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犯罪者クラス~目には目を、歯には歯を、犯罪者には犯罪者を~  作者: 86


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Episode-2 Crime Class

「……てめぇナニモンだ?」


 そう荒々しい声を発してくるのは大柄の赤い髪を逆立て眉間に皺を寄せた男性。


 とてもではないが高校生とは思えない容姿をしているが制服を着ている事から高校生なのだろう。


「……まさかとは思うがクラスメイトか?」


「キヒヒ、まあな。てめぇも俺のナイフを摘むとはやるじゃねえか。……これならどうだ!」


 そいつはまるで俺の事を面白い玩具でも見つけたかのように全身を舐め回してからゆっくりと近づいてきて俺のすぐ目の前で立ち止まると唐突に足を回してきた。


「……短気なのも困りものだな」


 俺はそれを軽く腕を盾にして塞ぎきると制服に忍び込ませていた短刀を取り出し喉元へと突き立てる。


 しかし相手も相当喧嘩慣れしているようで瞬時に頭を後ろに下げて攻撃を避けてから俺の腹を両足で蹴り飛ばした。


 見事なまでのカウンターだ。


 少しだけ後ろへ吹き飛んだが、大したダメージにはなっておらず、すぐ体勢を立て直す。


「……へぇ、中々やるなお前」


 そう一言発してからそいつは先程俺が短刀を取り出すと同時に捨てたナイフを拾い襲いかかってくる。


「……はぁ、めんどいな」


 思わず本音が漏れてしまいそれを聞いた相手は今度は鬼の形相へと変わり怒りを表してくる。


「てめぇ、なんで言いやがった!?俺とのタイマンが面倒いだと!?」


 別に俺は喧嘩や戦闘が好きなわけではない。


 やらざるを得ない状況に追い込まれたら仕方なくやるというだけだ。


 だから今こいつと戦うのも正直面倒臭い。


 なのでここからは瞬殺したいと思う。

 

「てめ……」


 俺はヤツが何か話しかけようとしてきたが、そんなの気にせず一瞬で間合いを詰め顎下に掌底を叩き込む。


「アガッ!」


 そして続け様に回し蹴りを横腹に入れる。


「グフッ!」


 ヤツは大きく横へと飛び教室後ろのロッカーへと激突していった。


 そこへトドメを刺すべく駆け出そうとしたら前方の教室の扉が開き聞き慣れない声が教室全体に響いた。


「……毎年いるもんなんだな、お前らみたいな馬鹿は」


 そう発したのは整った顔立ちをしているが鋭い目つきが特徴的なスーツを見に纏った男性だった。


「……あなたは?」


 もう既に伸び切っていて言葉を発する事も出来なさそうな赤髪に代わって俺が質問する。


「俺は五十嵐雅臣(いがらしまさおみ)。一応お前らの担任だ」


「先生でしたか」


「お前は教師に暴力現場を見られたのに動揺しないんだな」


 俺の態度が不自然に映ったのか五十嵐先生は少し興味深そうな顔を見せる。


「これはれっきとした正当防衛ですし、何よりこのクラスでは生徒同士の喧嘩で負った怪我に関して自己責任、ですよね?」


「……当たり前だ。勿論例外として教師への暴力などあるがな」


 五十嵐先生は生徒と深く会話する気はないのかさっさと話を終わらせて前の教卓で荷物整理を始める。


 俺はそこで一旦時間を確認すると時計の針はまだ7時20分を指していて朝礼にはまだ早い。


「先生は早いんですね。いつもこの時間から仕事の準備をしているんですか?」


 ただの興味本位、それだけのつもりで聞いたのだが先生は顔を上げてキッと目を細めてから少し低い声を出した。


「……俺だって早く来たくて来ているわけではない。お前らみたいな問題児を相手にするから早く来ているだけだ。初日からクラスが血で染まるのも嫌だしな」


 なるほど、先程五十嵐先生は俺たちみたいな馬鹿を毎年いると言っていた。


 つまり俺たちの先輩方にも授業初日から喧嘩をする喧嘩っ早い人も多くいたわけだ。


 俺は先生が来た事だしと思って赤髪の現在後ろで伸びている奴を放置したまま自分の名前が書かれた席へと移動して着席する。


「夏目白夜」


 唐突に名前が呼ばれてそのまま顔を上げるとちょうど教卓に立っている五十嵐先生と目が合った。


「お前の事は知っている。妹の為とは言え34人もの人間を殺した日本が産んだ狂気の悪魔だという事をな」


 俺はその言葉に「へぇ、ご存知なんですね」と相槌を打ったが目が笑う事はなかった。


「このクラスでもお前以上にヤバいやつはいない。さっきだって俺が来なければお前はそのままそいつを殺していただろ?」


「よく分かってますね。殺られる前に殺る。これは俺たち殺人鬼にとっては当たり前の事です。さっきはこいつから襲って来たから俺が殺しても問題ない。そういう事なんです」


「……過去は優等生だったと聞いているが、その面影もないな」


 五十嵐先生はそう少し悲しそうな者を見る目で見つめてくる。


「……優等生なだけじゃ本当に大切な人は守れないですから」


 俺にはそう言い返すのが精一杯だった。


 先生はそんな俺に対して既に興味を失ったのか荷物の整理を再開させている。


 少し経ってから後ろで伸びていた赤髪も辺りを見回してから先生の存在に気づくと「ちっ」と舌打ちだけして廊下側の席の1番前に座った。


 それから誰も言葉を発さない少し気まずいまま時が過ぎていったが7時40分を超えた辺りから徐々に生徒が登校してきて8時前には全ての席が生徒で埋まる事になった。


 ここにいるのは犯罪者ばかりでルールに囚われない者ばかりのはずだが、どうやら初日から登校拒否する馬鹿はいなかったらしい。


 そしてちょうど長針と短針が8時で重なった時にようやく五十嵐先生が口を開いた。


「それではこれより朝礼を始めていく」


 こうして俺にとっての波瀾万丈になりそうな高校生活が幕を開けたのだった。

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