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勝利

超至近距離から放たれたレプの拳は空間に歪みを生じさせながら白黒野郎へと肉薄す。


それを、ソウェイルは…


「勝った…

と、お思いになりましたか?」


レプの手首を側面側から正確に打ち抜き、拳に触れることなく軌道をずらした。


直接当てなくてもダメージを与える絶空掌だが、有効範囲は存在する。

ソウェイルはそれを恐ろしい精度で見切り、防いだのだ。


絶技である。

尋常では目視すら難しい速度のレプの突きを正確に受け流しやがった。

それは銃の弾丸を箸でつまむような素早く且つ精緻な動きができなければ不可能な異形の偉業。


これだ。

ソウェイルは魔法と近接戦闘の両方を非常に高いレベルでこなす魔人。

魔法が得意な相手には接近戦を挑み、近接が得意な相手には魔法で遠くから攻撃してくる嫌な奴だ。

万能型であるが故に弱点がない。


技術はレプの方が上だが、身体能力はソウェイルのが上と言ったところか。

見たところ肉弾戦においてはレプとソウェイルはほぼ互角。


レプの絶空掌は起点をズラされ、ソウェイルの力強い打撃は華麗に受け流される。

まさに互角の様相を呈して殴り合う中、レプの背後から火球の雨が降り注ぐ。


レプが器用にも片手で最低限の火球を搔き消し、体が通るだけの隙間を作り出す。


「『膂力向上(パワーブースト)』」


ソウェイルがその僅かに攻撃が止んだ瞬間を狙ってステータアップ系バフ魔法を唱える。

白黒野郎のパワーとスピードが更に増し、拮抗していた打ち合いが徐々に押され始めた。


勝負は見えた。

レプは少しずつ防御が間に合わなくなってきた。


「に、げろ、荷物持ち」


その言葉を最後に、レプはソウェイルの拳が腹部へまともに入り、吹き飛ばされる。

樹木に体を強く打ち付けたレプは意識を失ったようだ。


本当に恐ろしいのは、この魔人はこれでも全盛期の半分にも満たない強さであるということだ。

ソウェイルはこちらに向き直ると、にこやかに笑みを浮かべて口を開く。


「武闘家が二人も居るなんて珍しいパーティーですねぇ。

さて…」


ソウェイルはその場で素早くしゃがみ込み、膝をついて(こうべ)を垂れる。


「お待たせ致しました、蒐集家殿。

ご存知かもしれませんが、わたくしは魔王軍幹部の1人、勝利の魔人ソウェイルと申します。

本日は貴方様にお願いがございまして参上致しました。」


そういえばソウェイルは“勝利”って意味だったな。

俺は手を挙げて気さくに挨拶する。


「おー、おひさ」


「率直に申し上げます。

貴方様が魔王様から収奪なされた魔宝、【偽史魔神典】を何卒お返し頂けないでしょうか?」


何だれそれ。

あ、アレか。


「あー、黒歴史ノートのこと?

ごめん、不要な記憶は収納しちまってるからよく覚えてないんだけど、あれはこの世界のパワーバランスを崩しかねないダメだ」


ソウェイルはいかにも嘆息しているかのように肩を落とした後、言葉を選びながら話を続ける。


「大変申し上げ難いことですが、これは最後通牒です。

もし、魔王様からお取りになった魔宝をご返却頂けなかった場合、我々魔族は総力をあげて貴方様と矛を交える所存でございます」


どうしてこの白黒はこんなに喧嘩腰なんだろう。

五年前に魔王ボコって黒歴史ノートかつあげしただけなのに。

…というのは冗談で、放っておいたら魔王が世界を支配しそうだったから、バランスを取る為に魔王から力の根源を取り上げただけだ。


そういえばこいつからも収集していたものがあったな。

一応返しておくか。


「じゃあこれ返すよ」


「これは…?」



「お前の心臓。」


ソウェイルから収集してあった魔人の心臓を投げ渡した。

今までこいつは心臓を失くしていたせいで全盛期の半分の力も出せてなかっただろうけど、これで力を取り戻したはずだ。


「有り難いことではありますが、出来れば魔宝をお返し頂きたいのです。

そして、どうやら貴方様は我々を侮っているご様子ですが、我々もただ手をこまねいていた訳ではありません。

この5年間、貴方様を倒す準備を進めて来たのです」


「へー」


「…貴方、弱くなったでしょう?

分かります、分かりますよ…

今戦えばわたくしが勝ちます。

わたくしの生涯に唯一の敗北を刻んだ貴方に!」


やべえ、めっちゃ戦う気だ。

なんか語り始めたし、今の内に準備しとこ。


えーっと、収納達人のよく使うものリスト呼び出し

・野宿セット

・休憩セット

・簡易トイレ

・収納王

・万能ナイフ

・…

・…


取り出し、【収納王】。


スキルを弄っている間、ソウェイルが何かをぶつぶつ喋っている。


「貴方のことはお調べしましたよ。

沢山二つ名が有るようですねぇ。

執囚禍“とりとらわれるわざわい”、歩く災い“ウォーキングディザスター”、破滅願望“ディザイアディザスター”、星禍“スター・ディザスター”、災禍の坩堝“ディザス…」

「待って、

何で俺の2つ名、ことごとくディザスターが付いてんの?」


「魔王様がお調べした限り、貴方は沢山の世界を渡り歩いてきたようですが、貴方が去った後、全ての世界が跡形もなく消滅している。

故に、他の世界の管理者からは災厄扱いされているそうですよ?」


えぇ…

ショックだ…


あ、ここの土、良い土だな。

収納しとこ。


「まあ、戦ってみりゃあんたが勝つかもな。

()持っているスキルも収納スキルと収納強化スキルだけだし。

今の俺はレベル1相当だからな」


ドッ!

