高校最後の文化祭(初日)
今年度の御船女子高校の文化祭は9月の半ばに3日間の日程で行われる。各クラスによる出し物の他に、体育館のステージでは各部活動および生徒有志による出し物、芸能人のトークショーがあるようだ。
我が3年1組の出し物は劇だった。上演時間は初日の午前。文化祭がスタートしてすぐだ。劇の内容を簡単に説明するなら、『両想いであるはずの2人が、お互い相手に惚れさせ、相手から告白させようと企む』である。ちなみに俺が主役で、真奈がヒロイン役だ。
他のクラスも劇を出していた。俺が各クラスの出し物が書かれたパンフレットを読む。劇の内容は、『賭け事が合法な学園でひたすら賭け事をする』だったり、『可愛いけど冴えない女の子をヒロイン役にしてゲームを作る』だったり、『貧乏高校生が五つ子の家庭教師をする』だったり・・・これ原作見た方が早いんじゃないの?
俺はそんなことを考えつつ、劇が始まった。
◇ ◇ ◇
「童貞のくせにバカにしやがってよぉぉぉ!!何が○○○だよ。○○○しろオラァァァ!こんなガキにまでシカトされるなんて!どーせ爪はボロボロ髪もボサボサで・・体はキズだらけ女としての魅力がなくなったから・・・・だから私の言うこと聞かねーんだろ!?」
劇の終盤、クリスマスにデートをするシーンで真奈は劇のためにセットした髪を下ろし、原作にはないはずのセリフを言う。そしてお互い「好きだ」と告白し、雪が降る中、キスシーンをして終了。会場全体が拍手に包まれ、幕が下りる。そして・・・
「渡辺くんに真奈ちゃん、お疲れ様。さすが恋人同士ね」
「ああ。サンキュ。しかし、カツラはやっぱ蒸れるわ」
「って言うか最後のは何なの智花!このセリフ、違う作品じゃん!」
「いやいやゴメンゴメン。これ、どうしても言わせたくってさ」
真奈がこの劇の脚本と演出を担当した明石に一言、文句を言っていたのも書き足しておこう。
◇ ◇ ◇
クラスの劇が終わると、今度は演劇部の出し物がある。ちなみにこっちはオリジナルのストーリー。明石と栗山が揃って主役を演じる。で、俺は脚本と演出を担当し、ひたすら裏方に徹する。劇が終わった俺はすかさず部室に向かい、午後から上演する演劇部の出し物の準備に取り掛かる。
「ちょっと渡辺くん。この内容、本気?」
「さすがに女の子同士でキスをするのはちょっと・・・」
「私と咲がいくら親友同士と言ってもね・・・」
「そうだよ渡辺くん!だって私と智花は所詮、女の子同士だし・・・」
俺が書いた脚本に、明石と栗山が文句を言ってくる。俺は「フリだけでいいから」と言うが、2人は「いくらフリでも・・・」と言ってきた。・・・すまん。
まあ、そんな感じで劇は始まった。ちなみに劇の内容は、明石と栗山が演じる卒業を控えた女子高生2人の話。1・2年生も後輩役として出演している。そして最後、桜の木のセットが置かれた下でセーラー服姿になり、卒業証書が入った筒を手にした明石と栗山が・・・
キスをした。
これはあくまでフリだけなのかもしれないが、キスの瞬間と同時に幕が下り、客席からは拍手と歓声、そして悲鳴が聞こえてきた。
◇ ◇ ◇
「あれ、最後めっちゃ恥ずかしかったんだからね!」
「結局フリで済ませたけど、客席からはしっかりキスしてるようにしか見えなかったよ、絶対!」
劇が終わり、俺は2人に「お疲れ様」と声を掛けたが、2人からはこう言われてしまった。
「でも、俺たち3年はこれで引退だし、最後の思い出作りにはちょうどよかったんじゃないか?」
「ちょっとバカなこと言わないで!私と咲がいくら親友でも・・・」
「渡辺くんには真奈ちゃんがいるからいいかもしれないけど、私と智花は彼氏いないんだよ?私、もうお嫁にいけない・・・」
俺は2人から散々文句を言われる。しかし、2人とも言いたい放題だな。そして・・・
「それもそうだけど、私の扱い、ほとんどモブだったよね?」
「私だって3年生なのに・・・扱いの差、酷くない?」
「希望と里菜の言う通りだよ。私たち3人、ほとんどセリフがなかったんだよ!」
2人に続いて、増田・宮崎・矢野も立て続けに俺に文句を言い始めてきた。・・・なんか色々ゴメン。そして、顧問である平野先生から「とりあえず、3年生はお疲れ様。これで引退なんだから、ケンカはそこまでにして仲良く終えましょう」と言われた俺たち6人は、放課後の打ち上げで、2年生で新たに部長に就く平尾桃奈ちゃんから花束を受け取り、誰もいなくなったステージ上で記念撮影をしたのであった。




