これからのこと
5月下旬、中間テストが終わったその日の放課後、俺は職員室に呼び出された。俺を呼び出したのは俺のクラスの担任である平野先生だった。
「渡辺くん、あなたに話があるの」
職員室に入った早々、俺は平野先生にこう言われた。
「渡辺くんももう2年生。高校生活ももうすぐ折り返しよ。渡辺くんは高校卒業したら、どうしたいの?」
「うーん・・・みんなと違って、芸能界で頑張りたいというわけでもないし、まあ普通に大学行って、普通に就職できたらいいかな・・・って思います」
「そう。渡辺くんは頭もいいし、今からしっかり勉強すれば、難関大学も狙えるわね」
「あっ、でも俺、母子家庭だし、ちゃんと大学に通えるお金があるかどうか・・・」
「そこは奨学金借りればいいんじゃないの?渡辺くんのような母子家庭なら、返す必要ないかもしれないし」
「そうですね」
「ところで、渡辺くんは何学部志望なの?」
「うーん、まだ具体的には決めてませんが、とりあえず文系学部に行こうかなって・・・」
「なるほど・・・じゃあ渡辺くんは将来、どういう職に就きたいの?」
「それは・・・どういう職に就きたいかどうかはまだ、そこまで考えていませんが、母親に苦労と迷惑はかけたくないなとは思っています」
「そう・・・でもまだ高校生活は半分以上残っているから、これからしっかり考えておくように。時間はまだあるんだから」
「わかりました。2年生のうちに将来どうしたいか、考えておきます」
俺は平野先生にこう言うと、そのまま職員室を後にし、みんなと少し遅れて部活に向かった。向かった先は軽音楽部。1年生が数人入部してきたので、部内は賑わいを見せている。
「渡辺くん。さっき、久美子ちゃんと何話してきたの?」
「高校卒業したらどうするかについて」
「そっかぁ。もう高校生活も半分しかないもんね〜」
「お前こそどうするんだよ」
「私はオーディションがあるから」
「そのオーディションが受かればいいんですけどね!」
部室に着いた途端、内藤が俺にこんなことを言ってきた。俺も内藤に言葉を返す。余談だが内藤は最近、ネットで動画配信を始めた。アイドル志望ということもあって、内容は歌を歌ったりダンスしたり。ラジオのようなトークもする。内藤曰く、結構反応がいいらしい。
そして、みんなはまだ昼食中。俺も部室に着くや否や、昼食を取った。この日の昼食は朝、学校近くのコンビニで買った冷やしうどんとおにぎりだ。そして昼食を食べ終えると、部活が始まった。
夕方、部活動が終わると寮に戻った。寮に戻るや否や、俺は川端に呼び出された。
「なんだよ川端、俺を呼び出すって珍しいな」
「珍しくはないと思うけど」
「いやいや珍しいって。それより川端、何の話だ?」
「ちょっと、進路の話」
「進路?」
「うん。私、声優目指してこの学校入ったんだけど、2年生になってもなかなか結果出ないから・・・」
「声優なんて、高校卒業してからでも余裕だろ」
「そうだけど、希望や梨沙がもうオーディション受かって事務所入ったあたりから私も焦り出してて・・・」
「焦る必要はないよ。声優なんて遅咲きの人結構いるみたいだし。ただ、30歳が女性声優の賞味期限ってのは聞くけどな。まあ、とりあえず大学には行っておいた方がいいな」
「ありがとう。渡辺くんの話、とても参考になったわ」
難しい話だな・・・俺も川端にあんなことを言ったけど、声優についてはそこまで詳しくないし。
「つーか川端、実家戻らないのか」
「え?」
「実家、横浜だっけ?」
「うん。でも戸塚だから、ここから電車で40分くらいかかるの」
「そうなんだ」
「うん」
話が続かない。えーっと、次はどんな話を振ろう。あっ・・・
「そういえば川端、誕生日今日だったな。おめでとう」
「あっ・・・知ってたんだ」
「まあ、俺からはプレゼントはないけどな。でも、気持ちだけでもプレゼントにしたいくらいだよ」
「ありがとう・・・渡辺くんの気持ちだけでも私は嬉しいよ」
こうして俺との会話を終えた川端は、満面の笑顔で寮を後にした。
彩加を出したのは、ぶっちゃけ今日が誕生日だからという理由です(笑)




