屋全体を押しつぶす。誰も動かない。誰も息をしない。
「お言葉ですが、殿下」
その声は、俺自身の口から出ていた。
何人かが一斉に振り向いた。驚きのささやきが列席者の間に広がる。こんな場面で平民が声を上げるとは。
心臓が激しく鳴っている。
だが俺は、このシーンを頭の中で何度も繰り返してきた。あらゆる可能性。あらゆる反応。あらゆる隙。
一歩前に踏み出し、深く頭を下げた。
「殿下、些か性急ではないでしょうか」声を安定させるのに全神経を使った。「あれはただの小さな炎です。誰一人傷つける力もない魔法でした」
沈黙が重くのしかかる。
王子の視線が俺に突き刺さるのを感じた。重く、冷たい。
「私の判断を疑うのか?」レオンハルトの声が鋭く響いた。
「そのようなことは」すぐに答えた。「殿下はあの炎をたやすく防がれました。あの魔法が致命的でないことは、殿下ご自身が一番よくおわかりのはずです。スライムですら、あの程度の火では死にません」
何人かの貴族が黙り込んだ。
賛同しない者もいれば、平民がここまで物を言うこと自体に不快感を示す者もいた。
そして、怒りが爆発した。
「黙れ!」王子の声が大広間に轟いた。「彼女は未来の王妃だ。危害を加えようとした意思だけで、死刑に値する」
俺は長く息を吸い、立ち続けることに意識を集中した。
「しかし貴族を死刑にするというのは」声がわずかに震えたが、それでも聞こえるように言った。「まして公爵家の人間を、正式な裁判もなく......それは軽率な判断と言わざるを得ません、殿下」
今度の沈黙は、質が違った。
恐怖の沈黙ではない。人々が考え始めた沈黙だった。
すべての視線がゆっくりとシルバークラウン家の一族に向けられた。
俺は待った。
たった一言でいい。
たった一つの異議でいい。
だが、何もなかった。
誰も前に出ない。
誰も口を開かない。
ヴェラリンの家族は黙って立っていた。まるであの女が自分たちの血を分けた存在ではないかのように。
胸の奥が冷たくなった。
それを見て、王子の顔に薄い笑みが浮かんだ。
「ほう?」静かに言った。「卑しい血の者が、本物の貴族のように扱われたいと?笑わせるな」
ささやきが一斉に広間を満たした。
「やっぱりあの噂は本当だったのか......」
「メイドの子だって......」
「道理で......」
その言葉はどんな魔法よりも鋭く突き刺さった。
俺はヴェラリンに目を向けた。
彼女はまだ背筋を伸ばして立っていた。顔は青白いが、目は何も懇願していない。泣いてもいない。弁明もしていない。
胸が締めつけられた。
今動かなければ、すべてがここで終わる。ゲームと同じように。そして俺は十八年かけて準備してきたことを、ただ見ているだけで終わらせるつもりはない。
「ならば」俺の声がささやきに満ちた大広間に響いた。「彼女の命を金で贖います」
部屋が静まり返った。
完全に。
何人かの貴族が信じられないという顔でこちらを見た。平民が。金の話をしている。王子の前で。
冗談だと思って小さく笑う者さえいた。
レオンハルトの目が険しくなった。
「私が金に興味があるとでも思うのか?」冷たく言った。「これは命の問題だ」
唾を飲み込んだが、それでもさらに一歩前に出た。
「殿下が金に興味がないことは承知しております」落ち着いて答えた。「しかし、王国の法もまた存じております」
ささやきが再び起きた。今度はもっと静かに、もっと慎重に。
「王国刑法において」続けた。「死傷者を出していない犯罪行為は、賠償金による贖罪が認められています。暴行未遂も含めて」
俺は服の内側から小さな袋を取り出した。
中身が金属の重い音を立てて床に転がり落ちた。
金貨百枚。
最後の手段。王子が刑を撤回しなかった場合に備えて用意しておいた切り札だ。
天井の水晶灯の光を反射してきらめくそれを見て、何人かの貴族が思わず息を呑んだ。あの額はただ大きいだけじゃない。中堅貴族でも気軽には出せない金額だ。
「法に則り」と言った。「彼女の罪を贖います。ヴェラリン・シルバークラウンの命を、金貨百枚で」
沈黙が再び押し寄せた。
レオンハルトが目を細めた。
「一つ忘れているようだな」と言った。「王妃を傷つけた罪は、贖うことができない」
俺はゆっくりとうなずいた。
「その通りです」と答えた。「もし彼女が王妃であれば」
俺はちらりとアリシアに目を向け、それから王子に視線を戻した。
「ですが法律上」静かに、だがはっきりと続けた。「彼女はまだ王妃候補です」
その一言が、静かな水面に落ちた石のように広がった。
そしてあの夜が始まって以来初めて、王子の顔に怒り以外の感情が浮かんだ。
敗北だった。




