Episode-4 毒をもって毒を制す
教壇に立つ五十嵐先生は全く表情を変える事なく淡々と話し始める。
「既にパンフレットを読んだものは知っていると思うが、この学校のC組、つまりお前たちは若くして犯罪を犯した者の集まりだ。要するにゴミ溜めという事だな」
そう言葉にする先生は一度視線を上げてまるで軽蔑したような視線へと変わる。
半分近くはその言葉をあまり気にした風には見えなかったが、残りの半分はその言葉に対して五十嵐先生を睨みつけるような態度へと変わる。
その中でも特に攻撃的な部類、朝一に俺に突っかかってきた廊下側の席の先頭に座っているあいつはクラスを代表するかの如く大声を張り上げる。
「おい、てめぇ!なんの権限があって俺らをゴミ溜めとか言いやがる!さっきまで大人しく説明聞いてたけどよ、流石にその言葉には我慢ならねえなぁ!テメェらもそう思うよなぁ!?」
そいつは後ろを振り向いて同じ意見を持つ者を集める。
このクラスは流石低レベルと言えるだけあって、あの馬鹿に同調する者が多い。
それに興味なさそうな半分の人間ははもう既に他事をし始めているが、あの馬鹿を筆頭にした脳みそが足りないヤツらはどんどん声を張り上げていく。
流石にうるさいなと思ってきた頃にようやく先生が静かにしかしよく通る声を発した。
「一旦黙れ、お前ら。そもそもの問題だが法を犯した者たちがゴミと呼ばれるのは仕方がない事だろ?実際それだけの事をしたんだから」
先生の言葉に正論だな、と思いながら俺は耳を傾ける。
「あと注意しておくがこれ以上お前たちも騒ぐな。この学校のC組を運営しているのは警視庁だ。そしてこの俺も警視庁の中で警部の位についている。つまり最悪の場合、お前たちへの射殺許可も出ているというわけだ。死にたくなかったら理解しておけ」
五十嵐先生が冷たい声でそう言い切るとざわめいていたクラスが一瞬で静まり返った。
それにしても射殺される可能性もあるとは思わなかったな。
「……話は戻すが、お前たちに馴れ合いは不要だ。とは言っても高校生らしい体育祭や文化祭等の行事には参加するが、あまり一般のクラスの人間と関わる事は禁じる。また授業も普段は通常通り行う。先生は一般校舎から来てもらうが、勿論後ろで俺の監視付きだ」
ずいぶん俺たちは危険視されているようだな。
まだ端末で自分以外のデータは見ていないが、どんな犯罪を犯した人間が集まっているか気になるところだ。
「まぁとりあえず学校ではそんな感じだ。特別校舎にも授業以外では原則立ち入り禁止な事は覚えておけ。それでお前たちがこのクラスに集められた1番の理由は日本の犯罪者を犯罪者の手で捕まえる事にある。まぁ一言で言うなら毒を持って毒を制す、というわけだな」
これもパンフレットで呼んだばかりの事だ。
人間は時に凶暴になる。大きい罪を犯した犯罪者となればその凶暴さも計り知れない。
警察は自らの手で犯罪者を捕まえようにも、死傷者が出てしまう事を防げない場合がある。
その為の俺らというわけだ。
コントロールできる犯罪者を育てて野良の犯罪者にぶつければ警察は全く損害を負う事はない。
死ぬにしても罪を犯した者だけが死ぬわけだ。
パンフレットを簡単にまとめるとこうだ。
・命令が下った場合、期限内に実行しなければならない
・一般人の見てないところでならターゲットを殺しても構わない
・一般人に危害を加えてはならない
対犯罪者に対しての要項ではこんな感じだ。
俺たちはこれからクラス一丸となってターゲットの犯罪者を始末しなければならないようだ。
気がつくと先生の説明も終わっており、朝礼後の10分間の休憩へと突入する。
最初から最後まで顔色を全く変えなかった五十嵐先生が教室を退出していくのを見届けてから、俺はどうやら相当ヤバいところに来てしまったなという事を嘆いたのだった。




