あなたにはわからないでしょうね!
今回は遥視点。恋愛の嫌な部分を書いています。
「やった!渡辺くん、優勝したよ!今でも好きです!大好きです!愛してます!まだ諦めていません!」
私、若井遥は体育祭で借り物競走という競技に参加した。書かれた内容は「好きな人」。みんな同じような内容だったらしく、全員で渡辺くんを取り合う結果となった。結果は僅差で私が優勝。そしてどういうことか、私はこの後渡辺くんに上のようなことを言ってしまったのだ。なんでそんなことを言ってしまったのかはよくわからない。ただ、優勝したのが嬉しくてそれだけ興奮していたのは確実だ。
私の言ったことに渡辺くんも真奈ちゃんも動揺していたと思う。感情では表に出してはなかったかもしれないけど、心理的にはかなりのダメージだったに違いない。
夕方、体育祭が終わると、教室で打ち上げが行われた。久美子先生と佳奈先生も同席。私たち生徒はジュースとお菓子でわいわい盛り上がり、久美子先生もテンションを高くしながら、「みんなよく頑張ったね〜」との挨拶。そして私には、「遥ちゃん、今日はお疲れ。借り物競走、優勝おめでとう」と言ってきた。私は「ありがとうございます」とだけ言った。その間、渡辺くんと真奈ちゃんは何か話していた。イチャイチャしているようにも見える。悔しいけど仕方ない。そして、「優斗、私が頑張っている姿、ちゃんと見てくれた?」と真奈ちゃんが渡辺くんに言っているところはちゃんと聞こえた。渡辺くんは、「ああ、でもお前ずっと応援ばっかしてたじゃん」と真奈ちゃんに笑いながら返していた。それに対し真奈ちゃんは、「えへへ」と笑いながら返す。そして、
「優斗、私が誰よりも優斗のことが大好きなんだから、誰にも負けないよ。だから、優斗も私のことをずーっと好きでいてくれるよね」
と真奈ちゃんが言う。そして渡辺くんは、
「うん、俺も真奈のことが大好きだ。誰よりも愛している。だからこれからも、ずっと一緒にいよう」
と真奈ちゃんにそう言葉を返していた。それに対し、「うん。だから私、優斗のことだーい好き♡」と真奈ちゃんは笑顔の表情で言葉を返した。そして2人は濃厚な・・・キスをしていた。
この一部始終は私だけではなく、クラスメイトも見ていた。教室で堂々とイチャイチャしているんだから、クラス全員この一部始終を見ていたと思う。
「とんでもないの、見ちゃった・・・」
「やっぱあの2人、アツアツだね・・・」
「しかし、人前で堂々とあんな風にイチャつくなんて・・・」
亜美ちゃん・明日菜ちゃん・真希ちゃんがそれぞれ、小言を口にしていた。2人が付き合うようになってから、いつもこんな調子。そんなことは何度も見ているのでわかってるけど、好きな人がこんな風に彼女とイチャイチャしているのを見ていると悔しくて、悔しくて、とてもやり切れない。
寮に戻り夕食を終えると、私は真奈ちゃんを自室に呼び出した。風呂まで少し時間はある。「遥、何の用?」と部屋に入った真奈ちゃんはそう応えた。そして、その瞬間・・・
一発のビンタが真奈ちゃんの頬を直撃した。真奈ちゃんは、「遥、何すんの!」と声を荒げる。そして私は・・・
「あなたにはわからないでしょうね!好きな人を取られた気持ちなんて!」
と真奈ちゃんに声を荒らげながら叫んでいた。そして、立て続けに暴言、罵声を飛ばす・・・正直この時、何が起きたかは自分でもよくわかっていない。ただ、好きな人を取られた、そして好きな人を奪った相手が目の前にいる・・・という気持ちが真っ先に走っていた。それ以上のことは覚えていない。
「ごめんね・・・遥がそんな風に思ってたなんて知らなかった・・・」
私が我に返った時、真奈ちゃんは体育座りになり、泣き崩れていた。時を同じくして、「ちょっと、何事なの?」と久美子先生がやってきた。久美子先生は、「真奈ちゃん、泣いてるじゃない!」と私に言う。そして渡辺くんも部屋に駆けつけ、「さっきすごい音したけど、お前、真奈に何したんだ!」と声を荒らげながら言ってきた。私は2人に事情を説明し、久美子先生は「・・・そう。気持ちはわかるけど、感情的になるのはダメよ」と、渡辺くんは「ごめんな。これからは気をつけるわ」と言っていた。そして私は、
「私ね、優斗のことが大好きなの!絶対に諦めない!略奪愛でもやっちゃうんだから!」
と部屋を後にする渡辺くん・・・優斗にこう叫んだ。




