Episode-1 聖帝学園高等学校
俺が目を覚ますと見慣れない天井が飛び込んできた。
さっと起き上がり、辺りを見回してみると、どうやらここは7畳ほどの部屋のようだ。
テーブルの上に何やら冊子が置いてあったのでそれを手に取ってパラパラと捲っているうちに先月の出来事が記憶として蘇ってきた。
先月、俺は警察に捕まる事を覚悟の上で妹の仇として分かる範囲の親族を皆殺しにした。
殺した人数が5人を超えたあたりで善悪の区別はつかなくなっていた。
最後の殺人を完遂した後に自首しようと警察を待っていたら突如、怪しい男が俺に声をかけてきた。
「おめでとう。合格だ。来月から君は聖帝学園高等学校に通ってもらう事になるよ。勿論断れば君を始末せざるを得なくなるから実質拒否権はないようなもの。分かるよね?」
確かこんな感じだったと思う。
周りを見渡してもいつの間にか射殺準備を整えていた警察に囲まれていた。
俺に断るという選択肢はないようで首を縦に振るという行為しかできなかった。
そして昨日。
俺は今まで過ごしていた一軒家から退去して聖帝学園高校の入学式に参加した。
ちなみに一軒家を売った事による出来た金は俺の通帳にいずれ振り込まれる手筈となっている。
入学式終了後はクラス毎に寮へと案内されてその後疲労からすぐ眠ってしまったようだ。
今俺がいるこの場所こそが聖帝学園高校の1年C組の学生寮だ。
この寮は5階建てとなっており、1階に食堂やラウンジ、大浴場等があり、2階と3階に男子部屋、4階と5階に女子部屋という造りになっている。
この寮を出て左に立っているのが2年C組の学生寮、その向こうに3年C組の学生寮が建てられている。
俺は昨日目を通さなかったパンフレットに一通り目を通してから支度を整えて部屋を出る。
時間で言えば7時過ぎ。
ちょうど皆朝食を摂っている時間だ。
エレベーターを使い1階に降り、まだ利用者が少なく静寂に満ちた食堂を通り過ぎてから玄関を出て教室へと向かう。
ちなみに俺は朝食を不要と考える人間で、毎朝特に口に何かを入れる事はない。
外に出るとやや肌寒い空気が全身を撫でる。
まだ朝も早いようで外を歩いている生徒の数も少ない。
朝礼の開始時間が8時からで、学校の建物まで5分で着く距離にある為俺みたいにわざわざ早い時間に寮を出る必要はない。
そんな事を考えながら歩いているとすぐに建物に到着し、正面からそれを見据える。
建物自体は普通だが、歪な形をしている。
正面向かって一番左に大きい建物があり、その横に渡り廊下のみで繋がっただけの左の建物の半分くらいの大きさの建物、そして一番右には圧倒的に小さい建物が建っていた。
まさに大、中、小という感じだ。
パンフレットには確か順に一般校舎、特別校舎、C棟と呼ぶと書いてあった。
一般校舎とはA組からE組の教室があり、特別校舎には主に理科室や体育館など特別教室があるらしい。
そしてC棟とは各学年のC組のみを隔離した場所となっているそうだ。
C組が入って良いのは授業時の特別校舎まで、授業時でなければ特別校舎にすら入れない。また、A組からE組も似たようなもので普段入れるのは特別教室まで、しかしこちらは授業時以外でも特別校舎には入って良いらしい。
俺はC組差別が酷いな、と思いながらも1番右にあるC棟の校内へと足を進めるのだった。
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改めてこの聖帝学園高等学校について説明したいと思う。
この学校は首都圏にあり、全校生徒約300人の進学校だ。
偏差値は70を超えており、毎年超難関大学への進学実績を持っている日本でもトップレベルの高校である。
そんな有名高校だがこの学校にはC組という謎に包まれたクラスが存在する。
というのもC組だけ別の寮で暮らし、C組だけ別の校舎で過ごす。
まさに隔離されていると言っても過言ではない対応。
この対応に聖帝学園高等学校通称聖学に在籍するほとんどの一般生徒が疑問を抱えるが、結局何故隔離されているのか分からぬまま卒業していくのが常である。
というのもこのC組は実は中学時代に犯罪を犯した若き犯罪者の中で選ばれた者が通うクラスなのだとパンフレットには記載されてあった。
そして何よりこのクラスは一般人には秘匿されているが、政府公認で運営されているクラスでもある。
まだ俺もこのクラスに対しての理解度が高くはないが、今日教師からの説明もあるだろう。
そんな事を考えながら俺はC棟の玄関で靴を履き替えて教室へと向かう。
正面からはよく分からなかったが、中に入るとそれは進学校とは思えないほど荒れていた。
どちらかというと不良たちが通う底辺高校の方が近い気がする。
別に窓が割れていたり落書きが多かったりという事ではない。単純にボロいのだ。この様子を見るだけで扱いの差が窺い知れる。
俺がこれから通う1年C組の教室は階段を上がってすぐの場所だ。
教室に辿り着き扉に手をかけると中から人の気配がした。
人数は1人。
特に危険もないだろうと思い扉を開けたが、まさにそれが間違いだった。
扉を開けると同時に目の前に飛んでくるナイフ。
普通こんな事は起こらない。
いや起こってはいけない。
一般的に法律というものが存在しているから。
しかしその法律が関係ない無法地帯、それがこのC組だ。C組のCはcrime(犯罪)のC。
改めて俺はこのクラスの恐ろしさを痛感した。
俺は目の前に飛んできたナイフの先を右手の人差し指と中指の間で摘みながらこのクラスに普通は通じない事を知ったのだった。




