Episode6 違和感と日常の交錯
すでにダイニングテーブルで翔太郎、大助、美奈、桜咲は集まっていた。
拍手が起こった後、それぞれが自己紹介をし始める。
正「僕は焔正。ただしで呼んでくれ!よろしく」
河人「星だ。苗字が、星。名前が河人。料理を作っている」
ソファに座って、背を向いている女性に正は声を掛ける。
正「自己紹介しなよ」
ソファに座っていた女性はこちらへ向かってくる。
凛「天川凛。武道家だ。よろしく頼む」
凛は深く頭を下げる。
(清:……?)
天川と視線があったが、よくわからなかった。
永夜「そして、このシェアハウスを建てた者は!」
永夜「葉月智也だ!」
一斉に智也の方へみんなの視線が向く。
智也「葉月智也だ。ヒーロー業でなかなかここにいることは少ない。会えたらラッキーと思っておいてくれ」
永夜「まだまだ住人はいるけど、今日はここまでにしよう!ゆっくり愉しんでくれ」
拍手がまた起こった。すると、再び清は天川と視線が合うが、清はすぐに逸らす。
翔太郎「智也さん。ヒーロー業ってどういうお仕事なんですか?」
桜咲「それ、私も気になってたところ!」
智也「ざっくり言うと、人を直接的に救う仕事だ」
翔太郎「つまり、何か特殊な能力がある?」
智也「あるが、詳細なことは言えない」
智也「永夜は、なんだっけ?ワープゲート?」
永夜「ついに、説明する時が来たか……!」
待ってました、と言わんばかりに永夜は席に座る。
永夜「俺の能力はその名の通り、ワープゲートだ」
桜咲「ふーん」
永夜「甘い、ただのワープゲートではないぞ。」
桜咲「じゃあ、どんなものなの?」
永夜「そのワープを5回しないと現実世界の目的地に辿り着けない。つまり、イメージ世界を5回渡らないと、現実世界に帰れない」
桜咲「なにそれ、めちゃくちゃハンデあるじゃん」
翔太郎「つまり、Aが現実世界でB~Fがイメージ世界だとすると、A→B→C→D→E→F→Aってこと?」
永夜「そう!そういうことだ!よくわかったな」
大助「なんだそれ!かっこいいな」
永夜たちが会話してる時に清はまだお茶を飲んでいた。
清は後ろにいる気配がして、振り向くとそこに天川が立っていた。
清「どうしました?」
凛「お茶は足りてるか?」
清「……あ、そうですね。注いでくれると助かります。お願いします」
凛は冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出した。
凛「どうぞ」
清は一気にお茶を飲み干した。
凛「……緊張しているか?」清は頷かない。凛は向かいの席に座る。
凛「なんとなくだが、清くん。君はすごく焦ってるように見える」
清は自分自身の焦りを認識して、悟らせまいとする。
凛「……どうしてそんなに焦る?」
清「え?僕は焦ってるんですか?今」
凛「嘘を言っても、無駄だ。君は”気づいてるんだろ”?」
(清:……!!!!)
凛「だが、安心して欲しい。私も焦りを感じている」
(清:……え?)
凛「……説明しづらいが、私も焦りを感じている。安心して欲しい。ただそれだけ伝えたかった」
凛はその場を後にした。
(清:少し整理をしよう。本当は魚なのに、肉の味がしたこと。それも宇宙船の朝食で。)
(清:俺の実家が、ラーメン屋に変わっていたこと。)
(清:高度がある場所にいたはずなのに、耳鳴りがしなかった。)
(清:そして最大の謎は地図に表示されているけど、この建物の形が妙に不自然だった……。)
(清:ど、どういうことなんだ?わけがわからない……。)
(清:そしてあのおばちゃん誰だ?全く知らないのに翔太郎は知っていた。)
(清:は?)
清が見たもの。それは、桜咲の髪型がいきなり変わっていたことだった。
清「おい、桜咲、なんでいつの間にポニーテールになったんだ……?」
桜咲「はぁ?あんた、とうとう頭がおかしくなったんだね」
清「え?」
翔太郎「おい、さっきからおかしいぞ。家がなくなるとか変なこと言い出して」
桜咲「どう見たって、この髪型はボブ!ポニーテールになってなんかないでしょ」
(清:どうなってんだ………???)
美奈「……そうだね、ボブだね。」
永夜「確かにボブだな」
清「……。」
清は黙ってしまった。
永夜「今日は疲れてたから少し視界がぼやけてたのかな?」
清は静かにうなずく。
永夜「ま、あんまり気にしないで。そうだ。河人、料理出して!」
河人「……うるさい。黙ってろ、集中できない」
永夜「なんか言った?」
河人は無言を貫く。
正「もうすぐ料理が全部完成するよ!ちょっと待ってて」
清は一人だけ離れたところで落ち込んでいた。しかし。
美奈「……一緒にチキンを食べよう」
美奈は清の手を引っ張った。
清「ありがとう」
美奈「お礼はいいよ、一緒に食べよう」
円卓にさまざまな料理が出された。
そして。
「乾杯!」
「かんぱーい!」
彼らの新しい日常が始まった。しかし、清はなんとも言えない感情だけを抱えたまま笑うのだった。




