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星の輝きを絶やす者

さて、


ネタバラシをすると、俺はこの世界の人間ではない。

というか、どこの世界の人間だったかも昔過ぎて忘れてしまった。


俺はいくつもの世界を渡り歩き、渡り歩いた世界を【収納】してきた。

ソウェイルが言ってた世界が消滅していた云々の話はそのことだろう。


世界を収納するのには理由がある。

世界を保護する為だ。


世界は並行世界も含めて無限に近く広がっているが、その世界を破壊する者達がいる。


どこかの世界で星の輝きを絶やす者(プレイ オン レルム)なんて呼ばれてたっけ。

prey on realm、世界喰い、ってことらしい。


俺は別に正義感からとかそういう訳ではなく、ただ単に珍しい物が壊されるのは嫌だったから世界を収納して保護しているだけだ。


収納した世界は収納空間の中で時間を動かしているので、その世界の人々は収納されたことにすら気が付かず日々を過ごしているだろう。


かつては俺と共に戦ってくれていた仲間も居たが、星の輝きを絶やす者は手強く、生き残っているのは俺だけになってしまった。



星の輝きを絶やす者は全部で100体存在する。

その全てがあらゆる能力の完全なる無効化能力を持ち、宇宙を一瞬で破壊する攻撃力を有している。


あいつらには序列があり、特に序列1〜9位の星の輝きを絶やす者は別格の強さらしい。


俺は五年前、序列14位の星の輝き絶やす者と戦い勝利するも、魂に深刻なダメージを負ってしまいこの世界に逃げ込んできた。

14位ですらあの強さなんだから、一桁台の強さなんて考えたくもない。


魂は癒えたが、戦いに少し疲れてしまっていた。

なのでこの世界を歩き回り、魔王にちょっかい…じゃなくて世界のバランスを取ったりして遊んでいた。


勇者パーティでの旅は楽しい。

だが、もし俺がこいつらと仲良くなってしまい、こいつらが俺と共に星の輝きを絶やす者と戦うことを選択したら、こいつらは間違いなく死ぬ。


だから、そうなる前に勇者パーティを抜けたかった。

抜けなければならなかった。

俺の能力なら簡単にこいつらを撒くなり別の世界に渡るなり出来たはずなのに。


俺は弱い。

散々仲間を死なせておいて、まだ仲間を作りがっている。


だが、どうしても。

勇者エロムニスは、俺の昔の仲間であるシンモラに似ていて、どうしても最後の一歩が踏み出せない。

こいつらと、もう少しだけ話していたいという欲求が生まれてしまう。


未練がましい。

そんな男の独り言だ。



そろそろ勇者達も目を覚ましそうな気配がある。

不要な記憶は収納しておこう。




「…むにゃ、ここは…?」


勇者がよだれを垂らしながら目を覚ました。


「モロニアの防壁の近くだ。

町まで一瞬で帰るアイテム使って、お前らごと町に戻ってきたんだよ」


「えっ、ありがとう。

ところで、


───星の輝き絶やす者の話は本当なの?」


え。

何を言っている?


「な…何のことだ?」


「微睡みの中で、だれかの声が聞こえた。

トルスは世界を保護して、世界を壊す奴らと戦っていると」


しまった、読心スキルか!?

勇者は確か読心スキルを持っていた。

睡眠の最中、無意識に俺の心を読んだのか?


普段は読まれないように収納していたが、収納王スキルを取り出したことで、一部の記憶を取り戻してしまっていた。

俺には収納保護スキルがあるから、収納してある記憶は読まれないと油断していた。


…いや、

「思考」自体も収納■スキルで収納してあるから、そもそも読まれるはずかない。

おかしい。

読心スキルではない、別のスキルによるものだ。


読心スキルでないなら、今なら誤魔化せるかもしれない。



「さあ、夢だったんじゃないか?」


「そう、かな?」


勇者はどこか納得のいかない顔で口をへの字に曲げている。


「疲れたから今日はさっさと休もうぜ。

レプとリアムを起こして、町に入ろう」


「うん、分かった…」


勇者は渋々といった様子で二人を起こしに行く。

エロムニス、お前はいったいなんなんだ…?



宿にチェックインすると、勇者は王様に報告があるとかで王城へと向かってしまった。

レプとリアムはここに残るというので、俺はだらけて座っている。


「本日はたすけていただき、ありがとうございました。

トルスさんはリアムの命の恩人です」


「感謝する」


レプとリアムが律儀にお礼を言いにきた。

やれやれ。


「お前らが町に戻るアイテムを使うまでの時間を稼いだからだ。

お前の命はお前ら自身が救ったんだよ」


「そうか。

だが、礼はさせてくれ。

礼にいつでも組手の相手になってやるぞ、トルコ」


いらねぇ…。

しかも名前間違えてる。


「お困りのことがありましたら、リアムに相談してください。

リアムにできることならなんでもいたします」


うーん、好感度を下げておきたいな。

どうすれば好感度下がるかな。


「へへへ、じゃあおじちゃんと一緒にお風呂はいろうね…

ぐへへ…」


「わかりました!」


俺の言葉に対して嬉しそうに顔を輝かせるリアム。

駄目だ、普通に犯罪になってしまう。


「やっぱ無し!勇者と一緒に入れ!」


「しゅん…」


リアムは泣きそうな顔をしながら、涙目でこちらを見上げている。


「ああああああああああ」


俺には一心不乱にリアムの頭を撫でるしか出来なかった。



たった2時間ほど頭を撫でていると、流石にリアムも落ち着いたようで、レプと組手の稽古に行くそうだ。


はー、疲れた。

少し寝るか。


俺は無造作にベッドに横たわった。




【王居の間】


「──以上がトルス・レーギャルンと大幹部ソウェイルとの戦闘結果です」


この部屋はこの国の王が諸外国との密談を行う為の部屋である。

現在は人払いがされており、そこには王と勇者エロムニスしか居ない。


先のトルスとソウェイルの戦いの折、勇者エロムニスは気を失ったフリをして両者の戦いを観察していた。


そもそも、トルスを連れてあの場所に行くように誘導したのは、魔人ソウェイルと引き合わせる為だ。

王は現在、蒐集家を倒す為に魔王と手を組んでいるのだ。


「して、首尾はどうだ?奴の仲間になれたか?」


「はい。

当初の目論見通り、蒐集家トルス・レーギャルンに接触し、何とか一緒のパーティに加入させることはできました。

しかし、警戒心が強く、隙を見せているようで実際は全く隙がありません」


「勇者よ、お前だけが頼りだ。

この世界のため、どうか隙を見て奴を殺してくれ」


「仰せのままに。

…しかし、あの男は本当に数多の世界を滅ぼしてきたのでしょうか?

世界を収納して保護しているという可能性はありませんか?」


勇者の問いに対し、眉間の皺をさらに深くしながら、王は答酬する。


「収納された世界がどうなっているかを知っているのはトルス・レーギャルンだけだ。

不確定要素だけでは奴を生かす理由にはならん。

それに、トルスの抹殺はこの世界の管理者である大勇神様の御意志でもある」


「かしこまりました」


「引き続き、トルス・レーギャルンの監視任務を頼むぞ」


王からの依頼に、勇者は深く頷く。

しかし、心のどこかに何か引っかかるものを感じていた。

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