1.1
正直に言うと、俺は乙女ゲームが好きじゃない。
いや、少なくとも嫌いであるべきだった。
あの時プレイしていたゲームのタイトルは『Magic and Love』。ルート分岐型の恋愛要素と、誰からも好かれる無邪気なヒロインが売りの、典型的な乙女ゲームだ。普通なら、俺が手を出すようなジャンルじゃない。
だが一つだけ、俺がプレイし続けた理由があった。
悪役令嬢だ。
ヴェラリン・シルバークラウン。
あのキャラデザは本当にずるい。長い銀髪、冷たい眼差し、真面目すぎる貴族のオーラ。明らかに嫌われるために作られたキャラなのに、なぜか目が離せなくなる。だが残念ながら、すべての乙女ゲームの悪役がそうであるように、彼女の結末はいつも同じだった。
死か、追放か。
「せめて、こんな美人を悪役にするなよ!」
プレイし始めた頃は、むしろ腹が立った。ヴェラリンはいつもヒロインを追い払おうとする。鋭い視線、冷たい言葉、まるで見下しているかのような態度。典型的な乙女ゲームの悪役。プレイヤーが彼女の転落に満足感を覚えるように作られたキャラだ。
大げさだと思っていた。
ゲームをクリアするまでは。
何重もの難しい選択肢の奥に隠された隠しエンディングで、ヴェラリンが再び姿を現した。没落した貴族令嬢としてではなく、最後の王として。高位の魔術師、複雑な魔法の使い手、本当にうんざりするほど厄介な攻撃パターンの持ち主として。
倒すのにかなりの時間がかかった。
そしてその後、カットシーンが始まった。
フラッシュバック。
初めて、物語がヒロインの視点以外から語られた。俺はヴェラリンの目を通して世界を見た。
そしてようやく気づいた。彼女の態度には、ちゃんと理由があったのだと。
ヒロインはよく無神経だった。あまりにも無神経だった。礼儀もわきまえず貴族の領域に踏み込み、貴族たちと馴れ馴れしく話し、何度も王子と二人きりで歩いているところを目撃されている。すでに婚約者がいる王子と。
あの世界では、身分はただの飾りじゃない。平民には守るべき分際があり、わきまえるべき立場がある。それは平民が劣っているからではなく、たった一つの過ちが政治的な大惨事になり得るからだ。
ヴェラリンはそれを理解していた。
彼女は子供じみた嫉妬をしていたんじゃない。警告していたのだ。礼儀を守ろうとしていた。自分自身の、そして王家の名誉を守ろうとしていた。誰だって、自分のパートナーに突然別の誰かが近づいてきたら、いい気はしないだろう。
なのに彼女の警告はすべて「悪行」として描かれた。
冷たい視線はすべて「弾圧」と見なされた。
距離を保とうとするたびに、まるで怪物のように扱われた。
カットシーンが終わった後、俺はしばらく画面を見つめていた。
「よく考えたら......」と呟いた。「処刑されるべきなのは王子の方だろ!」
そしてそのゲームを始めて以来初めて、俺はヴェラリン・シルバークラウンを悪役として見なくなった。彼女は間違っていたから負けたのではない。物語が最初から彼女に弁明の機会を与えなかったから負けたのだ。あの世界は最初から彼女の役割を決めていた。ヒロインが正しく見えるための、ただの踏み台として。
考えれば考えるほど、腹が立った。
だがそれをもっと深く考える前に、俺の人生の方が先に終わった。
あの隠しエンディングを見つけた直後、死は突然やってきた。何の前触れもなく。何のドラマもなく。一秒前まで画面を見つめていたのに、次の瞬間にはすべてが暗転した。
そして再び目を開けたとき、俺を迎えたのはもう自分の部屋ではなかった。
『Magic and Love』の世界だった。
俺はただの平民として転生した。
名前はレイモンド。
地図にもほとんど載っていないような小さな村で生まれた。貴族の血はない。遺産もない。両親はただの平民で、日々の労働で暮らしを立てていた。
最初は少し期待した。もしかしたら凄まじい魔法の才能を持って目覚めるかもしれない。無限の魔力、あるいは他の異世界モノにあるようなチート能力があるかもしれない、と。
だが現実は、俺はただの一般人だった。特別なスキルなし。隠された力もなし。
その現実を受け入れるまでに何年もかかった。だが同時に、大事なことにも気づいた。
確かにチート能力は持っていない。だがこの世界の誰も持っていないものを、俺は持っている。
知識だ。
前世の知識。この世界にまだ存在しない概念、道具、技術についての知識。そして最も重要なのは、ゲーム『Magic and Love』のストーリーについての知識だ。
何が起こるか知っている。誰が何をするか知っている。そしていつすべてが崩壊するかも知っている。
だからその時から、俺は準備を始めた。魔法ではなく。力でもなく。
頭を使って。
そこから、この世界での俺の道が本当に始まった。




