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犯罪者クラス~目には目を、歯には歯を、犯罪者には犯罪者を~  作者: 86


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Episode-0 血塗られた怪物

「ひっ、こ、来ないで!わ、私たちが悪かったから!ねぇ、許して!」


 薄暗がりの屋敷の中、1人の女性の悲痛な叫びが響き渡る。


 辺りは血で赤く染まっており、数人が血の海の中に倒れ込んでいる。


 そしてそれを何の感情も持たないかのように血の海の上に立つ少年は無表情のまま見下ろしている。


「わ、私たちが何か悪い事した!?ねぇ、私たちが何したっていうの!?」


 何故自分がこんな目に合わないといけないのか、そんな表情を少年に向けながら女性は叫び散らかす。


「お前たちの罪は妹を殺した事」


 少年はあくまで冷静に、しかし全く感情のこもってない声を発する。


 それに対して女性は勘違いも甚だしいとばかりに泣き叫ぶ。


「私たちは全く殺してないわよ!あいつが勝手に自殺したんでしょ!それを私たちの……」


 そこで彼女の言葉が途切れ、首がずり落ちた。


「……鬱陶しい。そもそもお前たちの言葉なんて最初から聞くつもりはない。妹を自殺に追い込んだのはお前たちだろ」


 少年が手に持っていた刀を躊躇いなく振り下ろしたのだ。


 少年は血が付着した刀身を振り払い、辺りの死体を見回しながら呟く。


「……とりあえず親族は全員殺した。これで小夜(さよ)も報われるはず」


 そう言葉を発する少年の顔には相変わらず感情というものがなかった。


 彼はこの1週間で両親に始まり、祖父母、叔父叔母、従兄弟、大叔父大叔母、再従兄弟(はとこ)など多数の親族を手にかけた。


 理由は明白であり、彼らが少年の妹を自殺に追い込んだからだ。


 妹の名前は夏目(なつめ)小夜。


 勉強も運動も得意ではないが、それでも少年にとっては可愛い1つ年下の妹であった。


 しかし夏目家は日本の中でも有名な名家であり、頭脳明晰で才色兼備な者を優遇する風潮がある。


 幸い少年は全てにおいて優秀だった為親族全員に可愛がられていたが、対照的に妹の小夜は差別を受けていた。


 家では少年と違い栄養価の低い食事を出され、寝床は物置部屋。食事の時以外リビングに顔を出す事も許されず小夜はずっと物置部屋で1日を過ごしていた。


 勿論そんな扱いを受ける妹を気の毒に思った少年は両親に内緒で食事を与えたり、遊び相手になったりとしてあげたのだがそれでも小夜の心まで救うことは叶わなかった。


 才能のない者はとことん迫害する、それが夏目家の教えだったのだ。


 ついにそんな扱いに耐えきれなくなった小夜は1ヶ月前に自ら首を吊って命を絶った。


 一応葬式は行われたが、少年以外に悲しむ者はいなかった。それどころか笑みを浮かべる者がいたくらいだ。

 

 何故妹が死ななければならない。


 何故妹が笑われなければならない。


 そう思った少年はまず妹を不遇に扱った両親を殺した。得物はいつも母が使っていた包丁だった。


 両親は疑問を浮かべた顔を向けながら生き絶えたが少年には何の感情も湧かなかった。


 少年は妹が死んだ瞬間に人間として壊れたのだ。


 両親を殺した後は他の親族を探し回り次々と手にかけていった。


 妹を馬鹿にした者、嘲笑した者、蔑んだ者、皆等しく血の海へと沈んでいった。


 そして先ほど殺しの対象者である最後の人間が死んだ。


 少年は刀を下げながら何の感情も持たない瞳を伏せて屋敷の中に突っ立っている。


 少年の名前は夏目白夜(なつめびゃくや)


 妹を殺された怒りにより復讐の鬼となり親族を虐殺した日本史上トップレベルの殺人鬼である。


⭐︎⭐︎⭐︎


 その一部始終を隣の家の屋根の上から観察している男がいた。


「……なるほど。彼が夏目白夜ですか」


 男は白夜の様子を見ながら意味ありげにメモをとり始める。


「彼が殺人を始めたのはたった1週間前。しかしこの1週間で殺した人数は34人。結果だけ見るとまるで怪物ですね。何人もの犯罪者を見て来ましたが、まさかこの世代は豊作なのでしょうか。彼以外にも師匠や兄弟弟子を手にかけた村雨紫苑(むらさめしおん)、国家機密を持ち出した天才ハッカー芹沢瑠衣(せりざわるい)なんかもいますしね」


 そう言って眺めるのはとある高校に入学予定の2人の生徒のプロフィール。


「いやはや日本の治安が悪くなっている事を嘆くべきか、それとも喜ぶべきか。到底私程度には判断できないものでしょう。私に出来る事は彼をただ分析し、合否を決める事のみ。と言ってもまぁ既に結論は出ているんですが」


 男は夏目白夜の情報が事細かに載った紙を見ながら1番下の空白の欄に合格という文字を書き込む。


「彼は危険だ。だからこそ戦力になれば心強いし、その過程で更生してもらえればなおよし。期待していますよ、夏目白夜」


 男は月明かりの中笑みを浮かべてそう呟く。


 そして暗闇の中へと姿を消していったのだった。

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