約束
デモクは、魔王とは何なのかを知る為に旅立った。
ヒースは、魔王のことを皆に知らせると旅立った。
……ザイは、最近悩むことが増えた。
(本当に、そんな方法が見つかれば……)
小さく息をつく。
……狩りの道具ではなく、剣を。
一振りの銀剣を振るう姿は、ダークエルフながら、勇者と呼ぶに相応しい凛々しさだった。
……春も近いというのに、雪は降り積もる。ヒースはちゃんと山を下りられただろうか?ザイは珍しくシン以外のことを考えた。
そんな思考を、コンコンという戸の音が遮る。
「おはようございます!ザイさん!今日のご飯は……って、あれ?珍しいですね。剣を引っ張り出して来るなんて。」
「ああ……少しな。」
「……本当ですか?」
「取り敢えず……飯のあとに話す。」
「はーい!」
シンはウキウキとバスケットから今日の朝食を並べている。
……鈍りそうになる決意に、ザイは心を強く持とうと思った。
「ここを、離れようと思う。」
食事の後に、ザイは唐突に切り出した。
「えっ?どこに行くんですか?場所によっては魔王城をお隣に建て直して……」
「違う。……ちゃんと帰ってくる。」
「あぁ、びっくりした。……どのくらいですか?」
「……分からない。」
「えっ」
シンが息を呑む。連れて行こうか。一瞬思って、ザイは止めた。
「デモクは魔王の生まれる謎を探すと言った。ヒースは和解のために魔王を知らせると言った。」
「……………」
「俺も見つけに行く。お前を……死なせない方法を。」
「……何千年も、見つからなかったものを……探しに行くんですか。」
「………済まない。」
シンは俯いた。だがすぐに、ザイの目を真っ直ぐ見つめて言った。
「僕は、ザイさん以外に殺される気はありません。」
「……………」
魔王は、生きているだけで世界を蝕んでいく。
世界を壊す瘴気は、自分自身でも止められない。
「だから……だから。もし見つからなくても……手遅れになる前に、帰ってきてください。」
「ああ。」
「瘴気が増えすぎてからじゃ、遅いんですからね!」
「……約束する。」
シンはホッと安心したように、笑顔を見せた。
冷たい風が吹く。ザイは外套を纏い、雪を踏みしめて進む。
(保存食を多めに作っておいて助かった……いや、もうシンの飯は、暫く食えないのか……)
先ず、向かう先は初代勇者の伝説の残る地。
……初めて魔王が討たれたと伝わる場所だった。
ザイの家は、今日は静かだ。
……毎日溢れていた、ホッとするような明かりも消え去って、雪に埋もれるように隠れていた……