俺のレベルが1相当だと聴いた瞬間、ソウェイルはめいいっぱい地面を蹴って俺に接近しようとしたらしい。

小狡い奴。


「ぐっ…」


だが、ソウェイルの足元の地面が崩れ、下半身まですっぽり埋まっていた。


「そう来ると思ってお前の足元すぐ下の土を収納して空間を作って置いた。

お前が地面を踏み込んだら崩れるようにな。

簡易的な落とし穴だ」


「チッ…!」


つかこいつ翼あんだから飛んで来ればよかったのに。

抜け出される前に収納しちまうか。


「『収納』」


あれ?

収納スキルが効かない。



「収納スキルが不発ですか…?

…は、ははは!

やった!半信半疑だったが成功した!

この5年間血の滲むような努力の末に手に入れた収納耐性スキルはこの男に有効!

はははははは!」


こいつ収納耐性スキル(そんなこと)の為に5年間も費やしたのか。

暇な奴だ。


やっぱり対雑魚用の収納王スキルでは限界があるか。

まあ、出来るだけのことはやってみよう。


「しょうがねぇな『収納』」


「はははは、無駄で…ッ…

──!?──!───ッ!」


ソウェイルは突然もがき苦しみ出す。

まるで熱々に焼けるお好み焼きの上のかつお節のようだ。


「聴こえてないかもしれないが、お前の周囲の空気だけを継続的に収納している。

お前の周囲だけ真空状態だ」


相手に収納耐性があるのなら、相手の周りの物を収納すればいい。


堪らずソウェイルは地面を掴んで脱出しようとする。


「『収納』

お前が意図的に触れようとした物体を継続的に収納する」


地面を掴んでいたソウェイルの手は空を切り、もがき苦しむ度にゆっくりと地面の中へ埋まっていく。

真空状態により血液が沸騰したのか、ソウェイルの体中から血煙が噴出する。

さて、次はどうする?


「『───』!」


ソウェイルは魔法の詠唱を行おうとしたようだが、空気が無いのでそれは叶わない。


それでもソウェイルは目を閉じて集中すると、巨大な炎が生み出される。

魔法の発動に成功したしたようだ。

この状態でも無詠唱魔法を使えるとは流石だ。


「『収納』」


だがまあ収納耐性があるのはソウェイル自身であり、ソウェイルの元を離れた魔法は収納可能だ。

大きな火の玉は俺の収納物の中に収まった。


ソウェイルは目を瞠目し、また集中力を高める。

無詠唱魔法により、ソウェイルの体内で空気が生み出されたようだ。

なんて器用な奴なんだ。


白黒魔人は断続的に体内で空気を生成することで命を繋いだようだ。

奴の体内は収納耐性の有効範囲か。

やるな。


「収納王、取り出し。」


俺は収納王からあるものを取り出し、遥か上空に配置する。

やっぱり収納王スキルは収納達人スキルよりも使い勝手がいいな。


ソウェイルは運良く、いや運悪く上を向いていたようで、空から落ちてくるそれを目の当たりにしてしまった。



───超高高度から落下してくる、巨大な鉄塔を。


「〜〜〜ッ!!???」


ソウェイルは必死にその場から逃れようと手足を動かすが、触れようとした地面は継続的に収納されているので無駄だ。


一応勇者パーティのこと守っておくか。


「『収納』、勇者パーティへの飛来物」


収納王スキルはいちいち『収納』と言わなくても大丈夫なのだが、収納達人スキルに慣れてしまったせいでついつい口に出してしまう。


質量兵器と化した鉄塔がソウェイルを起点とする地面に到達。

爆音と共に圧壊し、周囲に破片をまき散らす。


気を失って倒れる勇者パーティの方に注意を向けていたら、腹部に衝撃が走る。

鉄塔の破片が腹に突き刺さっている。


おっと、勇者パーティに流れ弾が当たらないようによそ見してたから刺さっちまった。


…まあ痛覚と俺の死は収納神スキルで収納しているから痛くもないし死ぬことも無いんだが。


「『収納』、破片、傷」


破片が収納されて無くなり、腹部の傷も収納されて無くなった。

ついでに辺りに飛来した破片と鉄塔の残骸全てを収納する。


ソウェイルの姿がない。


どうやら「向こう側」から転移魔法でソウェイルを転移させたようだ。

やっぱりお遊び用の『収納王』スキルじゃこうやって逃がされちゃうか。


まあいいや。

町へ戻るか。


気を失った勇者パーティの面々を収納した後、『俺自身』を収納する。


「取り出し、上空」


先程の鉄塔のように、俺自身を高高度に配置する。

町が見えた。


「『収納』、『取出』」


再度俺自身を収納し、町の近くの茂みに俺自身を取り出す。

町とは目と鼻の先だ。


「取り出し、っと」


勇者パーティの面子を収納空間から取り出し、適当に寝かせておく。



「俺は蒐集家、独占欲が呆れる程強くてな。

仮のパーティとはいえ、『俺の』パーティだ。

俺のものだ。

手ェ出すなら命懸けだ」


多分魔王の奴が盗み見してるだろうから、そう呟いておく。

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