ヒント・BL道は乙女の嗜み
5月ももう後半に入った日曜日、俺は西崎花にデートに誘われた。花は俺からしてみれば、小中の1年後輩。しかも実家が徒歩1分もかからないところにあるので、幼なじみ同然の付き合いだ。そして、先月俺は花に告白された。俺は花の告白をフッたが、花はまだ諦めていないようだ。
「おい、明日から中間試験なのにいいのかよ」
「どうせ先輩は学年トップレベルだから1日くらい遊んでもいいでしょ」
「そういう問題じゃなくてだな・・・」
寮の最寄駅から電車で30分あまり。向かった先は秋葉原だった。意外と遠い。・・・そういえばあいつ、声優志望でこっち来たんだよな。部活もアニメ・アイドル研究部に入ったって言ってたし。毎週末、花は秋葉原に行っていると言っていた。
「せんぱーい、私ここ入りたいんですけどいいですかー?」
秋葉原に着くや否や、花は雑居ビルにある書店の方に指を向けた。男性のイラストが書かれている。俺も花について行こうとするが・・・
「先輩はここで待っててください。ここからは乙女の嗜みなんです」
入り口の前で花に止められた。そして花は店の方に入って行った。その間、俺は仕方なくスマホを触る。時刻を確認すると、もう12時を過ぎていた。そして、真奈からLINEが届いていた。真奈は今日、握手会で横浜にいる。そして、セーラー服を着た真奈の画像も送られていた。隣には寺内もいる。現場で撮ったようだ。真奈曰く、今日の衣装らしい。そして、やっぱり真奈は可愛い。世界一可愛い。俺の同級生はみんな可愛いけど、俺は真奈のことをまだ諦め切れないようだ。
しばらくして、買い物を終えた花が戻って来た。両手には買い物袋がいくつもあり、色々買ってきたようだ。俺は「何買ってきたんだ?」と花に聞いたが、「乙女の秘密です!」と言われた。結局、この日花が買った物は俺に明かされることはなかった。
時間が時間なので、買い物を終えた2人は昼食を食べることにした。初夏の晴天。暑い。そして日曜日ということもあって、多くの人でごった返している。結局、駅前のファーストフード店で昼食を食べることにしたのは言うまでもない。やっぱり金のない高校生はここで食べるのが一番。
「やっぱり私と先輩って、カップルに見えますか?」
食事中、俺は花にこんなことを言われた。確かに、高校生の男女2人が一緒に食事をとる光景はカップルそのものだ。俺はふと花を見る。少し低い身長に、綺麗で長い黒髪。そして雪のように白く透き通った肌。『恋人』というよりは、『妹』や『娘』という感情が合致するのかもしれない。要は、花を誰よりも守らなくてはならない、保護者みたいな気持ちが俺にはあるのだ。結局、花に「先輩、何食事中私のことジロジロ見てるんですか。気持ち悪いです・・・」と言われたが。・・・軽く凹む。
食事が終わると、2人で書店に向かった。俺自身、前々から買いたかった漫画本があるのだ。それも複数冊。俺はその漫画本をまとめ買いし、花も漫画を1冊買った。
「先輩、秋葉原まで行って漫画買うんですか。そんなの地元でも買えるのに・・・」
買い物を終えると、俺は花にこう言われた。俺は「お前と違って一般人なの!」と言葉を返したが。で、その後、俺と花はゲーセンに向かった。ゲーセンでは2人でアーケードゲームで対決をしたり、UFOキャッチャーをした。花はUFOキャッチャーが得意で、俺も花にコツを教えてもらったので、お互い色々景品をゲットした。
そして最後は2人でプリクラを撮った。流石にチューはしなかったが、お互い手を繋いだ写真、抱き合った写真、2人でハートの形を作った写真はまさにカップルそのものだ。我ながら見てて恥ずかしい物がある。
「先輩にこれを言うのもアレなんですけど、我ながら見ていて恥ずかしいですね。どう考えてもカップルにしか見えません・・・」
花もそう思っていたらしい。しかし、「まあ、私は先輩のことが大好きですからそれくらいでは気にしませんけどね」と花はすぐ言ったが。
そしてゲーセンを後にし、帰路につく。もう夕方だ。5時を回った。流石に明日から中間試験なので、寮に戻ってからはしっかりと勉強したい。
「先輩、今日は楽しかったです。流石私が大好きな渡辺先輩です。また私とデートしましょうね!」
「ああ、俺も楽しかったよ。今度はカラオケでもしような」
寮に戻る前、花は俺にこう笑顔で言い、俺も笑顔で花の言葉を返した。そして、2人で手を繋ぎ寮に戻った。
そして俺はこの時、花の笑顔を誰よりも守りたい、と強く思った。
果たして優斗は、真奈の未練を断ち切れることができるんでしょうかね・・・




